~惜別の辞~
私達にも出立の時がやってきました。
当地での皆さまとの交流はかけがえのないものでした。総領事館の付加価値は皆さんを繋げ、皆さんの力を糾合するコンビーナーとしての役割であり、逆にいえば、我々の仕事は皆様との協働があってこそ初めて可能でした。今回はその一端を報告させていただき、総領事だよりの筆を置かせていただきます。
【草の根交流のダイヤモンド】
四つの柱である日本語教育、JET、姉妹都市、そして日系人については、それぞれ第1回北加日本語教育推進会議開催(今年8月)、JETアルムナイとキャリアイベントの共催、日米姉妹都市サミット(9月開催)開催実現への協力、日系若手イニシアティブの立ち上げ準備会合実施(今年8月)など、将来に向けた布石を打てたのではないかと思います。例えば、日本語履修者がJETプログラムに参加し、姉妹都市関係活動に関与し、そしてそれが日系人社会と繋がるという、菱形(ダイヤモンド)の連関を具現してくれるよう期待しています。
【ビジネス&テクノロジー、サイエンス、留学・訪問】
ビジネス&テクノロジーについては、大技術革新時代において、日本のビジネスに総領事館として何が貢献できるかという問題意識から、政府の施策の実施を支援しつつ、その過程で浮かび上がってきたいくつかの課題、例えば、アメリカで闘っている日本人起業家サポートのための第1回起業家交流会を実施(今年7月)、 他国との切磋琢磨するための日韓スタートアップイベントの開催(昨年11月)、時代の要請である デュアルユーステックへの取り組みの先鞭としてのデュアルユーステック・セミナー開催(今年3月)などに尽力しました。
「未来への投資」であるサイエンスの分野では、日本の若手の研究者が外国に出たがらない等は由々しき問題です。そこで、日本人をはじめ日本と深い縁のある第一線で活躍しているサイエンティスト達に、優秀な人材の留学受け入れなどを通じて科学者の育成・支援し、日米間の科学技術交流の架け橋になり、日本政府にも提言をいただこうと、34名の方をリスト化したPIマップを作成し公開するとともに、第一回意見交換会を開催しました(今年2月)。
さらに未来を考えれば、日本からの留学生の減少が問題ですが、当地では、大学で初めて来るのは遅く、感受性の最も高い中高校生の時に何らかの形で初渡航して刺激を受け、そこからグローバルに考え始めさせることが重要とのコンセンサスがあります。総領事館としても、姉妹都市交流やシリコンバレー研修で来る中高生の団体から声が掛かったら積極的に受けるようにしています。私自身も生徒達に、日本の良さに真に誇りを持ち、海図の無い世界において、哲学を持ちテクノロジーを武器にして、global, ambitious, fearlessに世界に挑戦することの大事さを伝えてきました。
【政治】
このようなさまざまな活動があって政治が成り立つわけですが、州レベルでは加州議員による日加議員フォーラムの設立(昨年3月)から1年経ちました。具体的な協力としての経済関係強化のため、フォーラム、当館、在LA総領事館とともに、北加、南加商工会及び企業10社以上を招き、ビジネス協力イベントを開催しました(今年7月)。継続は力なりですので、今後、経済関係だけでなく、幅広い日加関係の碇としての発展を期待したいと思います。サンフランシスコ市のルーリー新市長に離任挨拶のためお会いした時には、日本旅行のガイドブックと総領事だより19(佐々木麟太郎選手に期待する)を渡しておきました。
【領事】
領事サービスは皆さまと最も接点が多い極めて重要な業務で、ネバダ州および北加ではフレズノに出張サービスも定期的に行っています。サービスの質については私も何回か直接お褒めの言葉をいただきましたが、職員の大きな励みになるので領事班、および館内に伝えているところです。誠にありがとうございます。
【結語】
各々の活動をつなげていくことで、さまざまな業務を抱える総領事館の総合力、糾合力が生かされるはずで、私から館員にもそのようなマインドで班横断的に働くことを求めました。我々の活動が皆さまのお役に立てたら幸いですし、改めて、在任中の皆様との協働に感謝申し上げます。
【献首】
私は茶道を少し嗜みますが、御茶一服のひとときに「一期一会」の大切さをいつも噛み締めています。総領事だよりを通じて皆さまとつながることができたのもまたご縁かと思います。日本の豊かな情緒は和歌の系譜に凝縮されていますところ、その民族の末裔として、私も一つ皆さまに献首し、御礼とさせていただきます。
「日米の 歴史を紡ぐ この大地 皆の笑顔を 忘るなきと誓う」
在サンフランシスコ日本国総領事 大隅 洋(おおすみ・よう)
1966年生まれ。東京大学経済学部卒業後外務省入省。経済安全保障課課長、在英日本大使館公使、在イスラエル日本大使館次席公使などを歴任。COVID19期間中は東京にて大臣官房審議官等を務める。2023年9月、在サンフランシスコ日本国総領事として着任。茶道を嗜み、旅行、読書、マリンスポーツを愛好。著者に「日本人のためのイスラエル入門」(筑摩書房)。
領事館のホームページでは、
総領事の活動報告
「総領事便り」を掲載しています。
コチラよりぜひご覧ください。