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あなたの「今」が輝くために−其の百四十五

2024.10.30

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「偲ぶ会」

 それは今から15年前のことです。私がまだサンフランシスコに住んでいた時、テレビ取材がありました。日本の家族、主に親から、海外に住む子ども宛てのメッセージが託された物を届けるという番組で、今も続いています。その番組のディレクターが、最近、亡くなりました。

 ここ数年、会ってはいませんでしたが、日本帰国後も取材をしてくださったこともあり、時々連絡は取り合っていました。私のことを英月ちゃんと呼ぶ彼は、「仕事とは別に英月ちゃんの活動を記録しておきたいから、講演会とかあったら教えて」と言ってくれていました。とはいえ、月に数回以上、全国各地に講演に行っているので、実際にお伝えしたことはありません。今年の7月に新刊出版を記念して、世界遺産の平等院鳳凰堂でイベントを行うことになった時、平等院で法話をするなんて! しかも夜間の貸切なんて! これは彼に知らせなきゃと思いましたが、自分の都合がいい時だけ連絡するのも… と躊躇し、そのままに。

 さて、先日ラジオに出演した時、彼と共通の知り合いと一緒になり、お葬式が家族だけで行われたので、淋しく思っている人たちがいると聞きました。そこで、私の寺で偲ぶ会をすることに。当日は仕事仲間を中心に、全国から30名ほどがお参りに来られました。午後4時から始まった会は、お経さんのお勤め、法話に続いて、故人を偲んでのお食事がなんと! 日が変わる頃まで続きました。

 「はじめまして」の方から、「お久しぶり」の方まで、亡くなった方を縁として、共に過ごす時間。彼はいないけれど、彼がいたという事実は、ここにこうして今もある。だけでなく、新たな出会いまでつくってくれている! その事実に圧倒されました。人生の長さや短さに関わらず、何を成したか、成せなかったのかも関係なく、ただ、生きていたという事実。存在していたという事実。その、いのちの事実に圧倒されたのです。あぁ、私たちは死んで終わってしまうようないのちを、生きているのではないんだと。亡くなった後も、関わり続け、影響を与え続ける。

 もう彼と顔を突き合わして会うことはできませんが、私を応援してくれていた事実はなくなりません。思い出すところに故人と出会い直し、励まされることがあるのだと、改めて知らされた偲ぶ会でした。


写真:Noriko Shiota Slusser

英月(えいげつ) 真宗佛光寺派長谷山北之院大行寺住職。江戸時代から続く寺の長女として、京都に生まれる。同業者(僧侶)と見合いすること、35回。ストレスで一時的に聴力を失う。このままではイカン! と渡米。北米唯一の日本語ラジオ「サンフランシスコラジオ毎日」でパーソナリティーを勤める他、テレビ、ラジオCMに出演。帰国後、大行寺で始めた「写経の会」「法話会」に多くの参拝者が集まる。講演会、テレビ出演、執筆など活動は多岐にわたる。最新著書は『二河白道ものがたり いのちに目覚める』(春秋社) 。

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