「人生の方向」
今年も1年、日本全国いろいろなお寺さまで法話のご縁をいただきました。それだけでなく企業や市町村主催の講演会にもご縁をいただき、山口県光市や大分県別府市など、初めて訪れた場所もありました。また10年以上毎年お話しに伺っている場所もあります。有り難いことです。
初めての場所に行く時は、近くに名所はないかと探してみたり、少し足を延ばして友人を訪ねようかと考えたり。また長く通っている場所だと、違う交通手段はないかと考えるのも楽しいものです。例えば新潟だと京都からは東京経由が一般的ですが、金沢経由で日本海を眺めながら行くという方法もあります。とはいえプライベートな旅行ではないので、時には突拍子もない日程になることも。
新潟で講演した翌日は京都でご門徒さんのご法事と講演、翌日は滋賀のお寺さまで法話、そのまま姫路に移動して宿泊して翌日講演。またある時は岡山で講演した後に福井に移動し一泊、名古屋に移動して一泊など。当然のことながら話す内容の準備もしなければいけないので、行程のことまで考えるとなると、正直いっぱいいっぱいになってしまうこともあります。
先日も京都駅のホームで新幹線を待ちながら、当日の予定を頭の中で確認をしていました。東京駅で降りて色々することもあるけれど、今日は新潟に行ってお話しをする! 最終目的地は新潟! それが決まっているのだから、あとはやるべきことに尽くすだけだと。不思議なもので、行くべき方向が決まっているということがハッキリすると、気持ちが楽になりました。同時に予定は「こなすもの」ではなく「向きあうもの」へと変えられました。その時、ふと思ったのです。私の人生も同じではないのかと。人生の目的地はどこかと。それが死だとすると、「死んだら終わり」のいのちを生きているのか、それとも「死んで終わるいのちではない」のかでは、日々の生活が大きく違うのではないでしょうか。亡き人を思い出し、その言葉に勇気づけられることも、教えられることもあります。私たちは、死んで終わるいのちを生きているのではない。その事実がハッキリすると、そこへの道である日々の生活も自ずと変えられていくのではないでしょうか。皆さま、素敵なホリデーシーズンを!

写真:Noriko Shiota Slusser
英月(えいげつ) 真宗佛光寺派長谷山北之院大行寺住職。江戸時代から続く寺の長女として、京都に生まれる。同業者(僧侶)と見合いすること、35回。ストレスで一時的に聴力を失う。このままではイカン! と渡米。北米唯一の日本語ラジオ「サンフランシスコラジオ毎日」でパーソナリティーを勤める他、テレビ、ラジオCMに出演。帰国後、大行寺で始めた「写経の会」「法話会」に多くの参拝者が集まる。講演会、テレビ出演、執筆など活動は多岐にわたる。最新著書は『二河白道ものがたり いのちに目覚める』(春秋社) 。