ローカルニュース毎日配信!

酒からSAKEへ、「バークレー蔵」からの挑戦

2025.09.17

配信

酒からSAKEへ、「バークレー蔵」からの挑戦  -米国宝酒造-


米国宝酒造 取締役社長
蓮實 薫氏


松竹梅がアメリカで 根を下ろすまで


松竹梅(Sho Chiku Bai)の名で知られる宝酒造は、1951年に清酒の輸出を始めた。60年代のベニハナ、70年代の寿司ブーム、80年代のドラマ「SHOGUN」。日本文化が浸透していく流れの中で「現地での生産」の必要性が高まり、1983年、米国宝酒造がバークレーに誕生する。サクラメントのカルローズ米、シエラネバダからの伏流水、そして冷涼で変動が少ない地中海性気候、酒造りに欠かせない条件が揃ったバークレーは、まさに“運命の土地”だった。  「現地の原料を使って、アメリカの地で醸している。そこに価値を感じていただけるのがうれしい。日本の酒もそうですが、この地で作る酒の価値を高めていきたい。我々の強みを最大限に生かしながら、酒ファンを増やしていきたい」という蓮實社長の言葉は、酒造りの哲学を映している。単なる輸出ではなく、土地の米と水と気候を活かして造る地酒こそがバークレー蔵の存在意義だ。

 SAKEの受容と “現地化”のうねり  


「HOT SAKE」が和食レストランの入り口だった頃、酒は燗酒中心だった。だが時代を経て、純米酒・吟醸酒といった種類が広まり、「冷や」で飲むSAKEが求められるようになった。和食の現地化と同じように、SAKEも現地アメリカで「ローカライズ」されていく。フレーバーSAKE「HANA」、苺や桃の香りのにごり酒「YUKI」もその一環。さらに、コロナ後は「たくさん飲む」文化から、「食に合わせる」「少量をじっくり味わう」トレンドへとシフト。缶タイプの飲み切りサイズやノンアルコール、そしてSAKEベースのカクテルなど新たな需要に対応している。蓮實社長も「SAKEも現地化されながら、アルコールトレンドに適合するような対応が求められている。ちょうどそのような時期に来たと考えている」と話す。



 リニューアル 蔵としての顔と体験の刷新  


2025年、工場を「バークレー蔵」としての顔にアップグレード。木材サイディングをあしらい、瓦屋根、玄関の杉玉といった和のテイストを加え、「蔵」を演出。さらにミューラルアート(壁画)による酒造りの情景を描く。ただ日本っぽさを纏うだけでなく、バークレーという土地の文化と風景を融合し、地域と訪問者を繋ぐランドマークとしての装いになった。  

また、テイスティングルームのメニューを3つのコースに増やした。営業日も週5日(水から日曜)になった。さらには試飲だけでなく、歴史から酒を学ぶ、例えば、米の粒や麹を生やした米を実際に見てもらったり、プチプチとした発酵中のもろみを見てもらったりという、実体験ができるプログラムに変更した。ギフトショップも新設し、法被(はっぴ)やTシャツといったグッズを揃え、訪れる人にとっての“記憶”づくりも可能となった。



新しいラインアップ  


実体験ができるテイスティングルームでは、この秋、バークレー蔵で作った「あらばしり」の試飲が限定でスタートした。あらばしりは、お酒を絞る時に一番最初に出てくるもの。米の旨みが凝縮され、酵母がまだ生きているその一杯は、「涙がちょちょぎれる」ほどの味わいになるという蓮實社長の自信作。日によって、バークレー産の純米、純米大吟醸が登場する。そして、にごり酒「玲(REI)」シリーズも新たに販売を開始。甘さを抑え、食事とのマリアージュに寄せた味わいで、バークレーの水とカルローズ米が醸すテロワールがしっかりと反映されている。さらには昨年秋に登場した「MU│WA(夢和)」という新ブランドにも注目してほしい。バーボン樽熟成純米酒であり、果実味と樽香が溶け込む革新的なSAKEだ。肉料理やチーズ、シーフードとの相性がいいことを意図して設計されている。  

蓮實社長は「アメリカに住む日本人の方達には、ぜひ、米国宝酒造のアンバサダーになってほしい。皆さんに喜んでもらえる商品を作り、皆さんのネットワークの中でバークレー産の酒なんですと伝えてほしい。これからのホリデーシーズンのパーティーには、ぜひ、うちのSAKEを持っていってほしいですね」と話す。  



米国宝酒造は、品質管理を磨き上げ、「地酒」を量産可能な領域へ押し上げる段階に来ている。これまで日本酒を知っていた人だけでなく、ワイン、クラフトビール、フレーバー酒に興味を持つ人たちにもSAKEを届けようと日々挑戦している。ベイエリアに住む日本人の皆さんには、ぜひ、この「バークレー蔵」を体験してほしい。


708 Addison St., Berkeley, CA 94710

https://www.takarasake.com

510-540-8250

1983年に地元バークレーで酒造りを開始。以来、日本で培われた伝統の酒造りと米国で独自に磨き上げた技術を融合し、「より良い酒造り」への挑戦を続けている。

詳細を見る
BaySpoスタッフのブログ

BaySpoスタッフのブログ

この記事に関連する記事

一覧ページにもどる

share with ups!

新規会員登録

ベイエリアの求人・仕事情報・お知らせ・募集・不動産・個人売買情報はBaySpo!
無料で会員登録をすると、bayspo.comをもっと便利にお使いいただけます。

新規会員登録をする

サクッと読める!
BaySpoとeじゃんデジタル版をチェック!