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アメリカの法律 In-and-Out Vol.33

2026.10.14

配信

Vol.33 : ハミコ、親の相続を受ける!の巻 その2

 皆さま、こんにちは。弁護士の戸木です。「ハミコ(仮名)、アメリカに来る」シリーズでは、彼女が日々直面する法律トラブルをご紹介しています。今回は、日本に住む父の相続をめぐるお話の続きです。

 前回、遺産を全て母が取得することで、ようやく話合いがまとまりました。ところが、今度はハミコ自身の提出書類でつまずきます。海外転出で住民票を抜いているため、日本に住む兄妹と同じ書類を揃えられないのです。

 日本で遺産分割に基づく不動産の名義変更や預金の解約をする際には、通常、相続人全員が実印を押した遺産分割協議書と、印鑑証明書の提出を求められます。しかし、ハミコは印鑑登録がありません。つまり、印鑑そのものを持っていたとしても、実印としては認められないということです。

 そこで利用するのが、領事館が発行する署名証明、通称「サイン証明」です。ハミコは米国に戻ると、日本の弁護士からEメールで届いた協議書を印刷して署名。領事館を予約し、別の用紙に署名する形式の証明と、米国の住所を証明する在留証明を取得して、まとめて日本に送りました。

 これで終わりと思ったところ、弁護士から連絡が入りました。「今回の提出先では、協議書そのものに証明書をとじ合わせた形式が必要です。」署名証明には、署名する書類に証明書を付ける形式と、署名を単独で証明する形式があります。どちらが必要かは提出先次第です。領事館で取得すれば大丈夫と思っていたのですが、形式までは気が回りませんでした。

 結局、日本から製本された協議書の到着を待ち、再び領事館へ。今度は事前に署名せず、担当官の目の前で署名し、証明書を付けてもらいました。このような書類の往復や日程調整をしているうちに、結局3カ月ほどかかってしまいました。

 相続手続きについて、時効や期限があるわけではありませんが、不動産と税金は別です。不動産の相続登記は、原則として、相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。

 相続税は、原則として、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告と納税をする必要があります。基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」とされていて、ハミコのケースは、母と子ども3人で54 00万円。税法上の評価方法を使って正味の遺産額がこれを超えるかを確認します。

 四十九日が終わってから話し合い、書類の準備に数か月、さらに銀行の解約手続き。こうしていると、10カ月はあっという間です。協議がまとまらない、預金を引き出せない、といっても、それだけで税務の期限が延びるわけではありません。

 また、米国の連邦遺産税は遺産側に課されるのに対し、日本の相続税は財産を受け取った相続人側に課されます。今回は母が全て取得するため、母について税務手続きを進めることになりました。配偶者の税額軽減で納税額がゼロになる場合もありますが、その適用には期限内の申告が必要です。

 ハミコも、米国に住んでいるから日本の税金とは無関係、とはいきません。今回のように、日本在住の日本人である父から相続する場合、米国にある財産も原則として日本の相続税の対象です。例えば、父が米国に不動産や銀行口座を持っていて、それを米国に住むハミコが引き継ぐ場合、お金が日本を経由しなかったとしても、結論は変わりません。どこで手続きをしたかと、どこで税金がかかるかは、別の話なのです。

 ようやく父の相続が片付きそうになりましたが、遅かれ早かれいずれは母の相続です。兄妹の話し合いに、書類の準備、そして税金。母に全て渡せば解決、というわけでもなさそうです。今度こそ早めに準備しなければと、早くも次の相続に頭を痛めるハミコでした。



戸木 亮輔(とぎ・りょうすけ)弁護士 
日本(第一東京弁護士会)、カリフォルニア州、ニューヨーク州弁護士。東京都内で弁護士として約8年間法律事務所に勤務した後、ニューヨーク州のコーネル大学ロースクールに留学。サンフランシスコで勤務弁護士の経験を経て、2024年1月よりKaname Partners US, P.C.を設立、開業。

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