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2024.02.28

配信

近年の日本産食品の輸出動向について

2023年 農林水産物・食品の輸出額  


農林水産省が公表した20 23年の日本の農林水産物・食品の輸出額は、1兆4547 億円と過去最高を更新した。前年同期比で2・9%増加し、11年連続で過去最高の更新となった。  

2023年は新型コロナウイルスの行動制限等の緩和により、世界的に外食する機会が増え、また円安も影響し、上半期の輸出実績は対前年同期比プラス9・6%であった。一方、下半期においては、福島第1原発のALPS処理水放出に反発した中国が、日本産水産物の輸入を全面停止した影響などで2・9%の減少となり、1年を通して見ると昨年の水準を若干上回る結果となった。

国・地域別の輸出額においてアメリカは、1位中華人民共和国(2376億円、対前年比マイナス14・6%)、2位香港(2365億円、対前年比プラス13・4%)に続き、3位(2062億円、対前年比プラス6・4%)で、主な増加品目は緑茶や米、ホタテ貝などであった。  

緑茶は、健康志向の高まりを背景として、アメリカを中心に欧米向けで需要が高まり、抹茶など粉末茶の輸出が増加している。世界全体で見ると、緑茶の輸出額は対前年比プラス33・3%の中、アメリカにおいてはプラス49・6%と大幅に増加しており、世界全体の輸出額増加における大きな要因といえる。米は、世界全体で見ると対前年比プラス27・5%と好調で、アメリカにおいてもプラス51・3%と大幅な伸び率となった。

これは、アメリカの米の一大産地であるカルフォルニア州が、深刻な干ばつによる水不足の影響で、米の生産量が減少したことが要因と見られ、世界的に日本産の引き合いが強まった。ホタテ貝(生鮮・冷蔵・冷凍等)は、中国への輸出の依存度が高く、前述のALPS処理水放出による、中国の日本産水産物輸入の全面停止の影響などにより、 世界全体で対前年比マイナス24・4%と大幅に落ち込んだ。一方、アメリカではプラス52・5%と好調で、これは中国などが日本産水産物の輸入規制を強化したことへの対応として、日本がホタテ等の輸出先の転換・多角化を進める取組みを実施していることも要因の一つといえる。

 アメリカにおける 日本食レストランの普及  


日本産食品のアメリカへの輸出額の増加については、アメリカにおける日本食の普及と強く関連していることが考えられる。実際に、ジェトロで実施した「2022年度米国における日本食レストラン動向調査」においては、全米の日本食レストランは2022年12月時点で2万3064軒にのぼり、これは12年前の2010年の1・6倍、22年前の2000年の3・9倍にあたり、アメリカへの農林水産物の輸出実績と同様、堅調に増加傾向にある。  

また、州別の軒数を見ると、カリフォルニア州が1位(4995軒)で、2018年の前回調査の1・1倍に増加している。カリフォルニア州に日本食レストランが多い理由は、日本人移民が最初に移り住んだ米国本土の土地であることや、他州と比べた日本との距離の近さ、その影響により日系企業が増え、駐在員による日本食需要が増加したことなどが考えられる。

さらに、カリフォルニア州は、日本人・日系人以外のアジア人・アジア系米国人が多い土地であり、ベイエリアにおける人種構成は、Joint Venture Silicon Valley「Silicon Valley Index 2022」によるとアジア人が39%と、白人の29%を超え最大を占めている。このように多様な人種が居住し、異文化を受け入れる地域性があることも、カリフォルニアで日本食が普及している要因の一つといえる。

 農林水産物・食品の 輸出目標達成に向けて  


日本政府は農林水産物・食品の輸出額について、2025年までに2兆円、2030年までに5兆円に拡大する目標を掲げている。2012年の約4497億円から倍増し、2021年には1兆円を突破し拡大を続けてきた背景には、アジアを中心とした海外消費者の所得の向上や、訪日外国人の増加に伴う日本食品の海外への広がりなど、環境の変化があった。政府は、前述の輸出額目標の達成に向け、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」をとりまとめ、自社が持つ技術やアイデアを基に開発した商品を市場に出す「プロダクトアウト」から、市場のニーズをもとに商品を開発する「マーケットイン」への転換が必要としている。これまで環境の変化に伴い増加してきた輸出額を、海外市場のニーズに合わせ自らが変化することで目標を達成する必要がある。  

私たちジェトロも、この目標達成に向けて政府と連携を図り、国内からの支援はもちろん、世界各地に所在する海外事務所から、各地域の現状や市場のニーズを国内へ情報発信するなど、専門的かつ継続的な輸出事業者への支援を引き続き行っていく。

長洲 諒(ながす・りょう)
2017年茨城県庁入庁。2022年より営業戦略部グローバルビジネス支援チームにて県産品の輸出支援を担当した後、2023年4月にジェトロ茨城事務所に出向となり、県内のスタートアップ支援を担当。2023年10月より現事務所にて日本産品の輸出支援を担当。

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