YASU & RYU.Inc/Fugetsu USA.Inc President/CEO 山本泰光 氏
サウスベイを中心に居酒屋からラーメン店、焼肉店からお好み焼き店まで、幅広いジャンルの飲食店を手がけてきた山本氏。昨年小誌にて今後の展望を伺った直後、パンデミックによる未曾有の事態に陥ってしまったベイエリアの飲食業界。営業さえもままならないという苦境に立たされたコロナ禍において、どのように舵を切り、そしてどのように復活の狼煙をあげたのか、改めて話を伺った。
「精神的にも辛かった」
2020年3月、突然「明日からレストランはテイクアウトのみの営業」というお達しがきました。しかしすぐには対応できず、2週間ほど準備した上で、4、5月ごろから各店テイクアウト営業を再開しました。今までのセオリーがガラッと変わってしまってあの頃は精神的にも辛かったですね。
ただ、アメリカは元々テイクアウト文化が根付いているのか、意外と利用してくれる人が多かったのは驚きでした。少人数でも運営できるように体制を見直し、メニュー構成も変更するなど、今までおざなりになっていた部分を一度初心に帰ってきちんと見直せる良い機会でもあったのかなと、今となっては思います。
その一環として始めた「店舗スタッフによるデリバリー」はとても評判がいいですね。「お客様の手元まできちんと責任を持って届けたい」というのは常に感じていて。提供する店としての責任、お客様への安心感はもちろん、常連さんなどは「ちゃんとスタッフが直接届けてくれるので安心感がある」と喜んでくれ、リピーターも非常に多いです。これは今後も続けていきたいですね。
飲食業界の”ニューノーマル”
パンデミックが終わったとしても、例えば2018年、19年と全く同じように「戻る」ということは無いと思っています。というより、「新しい時代に入る」というイメージです。
まず、テイクアウトトレンドは今後も続いていくと思います。その一つとして昨年オープンしたのが惣菜専門の「風月マーケット」。店が開けられない中できることを模索していく中で、「今しかない!」と新業態にチャレンジしました。日本のコンビニやデパ地下のようなイメージで、「風月」のお好み焼きや串揚げをはじめ、レストランクオリティーのアペタイザーや、すき焼き丼やうなぎ丼などの丼もの、各種弁当やおにぎり、オリジナルのデザートまで出来立ての惣菜を販売しています。メニュー構成や新商品などは、お客様のニーズに応えるべく細かくアップデートをしています。
そして、トレーサビリティーの観点も重要。「このチキンはブロイラー? ナチュラルレイズ?」、「サーモンの産地はどこ?」など、惣菜購入時のお客さんから聞かれることが増えました。特にベイエリアは食に対する関心も高いので、含まれる原材料はもちろん、食品の産地や使用しているものまできちんと表示し、安心して選んでいただける取り組みは、今後もさらに注力していきたい部分です。
レストランは「専門性」の時代へ
そしてレストラン事業は、もっと専門性の時代に入ると考えています。従来は同じようなコンセプトで多ジャンル、多店舗展開していましたが、各ジャンルそれぞれに特化したコンセプト、運営が必須になってくると思います。例えばラーメンは、ベイエリアは激戦区です。日本からも大手有名店がどんどん上陸していますし、今後もラーメン人口は増えていくでしょう。
しかし、ラーメンという特性上、各店舗で安定した味を安定して供給し、かつ競争激化の中で独自性をキープしていくのは至難の技です。なので今後はセントラルキッチンを利用したり、大手と現地のハイブリッドにするなど、市場が大きいからこそできる展開を行っていく必要を実感しています。
反対に居酒屋、和食ダイニングなどは、旬のものや食材を活かし自分たちで小回りの効く運営がいいですね。
惣菜マーケットは、その日のおかずを楽しみに来店してもらえるようなメニュー開発に力を入れていくべく、マーケティングも積極的に行っていきます。
コロナが新たなスタートに
2019年の段階ではもうやり切ったと思っていたのですが、パンデミックで逆に火がつきました。逆境に立たされてこそ、やる気が奮い立たされる性分のようです。今後もいろいろと仕掛けを考えているので、早く皆さんにお披露目できる日が待ち遠しいですね。