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日本食に寄り添うCAワイン カリフォルニアの 食に寄り添う日本酒

2025.09.17

配信

日本食に寄り添うカリフォルニアワイン カリフォルニアの 食に寄り添う日本酒

10月1日「日本酒の日」。この日に合わせ、毎年サンフランシスコで行われる「SAKE DAY」イベントは、今年で20周年を迎える。この記念すべき酒の日に向けて、ベイエリアで活躍する日本人醸造家、Noria Winesの中村倫久氏、Den Sake Breweryの迫義弘氏のお二人にベイエリアでの酒づくりについてお話を伺った。


アメリカで挑戦する日本人醸造家


お二人が酒づくりを始めたきっかけは?

中村 叔父が日本でレストランをしていて、子どもの頃に家族が集まる時はいつもそのレストランでした。そこには必ず赤ワインがあって、レストランとワインには、楽しくておいしい、とても良いイメージがありました。大学卒業後はホテルに就職して、ソムリエ資格を取りました。1999年にサンフランシスコに派遣されることになって、最初は2年くらいの任期で日本に帰るつもりだったんですが、そこでカリフォルニアワインに出会いました。もともと勉強していたのはオールドワインで、自分が今まで飲み慣れていたフランスのワインと全然違うスタイルがここに存在するんだと知って、毎週ナパに通いました。そのうちワイン造りに興味が出てきて、UCデービスに行って勉強し、ワインを造るためにはどういう道を行けば良いのかを考え、一つひとつやってきて、今に至るという感じです。

 ノリさん(中村)とは共通点が多く、同い年で同じ頃にカリフォルニアに来ているんです。僕は音楽をやっていたんですが、バイトしていたカフェのオーナーが日本酒+ワインバーを開くからマネージャーをやらないかと言われて、ワインと日本酒の世界に入りました。はじめはワインを勉強していたんですが、僕が日本人だからか、お客さんがみんな日本酒のことばかり聞いてくるんで、日本酒の勉強を始め、自分のことを知ってもらうには日本の文化を伝えるのが一番良い道だと思いました。その後、違うお店で酒ソムリエとしても働いていたのですが、元々音楽をやっていたこともあり、もっとクリエイティブなことがしたくなって、自分で酒を造りたいと思うようになりました。



 ワイン造り、酒造りを始めるにあたって、ベイエリアの文化は影響しましたか?

中村 ベイエリアは競争が非常に激しいので、勝ち抜くためにはブランドのコンセプトとストーリーがしっかりしてないとダメだと考えました。そこで、『日本食に合わせられるカリフォルニアワインを造る』ということにたどり着くんですが、人の味覚は、どんなものを食べてきたかという環境に由来すると思うんです。ベイエリアは食が豊かで舌が肥えている人が多く、味の違いをわかってくれる。そういう人たちは日本食に対してもリスペクトしているところがあって、それに助けられている部分もあります。

 ベイエリアの食文化、クオリティーの高さは僕らにとっても恩恵があって、こだわって造った部分を理解してもらえる許容があると感じています。それに、地理的にも恵まれています。サクラメントはアメリカの二大米生産地の一つですし、ベイエリアの水は非常に柔らかく、地元のものを使って酒を造れるというのもこの地域の特権かなと思います。また、ノリさんが言うように、何を食べてきたかによって何がおいしいと感じるかは違うと思うんですよね。その点で、僕はサンフランシスコに来て25年くらい経つので、ここの食べ物に慣れてきちゃってるんです。ノリさんの場合は『日本食に寄り添うワイン』だけど、僕の場合は自然と『カリフォルニアの食べ物に寄り添う酒』になってきました。



 逆にベイエリアで苦労していることはありますか?

中村 ベイエリアだから特別苦労しているということはあまりないのですが、しいてあげるなら治安が悪くなってきたことですかね。レストランが影響を受けていますし、それは僕らのビジネスにもつながってきます。それに、コロナ禍を機に出歩く習慣が途切れてしまいました。そうしているうちにインフレが起きて、レストランの単価も高くなり、普通の人はなかなか外食できないような流れになってきています。ワインだけではなく、アルコール業界全体が煽りを受けている状況です。

 治安の悪化の影響はありますね。健康志向の高まりにより、特に若い世代でアルコールを控えるという動きもあります。日本酒といえば日本文化を体験する意味で、日本産の純度の高さを気にする人は多く、どうしてアメリカで造った酒を飲むのかという意味づけが難しい。そこで、カリフォルニアの自然のものを使って地域性を出し、価値をつけていくことをしています。また、お酒の醸造機器を作っている会社がアメリカに一つもなく、これが一番苦労したことかもしれません。資本があれば日本から輸入しちゃえばいいんでしょうけど、それも大変なんで、ビールかワイン用の機器を流用するんですが、日本酒とビール、ワインでは含まれているものが違う。その違いに耐えられる材質なのか一つひとつ調べていかないとならないので、作った方が早いと思って結構手作りしました。

手作りにこだわり、良いものをつくり続ける


先日はお二人でコラボイベントもされていましたよね。
今後、お二人はどのような取り組みを考えていますか?


中村 あのイベントはすごく楽しかったんですよ。また機会があれば一緒にやらせていただきたいです。ヨシさん(迫)とはお互いに共通点が多いんですよ。手作り感も似ているじゃないですか。僕らをくっつけたら、すごいパワーになるんじゃないかと思っています。

 僕は色々なところでポップアップしているんですが、NORIAでやった感覚は今までと違って、普段ワインを飲んでいる人たちがお酒を飲んでくれて、日本人のお客さんも多くて。Denはそういう人たちにまだ知名度がないので、フレッシュな反応をいただけました。今、サンフランシスコに新しい蔵を作っているんですが、移転したら今よりも広くなるので、リテールショップを併設して色んな人達ともっと繋がれたら面白いですね。

中村 コロナがあって飲食業界が落ち込んで。そしてAIが登場して。これからどんどん世界が変わっていくと思います。職をなくしてしまう人もいるかもしれない。今、世界が大きく変わっていく時代の中で、手作りでやってる人、ものづくりを一からやっていることが、今まで以上に重要視されていくんじゃないかと考えています。僕らのやっていることは間違いではないという。

 僕もそう思いますね。僕の蔵はこれから規模はちょっと大きくなるんですけど、手作り感というか、先進的なことをするよりも逆に原始的なやり方をしていこうと思っているんですよね。

中村 とにかく手作りにこだわって、良いものをつくり続けることで多くの人に注目される、お客さんが今まで以上に目を向けてくれるんじゃないかというのは、非常に強く感じています。


プロフィール

中村 倫久(左) (なかむら・のりひさ)東京出身。叔父の経営するイタリアレストランでワインの魅力に触れる。1993年慶應義塾大学卒業、2002年にUC Davisでワイン醸造学科卒業。ナパやソノマでワインメーカーとして働き、2010年に自身のブランドNORIAを立ち上げた。 迫 義弘(右) (さこ・よしひろ)神奈川県出身。2000年に渡米し、音楽活動と並行してサンフランシスコにて日本酒とワインのバイヤー、ソムリエを経験。2017年、オークランドにてDen Sake Breweryを創業。酒造りを一手に担う。

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