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あなたの「今」が輝くために−其の百三十

2023.08.02

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また、遇う。 

 「仕事は何をしていますか」と聞かれた時、皆さんはどう答えられますか? 私はいつも困ってしまいます。なぜなら、仕事の説明をするのが難しいからです。格好つけた言い方をすると、仕事だと思っていないから説明が難しいのかもしれません。仕事ではなく、生き方ではないかなと。とはいっても僧侶として収入を得ているのは事実なので、「新聞に映画コラムを書いたり、講演に行ったりしています。時々、ラジオやテレビにもご縁をいただいています」と、仕事内容を答えることが多いです。

 さて、そう聞いて「お葬式は?」と思われた方もおられるかもしれません。私のお寺のご門徒さん、英語でいうところのメンバーさんは少ないので、お葬式のご連絡をいただかない年もあります。メンバーさんといいましたが、感覚的には親戚です。私が生れる前から、お寺とご縁のあった方たちがほとんどですから、親戚ですね。当然、ご家族の方々も皆さんよく知っています。だから、お葬式は仕事ではなく、「身内ではないけれど、身内のように近しい人」として、お参りさせていただいています。仕事だったら選ぶことも、日程が合わないと断ることもできますが、身内のように近しい人ですから、そんなことは絶対にできませんし、するという考えさえありません。亡くなったとご連絡をいただいたら、すべての予定をお葬式中心に変更します。私はまだ自由が利きますが、公務員だった父は大変だっただろうなと、今になって思います。

 さてさて、先日のことです。早朝に私の携帯が鳴りました。ご門徒さんのご家族がお亡くなりになったという連絡でした。私にとっては、年に数回顔を合わす、親戚のおっちゃんが亡くなったような思いです。お盆にはお参りでまたお会いできると思っていたのに。照れ屋さんなのか、視線を少し下に向けながらの優しい笑顔に、もう会えないと思うと淋しさがこみ上げてきます。淋しくて、悲しい。この思いはなくならない。今だけでなく、これから先も。と同時に、出遇(あ)えたよろこびもなくならない。思い出すところに、また出遇わせていただく。人生を生き切った、いのちの先輩として。仕事であろうとなかろうと、ご縁をいただきありがとうございます。



写真:Noriko Shiota Slusser

英月(えいげつ) 真宗佛光寺派長谷山北之院大行寺住職。江戸時代から続く寺の長女として、京都に生まれる。同業者(僧侶)と見合いすること、35回。ストレスで一時的に聴力を失う。このままではイカン! と渡米。北米唯一の日本語ラジオ「サンフランシスコラジオ毎日」でパーソナリティーを勤める他、テレビ、ラジオCMに出演。帰国後、大行寺で始めた「写経の会」「法話会」に多くの参拝者が集まる。講演会、テレビ出演、執筆など活動は多岐にわたる。最新著書は『二河白道ものがたり いのちに目覚める』(春秋社) 。

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