輸出に取り組む企業の拡大に向けて
内閣府の2023年の発表(※1)によると、日本の中小企業の輸出企業割合は2020年に21・2%、過去10年にわたる上昇は1・5ポイント。一方、大企業の輸出企業割合は28・3%となり、10年間で3・2ポイント上昇となった。輸出金額ベースでは、中小企業の輸出額は過去10年にわたりおおむね5兆円程度で推移、大企業においては、世界経済の減速と新型コロナウイルスの影響により2019年度と2020年度には大きく減少しているが、2011年度から2018年度まで13兆円増加している。大企業に比して、中小企業は輸出を伸ばせていないということが示されています。
このような状況下、ジェトロでは、輸出に取り組む企業の拡大を目指すべく、2019年から「ECを活用したジャパンモール事業」、「アマゾンUSサイト上でのジャパンストア」、2023年からは「新規輸出1万者支援」などを行ってきましたが、今年度は輸出促進の観点から、サンフランシスコ発で新たに二つの取り組みをスタートしました。
①サンプルショールームを通じたキッチン用品、文具などの輸出支援
11月からジェトロ・サンフランシスコ事務所内に日本の日用品・インテリア用品・文房具などのサンプル商品を展示する「サンプルショールーム」をオープンします。
当地のバイヤーに日本の商品を手に取って体験してもらえる機会を提供し、気に入ったら日本メーカーとオンラインで商談をしてもらい、購入につなげるという試みです。北米では、サンフランシスコにとどまらず、ニューヨーク、ロサンゼルス、ポートランドなどでも商品を出張展示する予定です。これまで、食品分野においてはロサンゼルスにてサンプルショールームを行ってきましたが、キッチン用品やインテリア小物、文具などのショールーム展開は、米国において初めてとなります。事務所のエントランスもスペースデザインしてもらいショールームらしいスペースを創出。米国に住む人の日常になじむ商品を展示しています。
また、オンラインでもバイヤー限定のカタログサイト「ジャパンストリート」を活用して、商品をフィーチャー。商品に精通した専門家を中心に、多くの応募のなかから厳選された160のアイテムを2025年2月まで展示しています。
②日系フードテックスタートアップ向けのアクセラレーションプログラム
サンマテオにあるフードテックのインキュベーターであるKitchen Town(※2)と連携し、日本のフードテックスタートアップ10社の米国メインストリームマーケットへの展開を支援するプログラムを開始しました。
プログラムは、全編英語で9月の東京でイントロダクションからスタート。10月14日の週には、日本からスタートアップ経営者などがサンフランシスコに来て、当地で成功している食品関係スタートアップ5社以上の経営者の話を聞くセッション、米国ならではの規制、マーケティング、ファンドレイジングなどの講義を集中的に受けるなど本当に刺激的な内容で、多くの収穫があったものと思います。私個人としても、多くの学びがあり、やはりアメリカの小売メインストリームマーケットへの参入をサポートする取り組みができればと改めて思いました。10月19日には起業家やバイヤー、ディストリビューターなどとのネットワーキングイベントを開催。3月にはオンラインでデモデイも行う予定です。
ジェトロでは、これらのほかに、日本からの新たに商品輸入を希望するバイヤーを日本に派遣するプログラム、在米日系企業の海外ビジネスの困りごと、法人設立や税務、販路開拓などを当地の専門家(ビジネス、法務、税務)に相談できるサービス(一部、大企業は除く)、企業向けセミナー、大企業を中心とした海外スタートアップとの連携・協業を促進するJ-Bridgeなど多様なサービスを展開しています。イベントの詳細などは、週1回発行しているメールマガジンを中心に、JETRO USAのLinked Inでお知らせしていますので、ぜひご覧ください。
芦崎 暢(あしざき・とおる)
民間企業にて、グループ企業の経営支援やM&Aなどを担当後、海外向け食品販売事業の立ち上げのため、香港駐在。2018年ジェトロ入構後、本部(東京)にて流通・EC連携を通じた輸出支援、Amazonジャパンストア事業の立ち上げ。名古屋事務所で県内製造業と海外スタートアップの協業連携、中堅中小企業の輸出促進全般を担当。2023年8月から日本企業の輸出促進事業と日本向けのビジネス情報調査と情報発信を担当。
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