シリコンバレー発ビジネス最前線

2025.01.01

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「スタートアップ・エコシステム百景」

新年あけましておめでとうございます。旧年中もみなさまにジェトロの取組みについて多大なご理解とご協力を賜り、この場をお借りし感謝を申し上げたいと思います。　

さて、巳年スタートの今回は仕事柄連携している世界各地のエコシステムについてお話をしたいと思います。　

まずは当地サンフランシスコベイエリア、シリコンバレーです。北から南まで日本の首都圏でいうと東京から筑波まで、関西圏でいうと神戸から京都までの広範な土地に、世界を代表する大学やテック企業、そして爆発的な成長の可能性を秘めるスタートアップとそれを支えるベンチャーキャピタルが集積しております。人種的に見ても、米国内全体の人口構成は白人が約6割、アジア系が1割弱ですが、サンフランシスコベイエリア、シリコンバレーの人口構成は白人が約4割、アジア系が約3割とアジア系の割合が高く、人種の多様性に富んだ地域と言えます。特に生成ＡＩの世界ではインド系の方々の活躍が目立っております。Startup Genomeが発表している「The Global Startup Ecosystem Report」においても、当地の評価は常に世界一のエコシステムであり、とりわけ人脈や人材・知の蓄積、資金調達のしやすさ、といった点が他の地域に比べてもダントツで優れているという評価を受けております。　

ニューヨークやボストンについても、世界を代表する有名大学や企業が集積しておりますが、どちらかというと伝統がある巨大企業が集積している印象があります。またサンフランシスコベイエリア、シリコンバレーに比べて都市に集中しており、車で移動して人に会うというより、地下鉄や徒歩で会いに行くような感じです。特にボストンについては、医療、バイオの集積地として注目されており、その成長がますます期待されております。ボストンでは会う人みなさんから「ｄｅｎｓｅ」（人材や知が小さい街に集中・密集している）との声を聞きました。　

一方日本については、東京、愛知が非常に盛り上がっている印象があります。東京においては東京都が有楽町にスタートアップ支援施設「Tokyo Innovation Base」を設立し、スタートアップ支援に力を入れております。また愛知県も県内に「Station Ai」というスタートアップ支援施設を昨年11月に開設し、同様にスタートアップ支援に力を入れております。　

ここで挙げた地域以外でも、例えば北米ではマイクロソフトやアマゾンの本拠地であるシアトル、サウスバイサウスのヒューストン、さらにCollisionが開催されてきたトロントも盛り上がっていますし、世界的にはフランス政府の肝入りで設立されたStation Fがあるパリ、そしてロンドン、ベルリン等も注目されております。アジアにおいてもシンガポールは東南アジアのスタートアップやイノベーションのハブ都市として成長が期待されております。　

これら地域の共通する特徴は、優秀な人材を育て供給する世界有数の大学が集積していること、そしてその知の蓄積を商業化するために連携しようとする企業群・産業集積があること、が挙げられます。産学の連携が非常に上手くいっていることに加え、場合によっては政府機関である官も積極的に支援し、産学官連携がエコシステムの成長の大きな鍵になると言っても過言ではありません。今後ますます都市間の競争が高まると思いますが、一方でスタートアップ支援やイノベーションに関わる都市間の協力や連携についても進むことが期待されております。　

ジェトロでは、我が国のイノベーション人材の育成、および海外のイノベーション拠点・人材とのネットワークの構築を目的に、若手起業家や学生等を先述のご紹介した欧米やアジアを中心とする、世界各地のスタートアップ・エコシステムに派遣する海外派遣プログラム「Ｊ‒ＳｔａｒＸ」を展開しており、今後5年間で1000人の海外派遣を目指しております。こういった取組みがより多くの日本のスタートアップの海外展開に繋がるとともに、結果的に日本の富や成長に繋がるものと信じております。　

今年は巳年。「巳」（蛇）は豊穣や金運を司る神様として、そして弁財天の遣いとして金運・財運の象徴となっています。世界情勢は依然厳しい状態ですが、今年もみなさまにとって発展の年、繁栄の年でありますよう、心よりお祈り申し上げます。