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アメリカの法律 In-and-Out Vol.04

2024.05.15

配信

Vol.04 : ハミコ、社長になる! の巻

前回のコラムではピアノ教室を始めたハミコ。生徒の数が順調に増えてきたのに喜んだのも束の間、日本語ピアノ教室というニッチな宣伝文句が奏功したようで、ベイエリアの外からの依頼も増え、1人では対応ができなくなってきました。一方で、ピアノ講師として雇ってほしい、資金的に援助したいなど、ハミコの志に賛同する人たちも集まってきました。このように複数の利害を持つ方が集まったり、規模を大きくしたりする場合には、法人化することが好ましいでしょう。  

法人といっても、Corporation、LLC、LP、LLPなど、色々な形態があります。紙面の都合上細かな違いに触れることはできませんが、どの形態を選択するかは、「オーナーが複数になった場合、どのように発言権を分配するのか(出資額によるか、頭割りで均等にするかなど)」、「仲間内だけでやるのか、投資家からの資金調達を予定しているのか」などの観点から判断します。もちろん、税金の観点からどの方法(CorporationであってもC-CorpとS-Corpのどちらかを選択するか)が最も得なのかも重要な観点です。  

法人の設立手続き自体はシンプルです。California Secretary of Stateのウェブサイトで必要情報を記入して費用を払えば、即日で完了します。定款(Articles of Incorporation)も、この手続きの中で必要最小限のものを作成できます。設立が完了した後は、IRSのウェブサイトからEIN(Employer Identification Number)を申請するのも忘れないようにしましょう。EINを取得できれば、法人名義で銀行口座の開設もできるようになります。  

以上のように、最低限のセットアップは簡単ですが、ビジネスを行うために(自治体から取得するBusiness Licenseとは別に)業界団体からLicenseやPermitを取得するときに、附属定款(Bylaws)や株券の作成が必要になることもありますし、Secretary of Stateに毎年Statement of Informationの提出義務があったり、2024年からはUS Department of the TreasuryへのBeneficial Ownership Information Report (BOIR)提出義務が新設されたりと、自力で対応していると見逃がしやすい落とし穴が少なからずありますので、ご留意ください。  

さて、アメリカ生活が順風満帆に見えるハミコも、次回以降、様々なトラブルに巻き込まれていくことになります。お楽しみに!

 

戸木 亮輔(とぎ・りょうすけ)弁護士 
日本(第一東京弁護士会)、カリフォルニア州、ニューヨーク州弁護士。東京都内で弁護士として約8年間法律事務所に勤務した後、ニューヨーク州のコーネル大学ロースクールに留学。サンフランシスコで勤務弁護士の経験を経て、2024年1月よりKaname Partners US, P.C.を設立、開業。

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