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あなたの「今」が輝くために−其の百五十一

2025.06.04

配信

それは逆!

 私が住職を務めている大行寺では、海外からの参拝の方々をお迎えすることがあります。仏教徒の方に限ったことではなく、初めてお寺にお参りされる方も少なくありません。先日も日本でいうところの高校生くらいの方たちが団体でお参りに来られることになり、事前に何をしたいのかを聞いたところ、その内容に驚きました。なぜなら彼らがしたいことをリストにしたら、法事になったからです。

 お経をお勤めしたい。お焼香もしてみたい。法話も聞きたい。食事をして、お茶とお菓子をいただきながらさまざまな質問もしたい。写経もしたい! と。法事で写経はあまり行いませんが、その他はまさに法事です。ということで、法事+写経の参拝プランを考えました。

 当日、本堂に集まった方々に向かって私は阿弥陀さまを背にして立ち、先ずは焼香の仕方を伝えました。皆さん神妙な面持ちで聞いてくださっています。お経をお勤めするので順番にお焼香をしてくださいねと言い、私は阿弥陀さまの方に向き直って座り、お勤めを始めました。それはお焼香が始まってすぐのことでした。強烈な違和感を背後に覚えました。振り返って確認はしませんでしたが、あれ? 皆の動き方がおかしいと。お勤めが終わり確認のために尋ねると、なんと! みんな御本尊である阿弥陀さまに背を向け、お参りをしている仲間たちの方向に向かってお焼香をしていたと言うのです。まさに、私が見せた通りにしてくれていたのです! これにはびっくりしました。正直なところ吹き出しそうになりましたが、失礼だと思い、何とか笑いに耐えました。だって彼らは私が示した通りに、行ったにすぎないからです。問題は私です。日本人であり、僧侶である私は、お焼香は阿弥陀さまに向かって行うのが“アタリマエ”で、わざわざ言うことではないと思い込んでいたのです。けれどもお焼香を知らず、初めて行う人にとってはアタリマエではないのです。そのことにも気付かず、アタリマエという自分の思いの中にいて、ちゃんと伝えたと思っていた私。比べることではないですが、私の方が滑稽です。しかし逆向きにしてしまったお焼香。間違いではありますが、いつも一緒にいる仲間たちに向かって手を合わせる行為の美しさに、それはそれで素敵だなと思った私です。


写真:Noriko Shiota Slusser

英月(えいげつ) 真宗佛光寺派長谷山北之院大行寺住職。江戸時代から続く寺の長女として、京都に生まれる。同業者(僧侶)と見合いすること、35回。ストレスで一時的に聴力を失う。このままではイカン! と渡米。北米唯一の日本語ラジオ「サンフランシスコラジオ毎日」でパーソナリティーを勤める他、テレビ、ラジオCMに出演。帰国後、大行寺で始めた「写経の会」「法話会」に多くの参拝者が集まる。講演会、テレビ出演、執筆など活動は多岐にわたる。最新著書は『二河白道ものがたり いのちに目覚める』(春秋社) 。

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