交通事故の後遺症で、一時はペンを握るのも辛かったという菱木八千代さん。その症状を改善したタイマッサージに感動し、現在はセラピストとして多くの人々をケアしている。ベイエリアは出会いと学びの場所だと話す彼女に、暮らしについて、仕事についてお話を伺った。

ベイエリアに住むことに
なったきっかけ
主人がベイエリアにある会社に転職したのをきっかけに2000年に渡米しました。当初は長い旅行のつもりで数年で日本に戻るつもりでしたが、成り行きで長くなりました。
ベイエリアに最初にきた時の印象
住居やモールなどが広く、高速道路が整っているおかげで、空間的・時間的にゆったりと豊かに過ごせる感覚を持ちました。
ベイエリアの今の印象
年齢のせいかもしれませんが、時間の流れが早くなっている気がします。
あなたにとって、ベイエリアはどんな場所ですか?
出会いと学びの場所だと思います。多方面で活躍されている方々とお目にかかって、さまざまな文化・思想・知識などに触れることができます。
どんなお仕事をされていますか?
タイマッサージのセラピストをしています。施術に加えて、筋肉強化の方法や姿勢改善のための習慣、ストレッチ、瞑想、または砂糖や小麦の摂取制限、木枕など、ひとりひとりのニーズに合わせて短期間でも違いが出やすいセルフケアをおすすめしています。日々の生活習慣がいかに健康に影響しているかを体感していただくのが目的です。私自身もパーソナルトレーニングとバレエ、発酵食品の手作り、断食などを続けており、末長く良いマッサージを提供できるよう健康維持に努めています。

私が習ったタイマッサージの手法はタイ本国でも珍しいもので、より深層筋にアプローチするので精度が求められ、発痛物質の除去や自己治癒を促す効率にすぐれています。近年筋肉が分泌するホルモンが免疫や臓器の機能を正常化することがわかっていますが、2500年前に生まれたタイマッサージがその存在を知っていたかのようにデザインされているのは興味深いです。とはいえマッサージは現代では医療でありませんので、症状がある場合には事前に医師の診断を受けて安全に施術を受けていただきたいと思います。
その道に進んだなったきっかけ
2度の交通事故で首から手首まで強い痛みが出て、2年後にはペンを握ることさえ辛くなりました。諦めかけていた時、のちの師匠になるタイ人女性が一度で痛みを緩和してくれました。ありがたくて涙が止まらず、その場で弟子入りすることを決めました。
英語を使って仕事をするということ
手足をしばられて泳いでいるような気分です。おかしな英語でも大目に見て下さるクライアントさんたちに感謝です。
あなたにとって仕事とは?
人との繋がりの中から自己成長をし、それを還元し循環させていく基盤となるものでしょうか。
子どもの頃になりたかったもの
小学3年生の時、政治家になりたいと周りの大人に話していました。社会の仕組みを変えるにはそれが一番だと思っていました。大それたことを考えていたものだと笑ってしまいます。
もし、いまの仕事に就いていかったら
持病の悪化で寝たきりになって、自暴自棄から陰気な詩を書いていたかもしれません。
現在、どんなおうちに住んでいますか?
ミツワ近辺の平家です。
休日の過ごし方
テニスのレッスン、愛犬との散歩などで一息入れています。
ベイエリア、および近郊で好きな場所はどこですか?
ソノマが好きで、主人と愛犬を連れて年に数回小旅行に出かけます。

お気に入りのレストランは
Ethel’s Fancy、Stockhome、China Chen、In-N-Out Burger。
よく利用する日本食レストランはどこですか?
日本食に行くのはまれですが、Amami Sushiのおまかせが美味しかったです。
もし、100万ドル当たったとしたら
京都に別宅兼仕事場になる物件を購入して、日本で手技を広めるための活動拠点にしたいです。

日本に戻る頻度
春と秋の年2回です。
最近日本に戻ったときに感じたこと
日本で働く外国人の方の流暢な日本語とひたむきさに感心しました。
日本へのお土産は何を持っていきますか?
ワインとコーヒー豆。防災用の笛付きポンチョも喜ばれました。
日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
塩、海苔、ゆず七味、柿の葉茶、本、文房具など。
現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
家の修理・改築の際のストレス。
現在のベイエリア生活で不安に感じること
動物病院の料金が高騰していることです。
日本に郷愁を感じるとき
太平洋を見ると、その先にある日本を思い出して帰りたくなります。
おすすめの観光地
イースター島。絶海の孤島に住む人たちの先祖が、小さな船で星をたよりに航海していたと思うだけでワクワクしました。
5年後の自分に期待すること

あこがれの京都にマッサージを広める拠点をもち、視覚障害を持つセラピストさんを中心に技術を受け継いでいきたいと考えています。視覚障害があるというだけで、そうでないセラピストさんより少ない報酬しか得られていないことを知り、技術を高めて自立していただくお手伝いをしたいです。愛犬が緑内障で両目を失ってもがんばっている姿を見てそう思うに至りました。
プロフィール
菱木 八千代
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Yachiyo Hishiki
カリフォルニア州認定マッサージセラピスト、Yachiyo Wellnessオーナー。タイマッサージのおかげで交通事故後の苦痛から解放され、以来タイマッサージセラピストとして活動して17年。難病のつらい症状からも助けられ、身体は手入れ次第で機能を取り戻すことができると考え、手技を裏ざさえする食養や運動についても学び続けている。