お仕事探しはこちら!

あなたの「今」が輝くために−其の百六十五

2026.09.02

配信

「シンポジウム」

 先日、あるシンポジウムに登壇される方とお話しをしていると、「シンポジウムなのにワインも出ないんですよ」と笑顔で仰るので、「今まで色々と登壇してきましたが、ワインは出ないですよ〜」と、軽やかに笑い返した私。旧帝国大学卒、元大学教授の上品な紳士のユーモアだと思ったのです。が、しかし! 無知とはお恥ずかしい。シンポジウムの語源がまさかの「酒宴」だったとは…。

 気になって調べてみると、英語の「symposium」はギリシャ語の「symposion」から派生した言葉だそうです。ちなみにラテン語も英語と同じく「symposium」。これらの語は「共に」という意味の「syn-」と「飲むこと」という意味の「posis」から成っていて、その意味は「共に飲むこと」。まさに「酒宴」です。とはいえ語源となった古代ギリシャでは、単に飲むだけのどんちゃん騒ぎの宴会ではなく、食後に行われた哲学的議論や音楽、舞踊など、知的な会話や娯楽を楽しむ社交の場を指したようです。

 かの有名な、古代ギリシャの哲学者プラトンの『饗宴』。本棚の飾りには薄すぎる本ですが、この本の英訳が『The Symposium』。まさに、シンポジウム! 岩波文庫から出ている久保勉訳の『饗宴』の序説には、「元来『共に飲む』ことを意味するシュンポシオンとは(中略)ギリシャ人の間で夕食に続いてもしくはこれとは独立に催された酒宴のことである。それは酒(ワイン)が出てから始まるのであるが、その酒は食事が終わってから飲む習慣であった」と記されています。なるほど! 確かにシンポジウムにはワインが必要です。

 嗚呼、知らないのに、知らないということも知らず、知っているつもりの滑稽さよ。ほんとにお恥ずかしい。今回はありがたいことに、親切な紳士が語源を教えてくださったので、知らなかったと知ることができましたが、きっとこれだけではないんだろうなと思います。色々なことを、知ったつもりでいるんでしょうね。例えば、私自身です。ついつい自分一人で頑張っている気になっていますが、当然のことながら、多くの支えがあって今の私があるのです。それは、言葉に語源があることと似ています。言葉に背景があるように、私にも背景がある。支えてもらっているという背景を知ることは、私ひとりではないという力となるのではないでしょうか。Cheers!



写真:Noriko Shiota Slusser

英月(えいげつ) 真宗佛光寺派長谷山北之院大行寺住職。江戸時代から続く寺の長女として、京都に生まれる。同業者(僧侶)と見合いすること、35回。ストレスで一時的に聴力を失う。このままではイカン! と渡米。北米唯一の日本語ラジオ「サンフランシスコラジオ毎日」でパーソナリティーを勤める他、テレビ、ラジオCMに出演。帰国後、大行寺で始めた「写経の会」「法話会」に多くの参拝者が集まる。講演会、テレビ出演、執筆など活動は多岐にわたる。最新著書は『二河白道ものがたり いのちに目覚める』(春秋社) 。

この記事に関連する記事

一覧ページにもどる

share with ups!

新規会員登録

ベイエリアの求人・仕事情報・お知らせ・募集・不動産・個人売買情報はBaySpo!
無料で会員登録をすると、bayspo.comをもっと便利にお使いいただけます。

新規会員登録をする

サクッと読める!
BaySpoとeじゃんデジタル版をチェック!