穏やかな気候に憧れてベイエリアにやって来たモラレス絵里子さん。平日はテクニカルソーサーとして働くかたわら、土曜日限定のピザ店を営む。将来はコミュニティーのハブになるような場を作れたら、と話すモラレスさんに、現在の暮らしについて伺った。

ベイエリアに住むことに
なったきっかけ
穏やかな気候の場所で暮らしたいと思い、留学先にサンフランシスコを選びました。2009年に渡米し、以来ベイエリアで暮らしています。
ベイエリアに最初にきた時の印象
想像していたより寒くて驚きました。一方で、知らない人同士でも気軽に会話が始まることや、人との距離が日本より近いことが新鮮でした。日本では、知らない人とはまず少し距離を測るような段階がある気がしますが、ここではその段階を飛ばして、知り合いのように会話が自然に始まる感覚でした。そのウェルカムな雰囲気に背中を押され、英語の勉強も兼ねて積極的にいろいろな人と会話するようにしていました。
ベイエリアの今の印象
物価の高さや変化の速さに驚くこともありますが、それでも新しいことに挑戦する人が次々と現れるエネルギーは変わらない。この土地ならではの前向きさを感じています。
あなたにとって、ベイエリアはどんな場所ですか?
多様な価値観が受け入れられる環境があり、自分の軸で物事を選べる場所。その自由さが、私にとって大きな魅力です。
どんなお仕事をされていますか
平日はテクニカルソーサー(IT・技術系の専門人材を探し出し、アプローチする採用プロフェッショナル)として働きながら、週末はパシフィカの自宅キッチンで持ち帰り専門のピザ屋を営んでいます。月2〜3回、土曜の夜限定でオープンしています。夫と二人三脚で、生地やソースの改良、メニュー開発、仕入れ、経理、宣伝まで全て自分たちで行っています。未経験の分野も多く決して楽ではありませんが、大きなやりがいを感じています。
その道に進んだきっかけ
もともとパン作りが趣味で、パンデミック中に夫とピザ作りを始めたのがきっかけです。当時は自宅用のピザオーブンが流行していて、夫から「サイドビジネスでピザ屋をやろう」と誘われました。けれど私は「人様の胃袋に責任は持てない」と、1年間断り続けていました。それでも、大好きなパシフィカのコミュニティーに何か貢献できたらという思いが次第に強くなり、挑戦を決意しました。私たちが暮らすエリアはレストランが少なく、温かい食事を届けられたらと思ったのです。必要なライセンスを取得し、イタリアからピザオーブンを取り寄せ、販売開始に向けて準備を進めました。仕事と子育てをしながらの準備は慌ただしい毎日でしたが、だからこそ、今も妥協しない味作りを心がけています。
英語を使って仕事を
することについて
英語で仕事をすることは挑戦の連続ですが、その分、自分の意見や価値観をより意識するようになりました。母語ではないからこそ、何をどう伝えるかを丁寧に考える。その積み重ねが、自分の軸を強くしてくれていると感じています。
あなたにとって仕事とは
仕事とは、責任を持って価値を届けること。楽しいだけではなく、責任と覚悟が伴うものですが、その分やりがいも大きい。自分の手で形にできることに喜びを感じています。
子どもの頃になりたかった職業
テレビのアナウンサー。きれいで知的なお姉さんたちに憧れていました。
どんなおうちに住んでいますか
キッチンには家庭用と業務用の道具が混在し、ちょっとした“ミニ工房”のような家に住んでいます。一部屋はピザ関連の在庫と器具で埋まっています。生活感と仕事感が同居する、にぎやかな家です。

休日の過ごし方
1年前からランニングを始め、休日は少し長めの距離に挑戦しています。今年はハーフマラソン出場が目標。走る時間が気持ちを整えてくれる大切なリセット時間です。学生時代は短距離選手だったので、スプリントへの思いもまだ捨てきれず、日曜日の陸上クラブに入ろうか密かに迷っています。
ベイエリア、および
近郊で好きな場所
今住んでいるパシフィカです。海と山に囲まれ、自然がすぐそばにある暮らし。トレイルもたくさんあり、まだ制覇しきれていないほど。そして何より、この街を大切に思う人たちが集まる温かいコミュニティーが魅力です。
お気に入りのレストラン
「和厨(わくりや)」。ご夫婦で営まれていて、細部まで丁寧なこだわりが感じられる素晴らしいレストランです。
もし、100万ドル
当たったとしたら
自宅をコマーシャル・キッチンに改装し、ピザ屋を本格的に運営したいです。そして、そのキッチンを他の小さな食ビジネスを始めたい人たちにも貸し出せたらと思っています。正直、100万ドルでは足りませんが、いつかパシフィカに複数のレストランやポップアップが集まる場所を作れたらと思っています。子連れでも気軽に立ち寄れ、幅広い世代が楽しめる、コミュニティーのハブのような空間です。お客さんからも「レストランをオープンしないの?」とよく声をかけていただくので、その言葉に背中を押されながら、いつか形にできたらと思っています。そして、働きたい気持ちはあるけれど、子どもが小さくて一歩踏み出せない親たちが、安心して挑戦できる環境もつくれたら。そんな場所を実現するのが夢です。

日本に戻る頻度
毎年夏休みに1カ月ほど帰国しています。子どもたちは毎年同じ小学校や幼稚園に2〜3週間通わせていただき、「また来年待ってるね!」と温かく迎えてもらえることに、心から感謝しています。子どもたちも毎年とても楽しみにしていて、学校を掃除する習慣やおいしい給食、プールの授業があることを、アメリカの家族や友達に誇らしげに話しています。文化や言語を学ぶ上でもとても貴重な経験になっています。
日本へお土産に持っていくもの
ワイン。関税は微々たるもので、日本の空港での支払いもスムーズなので、毎年箱に入れて12本を持ち帰ります。
日本からベイエリアに
持って帰ってくるもの
日本のスキンケア商品です。小さい頃からアトピーに悩まされてきたこともあり、今でも肌につけるものには気を遣っています。日本にはよく研究された優れた商品がたくさんあって、試したいものが多すぎて肌が足りないくらいです。帰国のたびに新しいものを試すのが楽しみです。
日本に郷愁を感じるとき
日本食です。アメリカでも作ることはできますが、やはり日本で食べるのとはどこか違います。四季を感じる日本の素材の豊かさは特別で、食は私たちの暮らしに深く根づいた大切な存在だと思います。
座右の銘
「功徳自照」(くどくじしょう)住職だった祖父の教えから生まれた、私にとって大切な言葉です。人知れず積んだ徳は、巡り巡って自分を照らす。そう信じて、日々を丁寧に生きたいと思っています。
5年後の自分に期待すること
5年後も、今と変わらず挑戦を続けていたいです。今よりもタイムマネジメントが上手になり、仕事も家庭ももう少し余裕を持って楽しめる自分でいたいです。日々を丁寧に積み重ねた先に、成長した自分がいることを期待しています。
プロフィール
モラレス 絵里子
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Eriko Morales
千葉県出身。日本で臨床心理学を学び渡米。不妊治療コーディネーターとして勤務後、出産を機に子育てに専念。三児の母。その後、テックスタートアップ専門のテクニカル・ソーサーとして働きながら、2年前に自宅キッチンで持ち帰り専門のピザ屋「P-Town Pie Guy」をスタート。月数回、土曜夜限定で営業し、現在は冷凍ピザ販売に向け奮闘中。