カリフォルニア大学バークレー校で博士研究員として働く古賀祐海さん。研究者になるという夢を叶えた古賀さんは、仕事は自身の「原動力」だと話す。そんな彼女に現在のベイエリアの暮らしや仕事について話を伺った。

ベイエリアに住むことに
なったきっかけ
2013年に学部留学のため渡米し、UCバークレーで博士研究員に採用されたことをきっかけにベイエリアに引っ越しました。
ベイエリアに最初にきた時の印象
意外と寒い!
ベイエリアの今の印象
気候が温暖で暮らしやすく、東海岸と比べるとアジア系料理のクオリティーが高いと感じます。バイオ系の研究者コミュニティーも非常に充実していると思います。
あなたにとって、ベイエリアはどんな場所ですか?
大学院受験の時からずっと住んでみたかった憧れの場所です。
どんなお仕事をされていますか?
カリフォルニア大学バークレー校にあるカリフォルニア定量生物学研究所というところで博士研究員として働いています。
専門分野について教えてください
専門はケミカルバイオロジーという、化学の手法を使って生物の仕組みを分子レベルで解明するという分野です。大学と大学院ではタンパク質合成を担う「リボソーム」という細胞小器官を阻害する小分子の研究をしていました。天然に抗生物質として存在するリボソーム阻害物質を研究ツールとして転用し、タンパク質合成のダイナミクスを解明しようという研究です。現在は少し視野を広げて生化学や構造生物学の分野にも足を踏み入れ、タンパク質合成を制御する翻訳開始因子と呼ばれるタンパク質について研究しています。
その道に進むことに
なったきっかけ
幼い頃から学校での理科の勉強や科学博物館での体験教室などが大好きでした。高校生の時に東京大学で研究体験をさせていただく機会があり、それをきっかけに本気で研究者になることを志し、渡米してから大学で色々な分野の授業を受けた上で、化学を専門に勉強することにしました。大学一年の時にお世話になったTA(ティーチングアシスタント、教育助手)の方に研究室に誘っていただいたことをきっかけに、ケミカルバイオロジーの分野に足を踏み入れ、先述したリボソーム阻害物質の研究を始めました。それ以来、タンパク質合成を中心テーマとして、いろんな視点や手法を用いて研究しています。
英語を使って仕事をするということについて思うことは?
科学に関わる仕事をする上では、どの国で働いていても英語スキルが必須だと言って差し支えないかと思います。私は渡米して10年以上になりますので、仕事でも普段の生活でも英語を不自由なく使えるようになりましたが、これからさらに学生の指導をする場面が増えると思いますので、そういった場面でより明確なコミュニケーションを取れるようにもっと英語力を向上させたいですし、化学と生物の研究の魅力を専門外の人にも伝えられるような文章を英語で書けるようになりたいと考えています。
英語での成功体験、失敗体験があれば教えてください
成功体験は大学一年の一学期目に取ったライティングの授業で、留学生は私ただ一人という状況になってしまい、最初は全くついていけなかったのですが、クラスメイトに教えてもらったりして徐々に教授の言っていることが理解できるようになりました。最後に書いたニホンオオカミの絶滅についてのレポートを教授に面白かったと言ってもらったのがとても印象に残っています。失敗体験は高校生の時、イギリスでの英語サマーキャンプに参加したのですが、日本で結構勉強して行ったつもりでもほとんど何も話せず、非常に悔しい思いをしました。でもその悔しさがあったからこそ、英語の勉強を頑張ることができたのではないかと思います。
あなたにとって仕事とは?
原動力です。
子どもの頃になりたいと思っていた職業
幼い頃からバイオリンを習っていて、コンサートに行くたびにプロの演奏家の演奏に感銘を受けていたので中学生ごろまではバイオリニストになりたいと考えていました。科学に関わる仕事がしたいと考えだしたのは高校の時だったのですが、小学生のときに学校の理科の先生や科学体験教室の講師や学生ボランティアの方々に憧れていた記憶がありますので、今思えばそれが原点だったのかなと考えています。
もし、いまの仕事に就いていなかったら
教えることが好きなので、教師を目指していた可能性があると思います。
どんなおうちに住んでいますか?
大学からバスで20分ほどのところにあるアパートに住んでいます。近くに日本食スーパーがあるので気に入っています。
休日はどんなふうに過ごしていますか
忙しい時は休日も研究室に行っていますが、基本的にはまとめて家事や買い出しをしたり、軽く運動したりして過ごしています。時間があるときは家でバイオリンを弾いています。

ベイエリア、および近郊で好きな場所はどこですか?
観光地だとティブロン、週末遊びに行くのはサンフランシスコの日本町が好きです。
お気に入りのレストラン
Rintaro、Yonsei Handrollsです。
よく利用する日本食レストラン
大学キャンパス近くにある丸亀製麺によく行きます。
もし、100万ドル当たったとしたら、その使い道は?
家を買う。
日本に戻る頻度
年1回は帰るようにしています。
最近日本に戻ったときに
感じたこと
伊勢志摩に観光に行ったのですが、神社にお参りに行ったり、郷土資料館を見たりして、忘れかけていた日本人アイデンティティーの成分を少し補給できたように感じました。
日本へのお土産は何を持っていきますか?
シーズキャンディーのお菓子を持っていきます。東海岸に住んでいたときは空港で買っていましたが、最近はお店に直接買いに行っています。いろんな種類があるので友人に喜ばれることが多いです。
日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
茅乃舎の鍋の素は絶対に持って帰ります。
現在のベイエリア生活で、
不便を感じるとき
まだ車の免許を取れていないので、長距離移動に不便を感じます。
現在のベイエリア生活で不安に感じること
物価の高さ。
日本に郷愁を感じるとき
普段は殆ど英語しか使わないのですが、その分日本のポッドキャストを聴いている時や日本語の本を読んでいる時などに日本人らしい感受性に戻る感覚がして、郷愁を感じます。
おすすめの観光地
モントレー。
永住したい都市
都市部にある程度近くて、海が近くて、良い職場があればどこでも良いです。
5年後の自分に期待すること
一人前の研究者として指導教官から独立する上で、これが自分の代表作だと言えるような仕事をして、論文として形にします!
プロフィール
古賀 祐海
/
Yumi Koga
東京都出身。高校卒業後に渡米しイエール大学に進学、化学科を卒業。その後、ハーバード大学化学・ケミカルバイオロジー科で博士号を取得。2024年よりカリフォルニア大学バークレー校にてカリフォルニア定量生物学研究所の博士研究員として従事している。