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アメリカの法律 In-and-Out Vol.26

2026.03.18

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Vol.26 : ハミコ、赤信号無視で切符を切られる!の巻

皆さま、こんにちは。弁護士の戸木です。「ハミコ(仮名)、アメリカに来る」シリーズでは、彼女が日々直面する法律トラブルをご紹介しています。今回は、ハミコが交通違反の切符を切られたときのお話です。  

いつものように車を運転していたハミコ。少し先に、パトカーと停車させられている車が目に入りました。「あー、またネズミ捕りに捕まっている人がいるなあ」と思った、その矢先。ぱっと目線を前に戻すと、信号は赤。ききーっと急ブレーキを踏んだものの、止まった場所は交差点のど真ん中でした。これはまずい、の一言です。  

幸い、左右から走ってくる車はなく、歩行者もいませんでしたので、事故にはなりませんでした。しかし、後部座席には子ども。ハミコの顔面は一気に蒼白です。少し動転していると、警官がこちらに向かって「こっちにおいで」という仕草をしていました。  

警官から告げられたのは、赤信号無視。警官自体は優しく、後部座席の子どもが無事だったこと、けが人がいなかったことを確認した上で、「事故にならなくて本当に良かった。信号は守りましょうね」と諭してくれました。しかし、チケットの処理は別問題。ハミコが何とかお涙ちょうだいで懇願してみても、目もくれず、すっとチケットを差し出してきたのでした。  

チケットを見ると、反則金(実際には裁判所のnoticeではbail amountやfineと書かれていることが多いです)を払えば、裁判所に行かなくてもよい旨が書かれています。日本の「反則金」に似ていて、その違反についてお金を払って事件を終わらせるための金額です。これを払えば、出頭せずに手続きを終わらせることができますが、ただ払って終わりにすると、通常は違反として処理され、DMVの記録や保険に影響が出ることがあります。もちろん、無罪を主張したければ裁判所で争うことはできますし、カリフォルニア州では書面だけで争うtrial by written declarationという制度もあります。  

もっとも、本件のように赤信号進入そのものを警官が現認しているケースでは、無罪主張は容易ではありません。警官の手続きに違法性があったときに無罪が認められるケースがありますが、単純ではありません。理屈の上では、そもそも停車させたこと自体に客観的な根拠がなかったとか、交通違反と関係のない調査のために不当に停車時間を延ばしたとか、刑事・行政手続上の問題があれば争う余地が出てくる場面はありますが、通常はかなり難しいと思った方がよいでしょう。  

さて、ハミコは警官に言われたことを思い返しながらチケットを読み返していました。そうすると、違反講習、いわゆるtraffic schoolを受ければよいと書いてあるではありませんか。カリフォルニア州では、一定の軽微な違反について、18か月に1回に限り、traffic schoolを修了すると、その記録はconfidential扱いとなり、DMVのポイントはつかず、DMV内部の記録には残るものの外部に開示されるdriving recordには出ず、保険会社からも通常見えない扱いになります。実務上のダメージをかなり抑えてくれる制度です。  

こんなラッキーなことはありません。しかも、オンラインで受けられる講習で、受講料5ドル、修了証発行込みでも15ドル程度というものを発見。講習はテキストを読み、途中のテストに答えていく形式で、1時間ほどで終わりました。もっとも、ここで安いのはあくまで講習そのものの料金であって、裁判所に支払う反則金や手数料とは別。裁判所への支払いを済ませた上で、期限までにapproved schoolを終える、というのが基本です。  

軽微な交通違反であれば、弁護士を入れなくても、また、法廷で正面から無罪を主張しなくても、このようにダメージをかなり抑えられる仕組みが用意されています。こういうところは、何ともアメリカらしいというべきでしょうか。万が一そのような事態になったときは、ただ「ああ、切符だ」で終わらせず、どのようなオプションがあるのかを一度確認してみましょう。  

とはいえ、今回のハミコの違反は、一歩間違えれば大事故や大けがにつながっていてもおかしくありませんでした。たまたま左右から車が来ておらず、歩行者もいなかったからよかっただけです。後部座席に子どもを乗せていたことを思えば、ぞっとする話です。制度に救われたからよかった、ではなく、まずはそのような制度のお世話にならない運転を心がけたいものです。




戸木 亮輔(とぎ・りょうすけ)弁護士 
日本(第一東京弁護士会)、カリフォルニア州、ニューヨーク州弁護士。東京都内で弁護士として約8年間法律事務所に勤務した後、ニューヨーク州のコーネル大学ロースクールに留学。サンフランシスコで勤務弁護士の経験を経て、2024年1月よりKaname Partners US, P.C.を設立、開業。

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