~姉妹都市関係の潜在力(クレセントシティを訪問して)~
今年4月から10月の大阪・関西万博開催に合わせ、9月16日から19日に大阪府泉佐野市で全米国際姉妹都市協会の日米姉妹都市サミットが行われます。1956年にアイゼンハワー大統領が提案し開始されましたが、現在、日米間に姉妹都市関係は約460あり、カリフォルニア州だけでも約110あります。ホームスティする中高生への歓迎、出会いの笑顔、そして別れの涙。交流する若者達のストーリーは感動的です。また、年輪を重ねたプログラムでは親子が30年越しに同じ青少年交流プログラムに参加する例もあります。サンタクルーズ市との姉妹都市提携50周年記念で来訪した新宮市長の前で米側の歓迎委員が余興として熊野節を披露した際には、市長も唱和する心温まる一場面もありました。
さて、今年2月サンフランシスコから車で6時間かけてカリフォルニア州北端のクレセントシティを訪問しました。2011年の東日本大震災の際に漂流した岩手県立高田高校の実習ボート「かもめ」が13年4月に漂着したことがきっかけで、同市は陸前高田市と姉妹都市となりました。鬱蒼とした森を越えたところにある港町で三陸海岸と風景も似ています。海沿いの公園の中には「かもめ」をテーマにした記念壁画がありました。
今年1月に来訪した約10名の高田高校生一行は、地元高校挙げての歓迎を受けました。私が感銘を受けたのは、関係者が将来を見据え、①次世代育成のための地元高校での日本語クラス創設、②姉妹都市関係の持続性のための経済関係の強化、特に③陸前高田市のインバウンド集客支援、などを考えていることで、姉妹都市関係の新機軸ともいえるそのユニークな構想力は注目に値すると思います。姉妹都市交流は、JET、日本語教育、日系人と相並び合い時に助け合う、草の根交流の重要な柱と感じています。
その原点の若者交流は、多感な中高生の段階で最初の刺激と衝撃を与えるという意味で、極めて重要な意義があると感じています。そして、今回のクレセントシティ訪問はその将来の方向性についても重要な示唆を与えてくれたものでした。今後も、どのような支援をしていけるかについて、総領事館としても試行錯誤しながら努力していきたいと思います。
在サンフランシスコ日本国総領事 大隅 洋(おおすみ・よう)
1966年生まれ。東京大学経済学部卒業後外務省入省。経済安全保障課課長、在英日本大使館公使、在イスラエル日本大使館次席公使などを歴任。COVID19期間中は東京にて大臣官房審議官等を務める。2023年9月、在サンフランシスコ日本国総領事として着任。茶道を嗜み、旅行、読書、マリンスポーツを愛好。著者に「日本人のためのイスラエル入門」(筑摩書房)。
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