ベンチャー投資の動向と
北米におけるジェトロプログラム
今回は最近のベンチャー投資の状況と2023年の北米におけるジェトロの取り組みを簡単に紹介したい。
①最近のベンチャー投資の動向
(1)米国
米国における2022年のベンチャー投資額は、対前年比で37%減(3150億ドル→1980億ドル)となり、大幅に減少した。2018年のベンチャー投資額が1350億ドルだったことを踏まえると、コロナ過であった2021年が異常であり、バブル気味になっていたことがうかがえる。
また、2023年第1四半期の投資額は325億ドルとなった。2021年第4四半期より減少が続いていたが、対前四半期(329億ドル)とほぼ横ばいとなったことから、減少に歯止めがかかったように見える。しかし、325億ドルのうち、65億ドルが決済処理ソフトウェアを提供しているStripe(本社:サンフランシスコ)への投資額であり、この投資がなければ対前期比で21%の減少となっていたことが判明しているため、次の四半期の動向が注目される。
上位10件のベンチャー投資のうち、3件がAI開発会社/ Generative AIとなった。具体的には、OpenAIの元メンバーによって設立されたアメリカの人工知能スタートアップAnthropic(本社:サンフランシスコ)がグーグルから4億ドル、Adept(本社:サンフランシスコ)が3・5億ドルを調達した。
(2)シリコンバレー及びその他
シリコンバレーの状況については、2021年第4四半期より4期連続で減少していたが、2023年第1四半期では、対前期比でほぼ倍の145億ドルの投資額となった。全米の約45%を占めた。また、投資件数は対前期比で17%増加した。ダラスが対前期比で250%、オースティンが33%の増加となった。
▲4/11と4/12にRedwood Cityで開催されたStartup Grind。
ジェネラティブAIに関するテーマのディスカッションが多かった。
②北米におけるジェトロの各種プログラム
(1)グローバル・アクセラレーション・ハブ(GAH)プログラム(随時、無料)
すでに100社近くの日系スタートアップよりお申し込みいただいている。シリコンバレーで実績のある専門家によるメンタリングサービスを中心とし、法務・会計・税務相談を実施。最大3ヵ月活用できるコーワーキングスペース(サンフランシスコ)も提供。
(2)アクセラレーション・プログラム
表(※)のとおり、今年も分野や地域などで分けて実施。英語での対応が難しい、初めて米国や海外に挑戦するスタートアップ向けのプログラムも実施する。
(3)起業家育成プログラム
創業前の起業家や学生にフォーカスしたプログラムを実施する。地域としては、シリコンバレー、ロサンゼルス、オースティン、サンディエゴを予定。
(4)テックカンファレンス
①TechCrunch Disrupt 2023(2023年9月19日~21日)@サンフランシスコ
②世界最大消費者技術見本市「CES」2024(2024年1月5日~8日)@ラスベガス
※https://www.jetro.go.jp/ext_images/theme/innovation/startup/pdf/JETRONorthAmericaProgram_SU.pdf(ジェトロ2023年度北米エリアプログラム一覧・スタートアップ企業向け)
吉田 健(よしだ けん)
2000年ジェトロ入構後、機械、食品、伝統産品等の輸出支援、中国・アセアンへ日用品・生活雑貨の輸出支援などに従事。また、外務省への出向や外食、小売、理美容、教育等の海外への出店支援など、幅広い分野での業務に携わる。ジェトロ佐賀貿易情報センター所長を経て、2021年10月よりジェトロ・サンフランシスコで勤務。