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アメリカの法律 In-and-Out Vol.10

2024.11.13

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Vol.10 :ハミコ、老後対策を始める! の巻

皆さまこんにちは。弁護士の戸木です。前回に引き続き、「ハミコ(仮名)、アメリカに来る」という設定の下、彼女が日々直面する法律問題をご紹介していきたいと思います。  

移住・起業・逮捕・離婚と波乱万丈な人生を歩んできたハミコですが、年齢も中年になり、老後を考えるようになりました。日本でも遺言や終活の必要性が説かれている向きがありますが、アメリカではエステートプランニング(ESP)と称して、遺言(Last Will)やトラスト(Living Trust)を用意される方が多くいらっしゃいます。  

ハミコが弁護士に相談に行ったところ、遺言、トラスト、パワーオブアトーニー(通称POA)、事前医療指示書(Advance Healthcare Directive)、医療情報開示同意書(HIPAA Authorization)の作成を勧められました。細かい説明は省きますが、弁護士からは、「最終的に財産を誰にどのようにあげたいか」「財産の管理・医療の判断を誰に任せたいか。その人は本当に信頼できる人か」という質問を投げられました。幸い、ハミコには信頼している一人娘がいたため、全部娘にあげたいし任せたいということでシンプルな内容になりました。中には、信頼できる親族がいない場合や、親族がいても関係性が良好でなく、誰にあげるか・任せるか、という点で悩ましい場合があります。次回、POAの話の中で注意点に触れたいと思います。いずれにしても、ESPには相続対策だけではなく、老後対策も含まれています。事故や病気等、いつ何が起こるか分かりませんので、早いに越したことはありません。  

ハミコが弁護士から指摘された問題点は、日本の親から相続した日本にある預金や不動産に関しては、その弁護士はタッチできないというものでした。法律上、カリフォルニアで作った遺言であっても日本で有効とされています。しかし、言語も法律も異なるアメリカで作った遺言をもって、日本の金融機関や法務局で手続きをするのは至難の業です。  

困ったハミコが調べたところ、どうやら領事館で公正証書遺言を作れるらしいことを知りました。日本から戸籍等を取り寄せる必要があったものの、領事館と打ち合わせを重ね、領事に公証人の役割を担ってもらう形で、無事に日本法方式の公正証書遺言が作成できたのでした。   


戸木 亮輔(とぎ・りょうすけ)弁護士 
日本(第一東京弁護士会)、カリフォルニア州、ニューヨーク州弁護士。東京都内で弁護士として約8年間法律事務所に勤務した後、ニューヨーク州のコーネル大学ロースクールに留学。サンフランシスコで勤務弁護士の経験を経て、2024年1月よりKaname Partners US, P.C.を設立、開業。

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