州内日系企業の事業活動の変化と展望
カリフォルニアは6月15日をもって経済活動の全面再開が認められ、原則として全てのセクターが通常のオペレーションに戻ることができるようになりました。ノン・エッセンシャルのジェトロはようやくオフィスが再開し、段階的に職員が戻りつつあります。
このタイミングに合わせて、ジェトロは先月2つのアンケート調査を実施しました。1つは、カリフォルニア州の日系企業のオフィス再開はどうなるのか、もう1つは、ベイエリアに限定して、日系企業のオープンイノベーション活動が新型コロナでどう変化したか、という2つのテーマです。今回はその結果の一端をご紹介します。
#1:州内日系企業のオフィス再開
306社から回答を得ました。業種別の内訳は、製造業が約4割、サービス、卸・小売が約1割。その後、物流・運輸、情報通信と続きます。
<6月15日以降の勤務形態>
・全従業員のオフィス勤務を検討する企業が約2割にとどまる一方、約6割の企業がハイブリッド勤務を検討。全従業員がリモート勤務は1割未満で少数。
・ハイブリット勤務を検討する企業が想定するオフィス出勤者は、「オフィスでの勤務が望ましいと考える業務を行う従業員」が最も多く(約7割)、「オフィス勤務を希望する従業員」(約5割)と続く。
<新型コロナ終息後の勤務形態>
・新型コロナ終息後もなお、全従業員のオフィス勤務を検討する企業は約3割にとどまる。半数の企業がハイブリット勤務を検討。約1割が方針を決めていない。全従業員のリモート勤務の検討は1割未満で少数。
・また、今後の駐在員数については、5割以上の企業が現状維持とする一方、方針未定の企業が約2割に上る。
<5月時点のオフィス来訪希望者の受け入れ>
・一部条件付きも含めすでに約5割の企業がオフィス来訪者を受け入れている一方、約3割の企業が原則オンライン対応。残り約2割はそもそもオフィス来訪者がいない企業。
・また、半数の企業はワクチン接種が今後のオフィス来訪者受け入れに影響すると回答。
・米国内出張については、5月時点で6割以上の企業が米国の拠点内の判断の下で実施。日本出張については、約3割の企業が原則不可としている。また、6割以上がワクチン接種が今後の米国内外の出張に影響すると回答。
結果を見る前から、6月15日を越えてもいきなり 100%オフィス勤務とはいかないだろうとは思っていましたが、少し意外だったのは、新型コロナ終息後も半数もの企業がハイブリッドを検討しているという事実。今回のパンデミックが勤務形態を根本から変えるきっかけとなったようです。
#2:ベイエリア日系企業のオープンイノベーション活動の変化
そもそも対象企業はそう多くはありませんが、パンデミック前に活動していた企業のうち43社から回答を得ました。
<駐在所の体制と予算>
・体制については、ざっくり言うと、減らしたが4割、変わらないが5割、増やしたが1割。
・予算については、減らしたが3割、変わらないが6割、増やしたが1割。
<拠点の移転>
移転したと回答した企業は2社のみ。うち1社はベイエリア内の移転。
体制、予算が減った(減らされた)企業が多いという結果は残念ながら想定内でした。また、ベイエリアでは一部のテック企業がテキサスなど州外に拠点を移す動きが話題となりましたが、回答のあった企業については踏みとどまったことがわかります。
<コロナに伴う移動制限によって苦労した点と新たな取組(自由回答)>
・全てがオンラインでのコミュニケーションとなり、遠方のスタートアップとも容易に繋がれる一方で、インパーソン・イベント等でバッタリと面白いソリューションに出会い、そこから協業がスタートする…という流れがほぼ無くなった。
・コネクションやソーシングルートが確立されている上では、リモートで何の問題も無い。新しい接点さえ、これまでのコネクションによってある程度開拓できている。
・製品を触らないとわからない事柄がある。商材の詳しい説明を相手に行うことができない、展示会等で製品を実際に見て詳しい説明を聞けない。
これらの他にも様々な悩みや対応が寄せられました。今回はデータの説明が中心となりました。興味を持たれた方はぜひ、専用窓口(sfc-research@jetro.go.jp)までEメールにてお問い合わせください。
(ジェトロ・サンフランシスコ所長 山下 隆也)
1990年4月に通商産業省に入省。通商政策局、製造産業局などを経て、2017年から内閣府原子力被災者生活支援チーム参事官を担当。福島第一原子力発電所の事故で被害を受けた福島の復興に尽力してきた。2019年11月よりETROサンフランシスコ所長。
JETRO_独立行政法人日本貿易振興機構。日本の貿易、投資、開発途上国の経済支援などを総合的かつ効率的に実施するための中枢機関。サンフランシスコ・センターでは対日投資、ハイテク技術交流、ベンチャー企業支援、各種調査活動に力点を置いている。