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2026.09.30

配信

AIブームの裏にあるインフラへの影響  ― 今後の発展に向けて

  2026年の夏、ベイエリアではAI関連イベントが相次いで開催されました。サンフランシスコでの「AI Engineer World's Fair 2026」を皮切りに、スタンフォード大学やUCバークレーでも大規模なAIイベントが開かれました。ベンチャーのメッカであるベイエリアでは、AIはすでにビジネスの中心テーマです。その浸透はビジネスにとどまらず、日々使うサービスを通じて生活の一部となりつつあり、電力や通信網と並ぶ新たなインフラともいえる存在になってきています。それを支えているのがデータセンターであり、利用の広がりとともに建設・稼働も拡大し、電力網や水資源といった従来のインフラへの影響が見え始め、それに対する社会的な反応も表れ始めています。

水資源への負荷

 米議会調査局(CRS)が2026年7月に公表した報告書によれば、データセンターが直接消費する水量は2023年時点で約170億ガロンとなり、14年から3倍以上に増加しました。間接消費(発電過程)も2000億ガロンを超え、合計でも米国全体の水消費量に占める割合は約2%です。しかしCRSは、地域への影響は総量ではなく、地域の水供給状況や他の需要との競合によって決まると指摘しています。情報技術革新財団(ITIF)も26年7月の報告書で、全米一律の問題ではないとしつつ、多くのデータセンターが南西部の乾燥地域など干ばつの影響を受けやすい地域に計画されているため、流域ごとの個別検討が必要だと指摘しています。

電力需要の拡大

 米エネルギー情報局(EIA)の最新の見通し(2026年9月版)によれば、米国の電力消費量は26年に4兆1350億キロワット時、27年には4兆2110億キロワット時へと過去最高水準に達する見通しで、データセンター開発が主な牽引役だといいます。米エネルギー省(DOE)の分析では、データセンターの米国電力消費に占める割合は23年の4・4%から28年には最大12%まで上昇するとされます。こうした需要拡大を背景に接続待ち行列も深刻化しており、DOE傘下のローレンス・バークレー国立研究所によれば、25年末時点で全米約8200件、発電容量1312ギガワット相当のプロジェクトが接続を待っています。連邦エネルギー規制委員会(FERC)は今年6月、大口需要家の接続手続きの見直し・迅速化を全米6地域の送電機関に義務付ける命令を発出し、接続拡大が消費者の電気料金に与える影響を抑える必要性にも言及しています。

州レベルの規制動向

 こうした水や電力への影響を受け、州レベルでは税制優遇の撤廃や立地そのものの否決に踏み込む動きも出ています。テキサス州サンマルコス市議会は2026年2月、データセンター開発に必要な用途地域変更を否決しました。ニューヨーク州議会は同年6月、新規許可を一時停止する法案を可決し、7月には知事も独自の行政命令に署名、全米初の州単位の一時停止に踏み切りました。同月、アリゾナ州とイリノイ州も税優遇の適用を一時停止しています。こうした動きは、地域社会の合意形成が立地判断を左右する要素になりつつあることを示しています。

日本国内でも同様の動き

 こうした現象は米国に限りません。日本でも東京圏一極集中や電力需要の増加が課題として認識されており、総務省・経済産業省は有識者会合を設置し、2024年10月に中間とりまとめを公表しています。データセンターの建設にあたっては地域住民や周辺事業者など地域社会への配慮と理解が重要になると指摘されています。業界団体の日本データセンター協会(JDCC)も26年5月、「データセンター地域共生ガイドライン」を策定し、立地検討段階から近隣住民・自治体と丁寧に対話するよう事業者に求めています。米国の動きは、日本を含む世界のデータセンター開発の将来を占う現象かもしれません。

インフラ開発の宿命― 今後の発展に向けて

 こうしたデータセンターを巡る動きは、電力網や鉄道といった過去のインフラ開発の過程と重なります。当初は経済効果や技術発展が重視されますが、一定規模に達すると資源や環境への影響が生じ、地域社会との合意形成が課題となり、その調整のための制度が段階的に整備されていきました。振り返れば従来のインフラも同様の課題を乗り越えて、経済・社会の発展を支える基盤となってきました。AIとデータセンターについても、継続的な発展に向けてこうした課題を一つずつクリアしていくことが重要と考えられます。これから、データセンター開発と地域共生がどのように進み、AIと社会がどのように発展していくのか、注視していきたいと思います。

山口 徹朗(やまぐち てつろう)
JETROサンフランシスコ事務所に2026年7月に着任し、フィジカルAI・半導体などの産業調査やスタートアップ支援の業務を行う。当地への赴任以前は、経済産業省において、原子力安全やエネルギー、航空宇宙等の産業政策の立案に従事。


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