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あなたの「今」が輝くために−其の百四十九

2025.04.02

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「言葉」

 皆さんこんにちは、いかがお過ごしでしょうか。今月は先月のインド旅行の話の続きをさせてください。

 国内線の預入荷物に入れてはいけないモバイルバッテリーを入れたことにより、スーツケースが出発地に留め置かれるという大失態を犯した私。当初、航空会社の説明では、モバイルバッテリーの没収後に飛行機に乗せるから、夕方に取りに来るようにとのことでした。けれども実際に空港に行ってみると、鍵の暗証番号が分からないから開けられず、荷物はここに届いてないというつれない返事。鍵なんて壊してくれー! と思いましたが、私がスーツケースと対面できたのはその翌日でした。

 今回のインド旅行は、同世代の2人の研究者さんが調査旅行に行かれるのにご一緒させていただいたもの。物見遊山ではなく、彼女たちの調査がメインです。なのに! 私が犯したバカバカしいミスで、お二人の行程に多大なる迷惑をかけてしまったのです。しかし彼女たちは私を責めないどころか、行程を変更したおかげで、結果的にこっちの方が良かったねとまで言ってくれます。それだけでなく、私たちはチームだからこれからもチームで解決していこう! 謝る必要はない! とまで言われたのは、先月お伝えしたとおり。

 その温かな心遣いに感動し、スーツケースも無事に戻ってきたけど、空港へ何度も通い無駄な時間を使わせてしまったこと、行程の変更を余儀なくさせてしまったことなど、申し訳なさに押しつぶされそうになっていました。しかしそれでも、腹は減るのです。小腹が減った私は日本から持ってきたキットカットが鞄にあったことを思い出しました。この時期日本で売られているキットカットは、受験シーズンを意識してか「キット、〇〇」という言葉が印刷されています。たまたま手にしたものに書かれていたのは「キット、楽しんだもの勝ち」。その言葉を見た瞬間、全身の力が抜けたように感じました。人生は勝ち負けではありません。けれども色々な問題が起こった時、楽しむという視点は大事だなと改めて知らされたのです。と同時に「迷惑をかけた」との思いに縛られていた私を解放したのは、「楽しむ」という言葉だったのです。言葉に縛られている私をその思いから解放するのは、言葉しかないのですね。


写真:Noriko Shiota Slusser

英月(えいげつ) 真宗佛光寺派長谷山北之院大行寺住職。江戸時代から続く寺の長女として、京都に生まれる。同業者(僧侶)と見合いすること、35回。ストレスで一時的に聴力を失う。このままではイカン! と渡米。北米唯一の日本語ラジオ「サンフランシスコラジオ毎日」でパーソナリティーを勤める他、テレビ、ラジオCMに出演。帰国後、大行寺で始めた「写経の会」「法話会」に多くの参拝者が集まる。講演会、テレビ出演、執筆など活動は多岐にわたる。最新著書は『二河白道ものがたり いのちに目覚める』(春秋社) 。

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