「ミーハー」
少し前のことですが、日本からパンダがいなくなりました。今年1月27日に上野動物園にいた双子のジャイアントパンダが、昨年6月には和歌山県のアドベンチャーワールドにいた4頭が、それぞれ契約期間終了により中国に返還されたのです。しばらくは、テレビをつければパンダの話題ばかり。ひと目見たいと、何時間も並ぶ人々がニュースに映し出されると、ミーハーな人たちだと少し冷ややかに思っていました。
ところでこの「ミーハー」という言葉、軽薄なとか、流行に左右されやすいといった意味があります。調べたところ、「みいちゃん はあちゃん」の略とのこと。この言葉が生れた昭和初期、女性の名前の代表としての「みよちゃん」「はなちゃん」から「みいちゃん はあちゃん」と言うようになったとか。また一説には、音階のド・レ・ミ・ファ(ハ)のミとハからとったとも。辞書によると「程度の低いことに夢中になったり、流行に左右されやすかったりする若い人たち。また、その人たちを軽蔑していう語」とあります。それを表すのが男性の名前ではなく、女性というのが時代を感じさせますが、「みいちゃん はあちゃん」という言葉自体、今は使わなくなっているかも知れません。
余談ですが、そんな「ミーハー」に対して、高尚な人びとを指す「ソーラー」という言葉が昭和30年代に生まれたとか。語源はソ・ラから。ミ・ハより音階が高いのが理由だそうです。女の名前で表すか、男の名前か。音階の下か上かと、気づかないうちに比べている、否、比べていることにも気づかず、それが表現として当たり前になっている。比べなくていいことで比べていることの、なんと多いことよ。
と、言ったものの、パンダ見たさに長蛇の列に並んだと知人から聞かされた時、思わず「ミーハーですね」との言葉が口をついて出た私。それと同時に、ふと思いました。私のようにミーハーという言葉で片付けてしまうと、対象との関わりがなくなってしまうと。もちろん、それがダメなのではありません。しかし自分から関わりを閉ざすことで、世界が狭くなってしまうこともあります。時にはミーハーになることで、いつもとは違う世界に触れ、人生が豊かになることもあるかも知れませんね。

写真:Noriko Shiota Slusser
英月(えいげつ) 真宗佛光寺派長谷山北之院大行寺住職。江戸時代から続く寺の長女として、京都に生まれる。同業者(僧侶)と見合いすること、35回。ストレスで一時的に聴力を失う。このままではイカン! と渡米。北米唯一の日本語ラジオ「サンフランシスコラジオ毎日」でパーソナリティーを勤める他、テレビ、ラジオCMに出演。帰国後、大行寺で始めた「写経の会」「法話会」に多くの参拝者が集まる。講演会、テレビ出演、執筆など活動は多岐にわたる。最新著書は『二河白道ものがたり いのちに目覚める』(春秋社) 。