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How to Shoot for the Moon 人と宇宙を身近にするために

2024.09.04

配信

家族の転勤がきっかけでベイエリアに来た早出美樹さん。国際宇宙ステーション国立研究所を経て、現在はスタンフォード大学のd.schoolで教鞭をとっている。東京生まれベイエリア育ちという早出さんに、ベイエリアの印象やお仕事、今後の目標についてお話を伺った。

 


ベイエリアに住むことに なったきっかけ


1994年に父の転勤で家族でベイエリアに引っ越してきました。東京から来たので、最初は山が見えて一体どんな田舎に来たのかと思いました。でも、すぐ自然に囲まれた環境が好きになりました。家族は2年ほどで帰ってしまって、私だけ留まりました。

 ベイエリアの印象  


30年住んでも飽きません。海も山も近いし、アトラクションが多いのでやることもいっぱいあります。世界レベルの大学やテックカンパニーも軒を連ね、イノベーションの最先端なので知的刺激も多くてエキサイティングです。色々な人種がいて異文化に対してとてもオープンだし、多様な視点を持つ知的&寛大な人が多いと思います。

 どんなお仕事を されていますか?  


スタンフォード大学のd.school(Hasso Plattner Institute of Design)で、How to Shoot for the Moonというクラスを教えています。コンサルの活動もしていますが、そちらでは宇宙とイノベーション一般の分野で、人間中心設計、デザイン思考、未来思考を織り交ぜたプロジェクトを手掛けています。

 その道に進むことになったきっかけ  


大学の時は物理と天体物理、修士で宇宙工学、博士はバイオエンジニアリングで骨とCTやX線などの医用画像解析の研究をしていました。元々重力に興味があって物理を学んでいたのですが、重力がなくなると体に大きな影響があることがとても興味深かったのです。例えば、宇宙に長期滞在すると骨粗鬆症よりも3倍早く骨が痩せてしまいます。それを防ぐにはどうしたらいいのか、その変化をモニターするにはどんな計測をしてどんなデータが役に立つのか、などを突き詰めていったのです。大学院卒業後は、しばらくサイエンティストとして製薬会社の治験のお手伝いをしました。  

その後、国際宇宙ステーション国立研究所の西海岸のビジネスを確立する仕事に就いて、典型的な宇宙工学やライフサイエンスのみならず、最先端の科学実験や技術開発、教育目的など、幅広いプロジェクトを宇宙ステーションに持っていくお手伝いをしていました。そこで感じたのは、宇宙はエキサイティングだけど、一般人には夢物語のようなお話で、国際宇宙ステーションなどで行われている宇宙実験が私たちの生活にいかに役に立っているかが全然伝わっていないということでした。NASA以外の一般の大学や企業でもその特殊な環境(宇宙環境)や設備を使って科学実験や技術開発をできるということが全く把握されていない。それはとてももったいないと感じました。  

このギャップを埋めるには「人」に近づかないといけない、と思いました。宇宙業界はどうしてもエンジニアリングやインフラを作る方に集中してしまいますが、それを利用する人の便宜やニーズに沿ったものを作らないと宇宙利用は進んでいかない、一般利用は広がらない、そして宇宙は手の届くフロンティアにはならないと思ったのです。  


ちょうど同じ頃、スタンフォード大学のd.schoolとワークショップをしました。科学技術と人間中心設計、デザイン思考の接点はとても面白く、追求する価値があるのでは? ということで、2021年に前職をやめたのをきっかけにd.schoolで非常勤を始めることになりました。今教えているHow to Shoot for the Moonは、数年の試行錯誤を経てやっとクラスになったものです。

 子どもの頃になりたかった 職業  


子どもの頃から科学者や宇宙飛行士になりたかったです。でもアートも大好きで、美大の予備校にも通っていました。毛利衛氏が日本人として初めて宇宙へ行かれた1992年、絵画コンクールで私の描いた絵が賞をいただき、毛利宇宙飛行士が私の絵を宇宙へ持って行ってくださいました! その年の秋に東京で国際宇宙年会議が行われたのですが、まだ未成年の私に手違いで招待状が届きました。招待されたし賞も頂いたので、学校から許可が出て、学校をサボって制服を着て最年少で会議に参加しました。その時毛利氏にお会いする機会をいただき、「大学で科学を勉強しようか、アートの道に進もうか迷っています」と話しました。毛利さんの答えは「両方やってください。いつか科学者もアーティストも、もっと色々な人が宇宙に行く日が来ます」でした。  

思いもよらない形で、今の仕事は自分のクリエイティビティと専門的知識(宇宙もライフサイエンスも物理も)を織り交ぜて活かせているのではないかと思います。自分の今の夢・目的は、毛利さんが描いた誰でもいける宇宙を実現する手助けをすることです。

 いまの仕事に就いて いなかったら  


パティシエになっていたかもしれません。お菓子作りが好きで毎年息子の誕生日ケーキは気合いを入れて作ります。

プロフィール

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Miki Sode

東京生まれベイエリア育ち。物理、宇宙工学を学び、博士号はバイオエンジニアリングで骨粗鬆症と医用画像解析の研究に携わる。治験研究組織(CRO)でサイエンティストとしての仕事を経てから、近年まで国際宇宙ステーション国立研究所で宇宙実験の斡旋をしていた。現在はスタンフォード大学d.schoolで非常勤講師。夫と息子と3人暮らし。

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