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あなたの「今」が輝くために−其の百四十

2024.06.05

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貫くもの

 先月の「ベイエリア写経の会」に、コロナ禍以前のような参加者がありました! と、会の幹事の方たちからお知らせをいただきました。うれしいー! 参加者が1人であっても100人であっても、そこに何の違いもありません。ですが、こういうお知らせはうれしいものです。

 そもそも、この「写経の会」は一匹のネコちゃんの死から始まっています。当時サンフランシスコに住んでいた私は、家族同然に暮らしていたネコちゃんを亡くした友人が悲しむ姿を見て、「お葬式をしようか」と声をかけました。けれども、言ってから、しまった! と思いました。なぜなら僧侶の資格があっただけで、お葬式を勤めたことがなければ、衣も、お経本も、お念珠さえ!な かったのですから。

 それでも何とかお葬式を勤め、その後は七日ごとのお勤め、四十九日法要が終われば毎月、ネコちゃんが亡くなった日にお参りに行きました。そうして一周忌をお勤めした時のことです。友達が「ありがとう、救われた」と言い、「(他の人たちのためにも、お経に触れられる)写経をしたら?」と勧めてくれたのです。その一言をきっかけに、カストロにあった素敵なレストラン「Ma Tante Sumi」を会場にして写経の会は始まりました。その後は、私の職場だった語学学校の教室で、私が帰国してからは日本町のCALIFORNIA BANK & TRUSTさんの会議室をお借りして。そして今は、バークレーにある浄土真宗センターさんで行っています。

 場所が変わったことで「SF写経の会」から「ベイエリア写経の会」に名前を改めました。場所も名前も変わりましたが、1回目から貫かれていることがあります。それは特定の宗教の集まりではなく、自分自身と向き合う時間をすごすということです。

 けれども、参加される方々の思いは様々です。「ご縁を広げる」、「お習字がしたい」など目的はそれぞれ。そして、それでいいのです。こちらの思いを強制する必要など、ないのです。

 貫かれていることというのは、何も特別なことではありません。家族や友人間であれば、あなたを大事に思っているということ。それを表すのが、この場合であれば、ネコちゃんのお葬式を勤めるということです。日頃は気にしていない「貫かれているもの」に触れて、大事なことに気づかされることもあるのではないでしょうか。
(写経の会へのご質問は bayareashakyo@gmail.com)


写真:Noriko Shiota Slusser

英月(えいげつ) 真宗佛光寺派長谷山北之院大行寺住職。江戸時代から続く寺の長女として、京都に生まれる。同業者(僧侶)と見合いすること、35回。ストレスで一時的に聴力を失う。このままではイカン! と渡米。北米唯一の日本語ラジオ「サンフランシスコラジオ毎日」でパーソナリティーを勤める他、テレビ、ラジオCMに出演。帰国後、大行寺で始めた「写経の会」「法話会」に多くの参拝者が集まる。講演会、テレビ出演、執筆など活動は多岐にわたる。最新著書は『二河白道ものがたり いのちに目覚める』(春秋社) 。

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