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2026.08.05

配信

バークレーで進む量子・気候テックの拠点整備

 世界有数の研究大学であり、多くのスタートアップを生み出してきたカリフォルニア大学バークレー校では、量子技術や気候テックをはじめとするディープテック分野において、研究成果の社会実装やスタートアップ支援を目的とした新たな拠点整備が進められている。これと歩調を合わせるように、バークレー市でも大学西側地区を「Berkeley Innovation Zone」として再開発し、研究機関やスタートアップ、企業が集積するイノベーション拠点の形成を進めている。大学と地域が一体となって次世代産業のエコシステムづくりを進める中、2025年に本格始動した量子技術の拠点「Quantum Nexus」と、2028年の開設を予定する気候テック分野のインキュベーション施設「Bakar Labs for Energy & Materials」を紹介したい。

カリフォルニア州の量子エコシステムをつなぐ「Quantum Nexus」

2025年、バークレー中心部に開設された「Quantum Nexus」は、量子技術の研究者やスタートアップ、大企業、投資家、行政機関などが集まり、新たなビジネスや共同研究を生み出すための拠点である。UCバークレーとローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)が中心となって整備を進めており、異なる立場の関係者が日常的に交流できる環境を整えることで、研究成果の社会実装を加速させることを目指している。量子技術は実用化までに長い開発期間と多額の投資を要することから、大学だけでなく産業界や行政を含めた連携体制の構築が重要視されている。

 こうした取り組みの背景には、UCバークレーが量子技術分野で培ってきた研究基盤を、産業界やスタートアップとの連携を通じて社会実装へと結び付けようとする動きがある。同大学では、ノーベル賞受賞者も輩出した量子物理学研究の伝統を背景に、超伝導量子ビットや量子アルゴリズム、量子ネットワークなど幅広い研究を推進している。近年は基礎研究だけでなく、産業応用や人材育成、スタートアップ創出までを含めたエコシステム形成に重点を置いている。

 その動きは、スタートアップ支援にも表れているように感じる。今年4月に開催されたUCバークレー発のアクセラレーターで、独自のベンチャーファンドを持つ「Berkeley SkyDeck」のデモデーでは、量子コンピューティングが今後の重点分野の一つとして紹介された。また同デモデーでは、州が進める量子技術の育成プロジェクト「California Quantum Initiative」との連携にも言及があり、支援対象領域や投資機会の拡大を視野に入れる方針が示された。現地では、量子分野は依然として技術的ハードルが高い一方、AIブームを背景に投資家の関心も急速に高まっているとの声も聞かれた。

エネルギー・材料分野へ広がる「Bakar Labs」

 また、バークレーではこれまで、バイオや医療分野の大学発スタートアップを支援するインキュベーション施設「Bakar Bio Labs」を運営してきた。同施設では、起業間もない企業にオフィス、メンター、投資家とのネットワークなどを提供し、大学の研究成果を事業化へとつなげる役割を担っている。ウェットラボや共用実験機器が整備されており、創業初期のスタートアップが数百万ドル規模の設備投資を行うことなく研究開発を始められる環境が整えられている。これまで約60社のスタートアップを支援し、累計資金調達額は10億ドルを超える。ジェトロ・サンフランシスコ事務所も同施設と連携し、日本のバイオスタートアップがこうした支援を一部受けられるようにしている。

 その実績を踏まえ、この成功モデルををエネルギー・材料分野にも展開し、新施設として整備が進められているのが「Bakar Labs for Energy & Materials」である。2028年の開設を予定しており、約14万5000平方フィートの施設内には実験室やスケールアップ設備、オフィス、イベントスペースなどを備え、最終的には約75社のスタートアップが入居できる計画だ。対象分野は蓄電池、次世代材料、炭素回収、製造技術、資源循環など幅広く、施設完成に先立ちパイロットプログラムも始まっている。

 ジェトロ・サンフランシスコ事務所では、2021年よりUCバークレーとスタートアップ支援に関する連携を進めている。昨今は上記で述べたBaker Labsとの連携ほか、Berkeley SkyDeckと九州・東北など地域発起業家をを対象としたブートキャンプの実施や、8月にはBerkeley Haas Entrepreneurship(HaaS)と連携し支援する日本の学生起業家をベイエリアに迎える予定である。こうした大学発イノベーション・エコシステムとの連携を通じ、より多くの日本のスタートアップや次世代起業家のグローバル市場への挑戦をこれからも後押ししていきたい。

武田 史織(たけだ・しおり)
日本貿易振興機構(JETRO)にて、2021年からアクセラレーター連携による日系スタートアップ支援や国内スタートアップ・エコシステム拠点の形成事業を担当。日本国際博覧会協会へ出向も経験。2025年11月よりサンフランシスコ事務所に着任。


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