2015年にベイエリアにやってきた河合太郎さん。地図エンジニアとしてIT企業で働く河合さんは、仕事は興味を惹かれること、面白いことだと話す。何かを作ることが好きだという河合さんに、現在のベイエリアでの暮らしについて話してもらった。

ベイエリアに住むことに
なったきっかけ
前職でも地図サービスを作っていたのですが、現職の会社が2012年に地図アプリを自社製に切り替えた時、日本の地図業界としては戦々恐々としていたんですね。「ついにあの会社が地図を作る。どんなものが出てくるんだろう」と。それが何というか、ちょっと期待にそぐわないものだったので、ここぞとばかりに「それ見たことか。どれ、地図ってのはこうやって作るんだ」などと上から目線で講釈を垂れていたら、じゃあ実際にやってみてよと言われて、はい、やります、と移住してきたのが2015年のことです。
ベイエリアに最初にきた時の印象
カリフォルニアの青い空! ですね。来たのが夏(7月)だったこともあり、カラリと晴れて湿度も低い快適な天候が今でもベイエリアのもっとも強いイメージです。逆にサンフランシスコに初めて行った時はこんなに寒いのかと驚きました。
ベイエリアの今の印象
のどかな住宅街が広がる中に、世界的な企業の本社が点在している様は、実は結構奇妙な感じだなと思ってます。企業の規模と都市化の度合いが釣り合っていないというか。
どんなお仕事を
されていますか
地図サービスで、主に日本に関してのデータや機能を担当しています。地図をはじめとした位置情報、中でも特に日本の住所についてが専門です。日本の住所は諸外国と比較しても特に例外の多い体系となっており、専門的な知識に基づく判断や処理が欠かせません。また、地図というのは非常にロングテールかつパーソナルな体験であるのが特徴で、言い換えればそういった多くの例外の集合体とも言え、それらをどれだけサポートできるのかというのが腐心するところです。僕の家の住所は間違っているけど、全体から見れば0・001%だから仕方ないよね、と納得はできませんよね。
その道に進むことになったきっかけ
元々地図が好きではありましたが別に専門というわけではなく、卒業後地図会社に入社した動機は「プログラミングを仕事にできる」「アパートから近い」という、甚だいい加減なものだったのですが、そこで面白さに目覚めたかたちです。
英語を使って仕事をするということ
言語というものはそれ自身が目的ではなく、ドキュメントを含め、広い意味でのコミュニケーション・情報交換を行うための手段ですから、達成すべき目標が明確であれば最終的には何とでもなります。ただ英語で思考・会話しているとIQが20くらいは確実に下がっており、自分の内的なイメージとのギャップを感じ、そのもどかしさが大きなストレスになります。
英語での成功体験、失敗体験
そんなわけで、そのストレスを嫌ってコミュニケーションを避けてしまいがちになることで、いくつも失敗を重ねてきました。
あなたにとって仕事とは
逆説的ですが、興味を惹かれること、面白いことですね。幸運なことにそういった仕事ばかりに取り組んでこれまでやってこられましたし、この先もそういう仕事しかやっていけそうにありません。ですので、そういった状況に身を置き続けられるように注力し続けて行こうと思っています。
子どもの頃になりたいと
思っていた職業
ゲーム作家です。今でもなりたいと思ってますし、そのうち挑戦するかもしれません。
もし、いまの仕事に就いて
いなかったら
ゲームもですが、いろいろなインターネットサービスを作っていると思います。インタラクション全般が好きなんですよね、根っから。

現在、どんなおうちに
住んでいますか
サニーベールの住宅街で、この辺りによくあるアイクラーの賃貸住宅に渡米以来ずっと住んでいます。
休日はどんなふうに
過ごしていますか
料理をしたり、何かしらモノを作ったりしています。基本、何かを作ることが好きなので。
ベイエリア、および近郊で
好きな場所はどこですか?
具体的な街や場所というよりは、各種クラフトビールのブリュワリー・タップルームが好きですね。ベイエリアの最良の文化の一つだと思ってます。
お気に入りのレストランは
ほとんど外食をしないのであまり候補がないのですが、自分ではあまり作らず、かつ美味しい店として、「Dish Dash」および系列店の「Dish N Dash」には比較的よく行きます。また料理を作る身として、バークレーの「Chez Panisse」はリスペクトしています。一度しか行っていないのでまた行きたいです。
よく利用する日本食レストラン
ほとんど行きません。広い範囲の日本食で言うなら、「Ramen Hajime」にはよく行きます。
もし、100万ドル
当たったとしたら
一昔前ならこの辺に家を買う、と答えたと思いますがもはや買えないので、全部投資に回すか事業の種銭にします。
日本に戻る頻度
以前は年1回くらいでしたが、ここのところは年に2、3回帰っています。
最近日本に戻ったときに思ったこと
誰もが言う話ですが、円安によるディスカウント感が凄まじいです。そのくせ質は落ちていない上に、特に都会では人口が集中して競争が激しいので、飲食店のコスパは異次元の域です。一方で地元を含め地方に行くと老朽化・老齢化が肌で感じられ、もはや昔の感覚の延長では持続不可能であることを実感します。
日本へのお土産
みんな大好きトレーダー・ジョーズのお菓子やら何やらをバッグごと持っていくことが多いです。後は日本にまだ入っていないクラフトビール。
日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
ジェネリックな品はだいたいベイエリアで手に入るのですが、クオリティーの高いものや限定品などは難しいので、重量パフォーマンス比の高い製品を持って帰ることが多いです。具体的には良い海苔や昆布、お菓子など。
現在のベイエリア生活で、
不便を感じるとき
ダントツで医療関係です。ちょっと具合が悪いので医者に診てもらうことが、なぜいちいち手間もコストもバカみたいに掛かるのか…。
現在のベイエリア生活で
不安に感じること
幸いまだ体験したことはないのですが、排外主義を許容する空気がこのエリアにまで影を落とし始めている事例を見聞きするたび、どこまで行っても移民の身としては不安と共につくづく残念に感じます。
日本に郷愁を感じるとき
朝起きて何だか静かで明るいな、と思って障子を開けたら雪景色だった、といった経験の記憶が不意に脳裏に浮かんだときなどですね。あと田舎の旅館と露天風呂。
おすすめの観光地
あんまり観光もしないので勧められるほどの経験がないのですが、この国はやはりドライブが楽しいと思うので、カリフォルニア州道1号線はおすすめです。
永住したい都市
トスカーナの丘陵地で、ワイナリーの横で昼間からワインを飲んで寝っ転がっていたいです。

5年後の自分に期待すること
今よりさらにストレスなく、興味あること・楽しいことだけで生活できていることを期待します。
プロフィール
河合 太郎
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Kawai Taro
1973年、岐阜県生まれ。名古屋大学卒業後、株式会社アルプス社、ヤフー株式会社で地図ソフト・位置情報サービスの開発に携わる。2014年にアップルの地図部門に移り、2015年に妻と息子、娘の4人家族でベイエリアに移住。