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柳家東三楼の「Break a leg 落語の時間ですよ」Vol.30

2023.09.13

配信

ベイエリアからの3000マイル

 ベイエリアからニューヨークに帰ってきました。今年は旅の仕事が多く、ほとんどニューヨークには滞在していませんので、今年はベイエリアで過ごした時間がダントツです。地域、州別でもカリフォルニア州、ベイエリアが最も多いです。ニューヨークでは9月9日に独演会をしましたが、思えば2年ぶりに近かったです。

 さて、ベイエリアからは車でニューヨークまで帰りました。フリーモントからバークレーを抜けてひたすらユタ州ソルトレイクシティを目指しました。ソルトレイクシティは若干高度が高いようで、乾燥帯を抜けてユタに近づくと少し緑が増えて、なんと朝方にかなりの雨が降りました。

 サンフランシスコ市内で夜に美しい霧に包まれた時、少し湿度は感じましたが、ベイエリアでもLAでもカラッとした中で過ごしていたので、雨に濡れた街を感じるのは久しぶりでしたが、8月はシカゴ、トロントにも落語会で行き、シカゴに滞在した3日間雨が降ったのを思い出しました。ベイエリアからユタ、オハイオ州コロンバスと落語会をして、ニューヨークまでの3000マイル、僕は車を運転しながら目と体でアメリカ大陸を堪能しました。バークレーを右に折れてからカンザス州のあたりまで、気持ち良いくらいの乾燥地帯と岩山です。ところがカンザスシティのあたりからは毎日とうもろこし畑です。そして森が広がるようになって、雲の形も日本のそれのように夏の入道雲が様々なイメージを浮かべさせてくれます。

 そして、僕は刑務所のある区間でハッとするのでした。

 そこは地の先に刑務所が見え、ヒッチハイクする人を乗せないようにとの注意書きがあります。視線の先の金網で囲まれた建物、監視台、そういう物が目に入って来ます。僕の胸は締め付けられました。そう、その刑務所の外観は、サンノゼの日系人移民博物館で見た、第二次大戦中の収容所にそっくりだったのです。

 この話をするとうなずく方がいました。「そうよ、あの時の収容所は刑務所よ。出ると撃たれるんだから」重い言葉です。

 僕が通ったネバダやユタにも収容所がありました。それは当時を描いた本でも知っていました。しかし、砂漠の真ん中に明らかに孤立した金網で囲われた場所は、僕を過去に引き戻しましたが、現在の風景と過去の風景が重なって延々と続く砂漠の中で、時間と土地の感覚が無くなっていきました。きっと日系人の先輩は悔しい思いでこの風景を見たんだろう。簡単には言葉にも感情にもできないことが胸に湧き、さて、と前を向いて安全運転に戻りました。ベイエリアで考えたことも車に積んで走る3000マイルは新たな風景を僕に刻みました。



柳家東三楼(やなぎやとうざぶろう) 落語家歴25年。真打として日本全国で落語を披露する中で世界中の人に落語を知ってもらいたいと、2019年よりアメリカへ移住。現在はNYのブルックリンを拠点にアメリカにてすでに200回以上の公演を行う。50州すべての州にて落語公演を実施することを目標に、日々精力的に活動中。

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