「Have fun!!」
意地と気合いと根性で、昨年の4月に入学した大学院。皆さんがこのコラムを読んでくださっている頃には無事、修士1年目の後期試験が終わり、私は春休みを満喫しているハズです。日本に帰国してから聴講生として学び続けていましたが、やはり正規の学生になると違いますね。一番の違いは授業料が高くなったことですが、興味のある講義だけを受講する聴講生から、そうではない正規の学生になったことで、学問との関わり方が大きく変わりました。具体的には授業中の発表にレポートの提出など、自分から関わっていく学びに変えられました。そして、それがとても楽しいのです。
ある日のことでした。嬉々としてゼミでの発表を終えた私に、一緒に学んでいる仲間がボソッと言いました。「楽しんでやっている人には勝てないや」と。当然のことながら、学びに勝ち負けはありません。けれども彼の言葉によって、「楽しんで取り組む」ことが持つ力に、改めて気付かされました。
「楽しんでやろう!」とは、よく聞く言葉です。では、本当に楽しめるのか? と言えば、実は甚だ難しい。そもそも楽しむのは、意識的にすることでも、努力してすることでもないからです。
改めて、私はなぜ学ぶことが楽しいのか? と、自問してみました。理由は二つ。先ず、入学するまでが大変すぎたことです。短期大学卒業の私は大学院の入学試験を受ける資格がなかったので、大学の卒業資格を得るためだけに大学の3年時に編入しました。これが大変で…。そんなこんなで、晴れて大学院生となった今、学べることが楽しくて仕方がないのです。次に、私は53歳です。学びに年齢は関係ないですが、寺を留守にして、この歳で学校に通えるのは、両親が元気で寺を護ってくれているからです。つまり、自分が置かれている事実に立ち返った時、学べることが決して当たり前のことではないということがハッキリと知らされたのです。だから自然と感謝とうれしさが生まれ、楽しくなったのです。
これは私たちの日常でも、言えることではないでしょうか? 日々の生活は、決して楽しいことだけではありません。けれどもそんな日常も、決して当たり前ではないと気づかされることで、違う景色となっていくのではないかなと思います。2025年もHave fun‼です。

写真:Noriko Shiota Slusser
英月(えいげつ) 真宗佛光寺派長谷山北之院大行寺住職。江戸時代から続く寺の長女として、京都に生まれる。同業者(僧侶)と見合いすること、35回。ストレスで一時的に聴力を失う。このままではイカン! と渡米。北米唯一の日本語ラジオ「サンフランシスコラジオ毎日」でパーソナリティーを勤める他、テレビ、ラジオCMに出演。帰国後、大行寺で始めた「写経の会」「法話会」に多くの参拝者が集まる。講演会、テレビ出演、執筆など活動は多岐にわたる。最新著書は『二河白道ものがたり いのちに目覚める』(春秋社) 。