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柳家東三楼の「Break a leg 落語の時間ですよ」Vol.42

2025.01.15

配信

人の外と内

 ベイエリアにお住まいの皆さま、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 昨年は元旦に能登で地震があり、今年はLAでひどい山火事があり、めでたいはずの正月が素直に慶べない心境で、改めて世界の環境や災害への普段からの対策、備え、政府への働きかけ、また個人での生活の見直しを考えさせられます。

 僕は人として生まれ生き、死んでいく旅の中で、基本的人権が守られるのは当たり前として、人間の幸せを感じる環境を「人の外、内」で考えています。「人の外」というのは人を取り囲む環境や共同体、国、コミュニティ、家族といった周りの世界が安定して得る社会的な幸せです。人に与えるストレスのほとんどが人間関係であるように、人を取り囲む環境が人心に及ぼす影響は大きいでしょう。それには政治を軸とした物的な豊かさ(お金のこと)も大きく影響します。「人の内」は心、精神です。僕は落語家で、「舌で人の心を耕す」仕事をしていますが、人の心に大きく世界を広げて、深く潜り、感情豊かな(広く深い)世界を耕していく、それが使命だと思っております。人は一人ではもちろん生きては行けませんが、人から離れて孤独に自分の世界を作り生きていくことに幸せを感じることも確かです。想像や創造の自由な世界で、自分の尊厳を守り、欲しい物を手にし、自由に考えられる「誰にも触れられない自分だけの世界」。その確かな自分の世界を持つことの幸せさを作り、守り、育てていくのが芸術や学術の世界です。

 日本は2011年3月の東北大震災で多くの経験をしました。津波による破壊、原発による目に見えない恐怖と被害、自分を取り巻く環境の絶望を目の前に差し出されました。そして、復興には街を作り直すこと、被害に遭われた方の心のケアをすることと「人の外、内」で回復が求められることを痛感しました。

 あれから干支が一回り以上して、私の母校日本は、その経験を活かせたでしょうか。1月に起きた能登の震災の補正予算は12月の臨時国会まで組まれませんでした。新しい冬を迎えて今、最大級の寒波が来ています。アメリカは政権が変わる直前でのLAの山火事、果たして新しい政権は何をするのか、また民主党はどう対策をして政権を締めくくるのか。何か心のケアで私にできることはないのか、それが新年を迎えての僕にのしかかった気持ちです。笑いは、社会も心も十分でないと生まれない、そう感じております。


柳家東三楼(やなぎやとうざぶろう) 落語家歴25年。真打として日本全国で落語を披露する中で世界中の人に落語を知ってもらいたいと、2019年よりアメリカへ移住。現在はNYのブルックリンを拠点にアメリカにてすでに200回以上の公演を行う。50州すべての州にて落語公演を実施することを目標に、日々精力的に活動中。

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