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あなたの「今」が輝くために−其の百六十三

2026.07.01

配信

「わかっている?」

 いろいろな場で話すご縁をいただいていますが、新聞社主催のカルチャーセンターでは、10年以上講座を担当しています。先日、参加者のお一人がこんなことを言われました。「知らなかったんです。体には栄養が必要でしょ? ビタミンとか、タンパク質とか。それと同じだって。仏さまのお話も栄養で、そして必要だって、今まで知らなかったんです」。なるほどな、と思いました。仏教を知るというのは、この私を形作る栄養になると。面白い受け止めだなと、思いました。

 最近、法話を聴きに行くようになった母は、法話を聴くというのは、問いをもらうことだと言っていました。仏教の視点を知らされ、今まで問いにならなかったことが、問いになっていく。当たり前だと思っていたことが、当たり前ではなかったと知らされる。なるほど、これも面白い受け止めだなと思いました。

 では、法話を話す機会の多い私はどうか? 先日、講演先に向かう途中でこんなことがありました。京都から敦賀までサンダーバードに乗り、敦賀で新幹線に乗り換えて富山に向かっていた時のことです。私の前の座席におられたスーツ姿の4人組の男性、お昼時なので座席を回転させてお弁当を食べ始められました。年長と思われる方が「最近はSNSにすぐあげられるから会話には気をつけないとな」と、さり気なく注意喚起。なかなかしっかりしておられると思いました。しかし新幹線が富山の駅に着くまでの間に、私は4人の方が勤めておられる会社の業種、それぞれの役職、今、その部署で問題になっていること、これらすべてを知ってしまいました。特に耳をそばだてて聞いていたわけでもないのですが、すぐ後ろの席に座っていたこともあり、会話は筒抜けでした。4人の方たちは、公共の場での会話には気をつけないといけない、ということは知ってはいても、本当の意味でわかっておられなかったのです。わかったつもりになっていた、だけだったのかも知れません。冗談みたいな出来事でしたが、私は彼らを笑えません。カルチャーセンターの講師として、また企業の講演会で、そしてお寺で、色々な場所で仏さまのお話しをしていますが、果たして私自身が仏教をわかっているのか?わかったつもりで、話していないか?ドキッとさせられた出来事でした。



写真:Noriko Shiota Slusser

英月(えいげつ) 真宗佛光寺派長谷山北之院大行寺住職。江戸時代から続く寺の長女として、京都に生まれる。同業者(僧侶)と見合いすること、35回。ストレスで一時的に聴力を失う。このままではイカン! と渡米。北米唯一の日本語ラジオ「サンフランシスコラジオ毎日」でパーソナリティーを勤める他、テレビ、ラジオCMに出演。帰国後、大行寺で始めた「写経の会」「法話会」に多くの参拝者が集まる。講演会、テレビ出演、執筆など活動は多岐にわたる。最新著書は『二河白道ものがたり いのちに目覚める』(春秋社) 。

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