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柳家東三楼の「Break a leg 落語の時間ですよ」Vol.35

2024.02.14

配信

落語から日本を学ぶ

 ベイエリアの皆さま、こんにちは。今回は落語で日本の文化を学ぶことを考察します。

 以前にも書きましたが、アメリカおよび日本以外の国に住むバックボーンを日本に持つ人にとって、「日本にルーツを持つアイデンティティ」を日本から離れてどう保って行くかは重要な問題かと思います。また、親が日本にルーツのある子息が海外でどう日本を感じる、学ぶかということを大事に思う方もいらっしゃると思います。

 自身のアイデンティティがアメリカ、または日本にある、そして両方あるなど、個人によって、それこそ家族内でも一人ひとり違うかもしれません。そして、どこにアイデンティティを感じるかは個人の自由です。そこで僕が落語の持つ可能性を考えるわけです。

 もし日本に、日本人ということにアイデンティティを感じたいときに、落語は日本人の心、人情、そして文化に簡単にアクセスできると。

小噺にバカを扱ったものがあります。

『兄弟のばかの小噺』

 弟「兄ちゃん、兄ちゃん」

 兄「何だ弟」

 弟「1年てのは、13カ月だろ」

 兄「どうして」

 弟「だってさ、1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月お正月だ」

 兄「バカ、お盆が抜けてらあ」

って兄弟揃ってバカだったりします。

 この小噺では、お盆がどういうものなのかや、1から順に数字を数えるときに親指から折って勘定する事で、アメリカとの数え方の違いを知ります。

『一家揃ってバカの小噺』

 弟「兄ちゃん、兄ちゃん」

 兄「何だ、弟」

 弟「来年の男のお節句とさ、女のお節句とさ、どっちが先に来るのかな」

 兄「それはおめえ、何だろ、男のお節句が先に来る事もあれば、女のお節句が先に来る事もあるんだよ。そうだよな、おとっつあん」

 父「バカ、来年の事が今から分かるわけねえじゃねえか」

そばで見ていたおっかさんが

 母「まあ、本当にうちのお父さんは頼りになるよ」

 って一家そろってバカでした。

 この小噺からはお節句が学べます。五節句、1月7日は人日の節句で七草粥を食べること、桃の節句、子どもの日は男の子の節句、七夕も節句、9月9日は重陽の節句で菊の節句と、季節にちなんだことを感じます。

 毎週一回、落語をする、その繰り返しで口語の日本語で遊ぶのが楽しくなったり、自分とは年齢も性別も違う人間を演じる(狸や狐も入ります)ことで、心理学でいうアルターエゴ、違う人物になってみるという体験から、相手の立場に立って思いやりの心、想像が生まれます。

 扇子と手拭い以外は使わない想像と創造で遊ぶ落語で、日本らしさを味わう、それを僕は提供していきたいです。



柳家東三楼(やなぎやとうざぶろう) 落語家歴25年。真打として日本全国で落語を披露する中で世界中の人に落語を知ってもらいたいと、2019年よりアメリカへ移住。現在はNYのブルックリンを拠点にアメリカにてすでに200回以上の公演を行う。50州すべての州にて落語公演を実施することを目標に、日々精力的に活動中。

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