〜除夜の鐘、柿図・栗図展、村上隆展で感じたこと〜
能登半島地震、および羽田空港での飛行機事故で亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された方々にお見舞い申し上げます。また、当地の方々からお見舞いの言葉、ご支援の申し出に感謝します。総領事館としても精一杯対応していきます。
昨年大晦日、アジア美術館での除夜の鐘式典に家族で出席しました。オークランドの秋葉和尚が式を統べられ、会場を清め、般若心経を読誦されました。
その後、数人ずつが108のグループを組成して順番に鐘を撞き、安らかな表情で記念写真に収まっていました。アジアの一つの文化が市民の生活の一風景としてかくも根付いている様子に感銘を受けました。
また、同美術館では京都大徳寺秘蔵の水墨画「柿図・栗図」展と村上隆展も拝見しました。日本人は中国人より自然と密着したところに原点があり、宋末元初の画人牧谿(もっけい)の画は本土では忘れられたのが日本の枯淡の美的感覚に受容され、蔵され、そして史上初めて海外で展示されました。一方、日本の美意識が何か投影されたアニメで育ち、色彩感に満ちた世界を作り上げた村上隆氏の画。その村上氏が、日本の心象風景たる妖怪を描き、自然(じねん)の日本のアイデンティティを以て、東と西を結びつけようとしている。この二つの対照的な展覧会が当地で同時に開催され、当地で大きな関心を引き起こしたことは素晴らしいことです。
日本文化への入り口はアニメ、日本食、粉雪であっても、その先には清潔さや安全、優しさ(思いやる心)への驚嘆があり、さらには、日本文化の美意識への憧憬があると思います。日本文化は世界の文化をより多様で豊かにする存在と確信します。しかしこれは私達が意識して紡いでいかねばならないですし、それには海外との交わりが重要と思います。当地におられる皆様は大きな役割を果たされていると敬意とともに感謝している次第です。
新しい年が皆様にとり佳き年となりますように祈念いたします。
在サンフランシスコ日本国総領事 大隅 洋(おおすみ・よう)
1966年生まれ。東京大学経済学部卒業後外務省入省。経済安全保障課課長、在英日本大使館公使、在イスラエル日本大使館次席公使などを歴任。COVID19期間中は東京にて大臣官房審議官等を務める。2023年9月、在サンフランシスコ日本国総領事として着任。茶道を嗜み、旅行、読書、マリンスポーツを愛好。著者に「日本人のためのイスラエル入門」(筑摩書房)。
領事館のホームページでは、
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