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アメリカの法律 In-and-Out Vol.08

2024.09.18

配信

Vol.08 : ハミコ社長、DVROをファイルする!の巻

皆さまこんにちは。弁護士の戸木です。前回に引き続き、「ハミコ(仮名)、アメリカに来る」という設定の下、彼女が日々直面する法律問題をご紹介していきます。  

このところ、ハミコは私生活で大きなストレスを抱えていました。結婚して10年が経過した頃から夫の態度が変わってきて、最初はモラハラ、次第に罵声を浴びせられるようになり、ついには殴る蹴るの暴行を受けるようになってしまいました。子どもが未成年であることも考えて耐え忍んでいたハミコでしたが、ついに耐え切れなくなり、弁護士に相談することにしました。  

配偶者や交際している人にDVを受けた方は、裁判所に対し、DVRO(接近禁止命令:Domestic Violence Restraining Order)の申し立てをすることができます。命令には接触禁止命令(No-Contact Order/Stay-Away Order)、家からの退去命令(Move-Out Order)、財産管理についての命令(Control of Property)、健康その他の保険の維持命令(Health and Other Insurance)等の種類があり、必要に応じてこれらを組み合わせた命令が下されます。  

申し立てを行うと、仮命令(TRO:Temporary Restraining Order)が出されるか否かの書類審査がなされます。併せて、審問期日(Hearing)が指定され、双方出廷の下に審理がなされます。刑事手続であれば被害者が出廷する必要はありませんが、DVROは民事手続なので、被害者であっても原告として出廷するのが原則です。暴行等の事実がない限り刑事にはなりにくいのですが、民事であれば、言葉の暴力や経済的な虐待も理由になり得ます。民事であっても、DVROに反した事実があった場合には警察が動いてくれますので、安心です。  

一方、DVROの目的を忘れないようにしましょう。DVROは、加害者と被害者との距離(物理的・精神的)を離すことが主眼で、財産の使用権を与えるようなものではありません。例えば、Move-out Orderを取得したとしても、その家が相手方が結婚前から持っている場合には、永久的に使えるようになるものではないことをご留意ください。   


戸木 亮輔(とぎ・りょうすけ)弁護士 
日本(第一東京弁護士会)、カリフォルニア州、ニューヨーク州弁護士。東京都内で弁護士として約8年間法律事務所に勤務した後、ニューヨーク州のコーネル大学ロースクールに留学。サンフランシスコで勤務弁護士の経験を経て、2024年1月よりKaname Partners US, P.C.を設立、開業。

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