シリコンバレーから見た投資先としての日本
地政学リスクの時代に選ばれる
安定市場、日本
グローバル経済が不確実性を増す中、日本が「安心してビジネスを展開できる国」として海外企業の注目を集めています。特に米国からの対日投資は、地政学的リスクの高まりやサプライチェーン再編の流れも後押しし、活発化しています。実際、2023年末の対日直接投資残高は50・5兆円と、前年比9・3%増を記録。日本の実質GDPの約8・5%を占める水準に達しました。米国からの投資額は前年比23・2%増と群を抜いており、日本が国際ビジネスの拠点として再評価されています。
その背景には、日本の安定した社会基盤と法制度、世界有数の市場規模、研究開発力に加え、近年のマクロ経済の回復やスタートアップの台頭、オープンイノベーションの進展などが挙げられます。注目分野としては、生成AI、機械学習、半導体、オートメーション、自動運転、ライフサイエンス、AIを活用した医療診断、クリーンテックなど、いわゆる「デジタルXグリーン」分野が中心です。日本政府は2030年に対日直接投資残高を100兆円に倍増させる目標を掲げ、税制優遇や制度改革を通じて、対日投資のハードルを下げる施策を次々と打ち出しています。
シリコンバレー発、
日本との接点が加速中
対日投資の動きは、テクノロジー分野を中心に、私たちの身近なところでも着実に進んでいます。例えば、オープンAIが日本法人を設立し、日本市場向けのローカライズや研究開発を本格化させているほか、自動運転のウェイモは日本の自動車メーカーと提携を進めるなど、米国シリコンバレー企業による対日展開が相次いでいます。さらには、テックスターズやアルケミストなど有力アクセラレーターが東京や関西に拠点を構え、スタートアップとの協業や投資機会を広げる動きも目立ちます。日本のスタートアップのエコシステムのグローバル化にも貢献しています。
2023年の対日グリーンフィールド投資(新規事業の立ち上げ)受入額は前年比3倍以上となり、308億米ドルに達しました。これは、TSMCやマイクロンによる半導体関連の大型投資だけでなく、米国企業によるデータセンター、バイオテック関連施設の建設といった案件が相次いでいることを反映しています。また、物流、医療、不動産といった分野では、M&Aによる参入も盛んで、外資ファンドによる企業再生(マネジメント・バイアウト)も増えています。日本市場は、単なる販売先としてだけでなく、研究開発・製造・サービス提供の拠点としても高いポテンシャルを持っています。
ジェトロが支援する対日投資とJ-Bridgeプログラム
こうした対日投資の潮流をさらに後押ししているのが、私たちジェトロが展開する各種支援プログラムです。特に「対日投資プログラム」では、米国をはじめとする外国企業の日本進出をワンストップで支援。日本国内における事業立ち上げに必要な無料コンサルテーション、日本市場や産業に関する最新情報の提供、さらに一定期間、主要都市にある対日投資・ビジネスサポートセンター(Invest Japan Business Support Center)での無料オフィススペースを提供しています。これらは、日本政府や地方自治体とも連携しながら、法規制や税制、ビザ取得といった実務面での不安も丁寧に解消する体制を整えています。
さらに、日本企業との協業や連携を希望する米国企業向けには「J-Bridge」というビジネスプラットフォームを通して、日本企業とのビジネスマッチング等も支援しています。このプログラムは、オープンイノベーションを加速させることを目的とし、AI、バイオ、エネルギー、モビリティーなど成長領域における日本企業との協業・連携機会をサポートします。2025年時点で、すでに日本企業約1900社、海外企業約1400社が登録し、協業・連携案件の創出に向けてビジネスマッチングなどを活用いただいています。もし、周囲に「日本に進出したい」「日本企業と共同開発をしてみたい」と考える米国企業があれば、ぜひ私たちジェトロ・サンフランシスコ事務所までご紹介ください。対日投資の第一歩を、私たちがしっかりとサポートします。
小林 努(こばやし・つとむ)
日本貿易振興会入会後、松江、シンガポール、東京本部などで中堅・中小企業の海外展開を支援。2023年8月よりサンフランシスコ着任。米国スタートアップの日本進出、米国企業と日本企業の協業・連携支援を担当。
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