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あなたの「今」が輝くために−其の百四十四

2024.10.02

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「帰るべき場所」

 こんな話をベイスポさんで申し上げることでもないのですが…。私、掃除が苦手です。サンフランシスコに住んでいた頃はルームシェアや、studioのアパートメントでの一人暮らし。決して広いとはいえない居住空間でさえ、ガチャガチャしておりました。そう、正確には掃除が苦手というより、片付けが苦手。おまけに見栄っ張りだから、友人が来るとなると、慌ててキレイな部屋を取り繕います。といっても、クローゼットに押し込むだけ。そしてそれは、日本に帰っても同じこと。

 特に多いのは紙です。机だけにとどまらず、あらゆるところに紙が山積み。連載しているコラムが掲載された冊子や新聞、講演依頼の手紙に講演原稿、この春から大学院で学んでいるので、学校で配布された資料や授業の予習復習をまとめてプリントアウトしたもの等々。ほとんど神経衰弱状態で、必要な紙を山の中から引き出します。そして、その山の間にある飲みかけのコーヒーカップやお菓子。あぁ、恥ずかしい。

 さて、私の部屋で散らかっているモノたちですが、ふと思いました。これらのモノにも帰るべき場所があるハズだと。コーヒーカップなら食器棚というように、冊子や資料、手紙などにも帰る場所がハッキリすれば、そこに帰ればいいだけのこと。散らかっているのは、どこに片付ければいいのかわからず、部屋の中で迷子になっていただけのことだと。早速、紙を整理するためのクリアファイルやホルダー、そしてそれらを種類ごとにまとめて入れるファイルボックスを大量に購入。ついでにファイルボックスを片付ける簡単な本棚も買いました。まるで紙たちのアパートのように、それぞれ帰る場所が決まったのです。こんな簡単なことになぜ今まで気づかなかった?と、思うほど。

 驚くほど気持ちのいい部屋になり、ご機嫌さんの私でしたが、キレイになった部屋を見てハッとさせられました。私はどうなのかと。いただいた私のいのちは、どこに向かっているのだろう。いのちの帰る場所は、ハッキリしているのだろうかと。これはお墓のあるなしといった、目に見える場所のことではありません。私は何に向かっているのか? 何を求めているのか? 本当に大事なことがわからず、迷子になっているのでは? そんなことに気づかされた片付けでした。


写真:Noriko Shiota Slusser

英月(えいげつ) 真宗佛光寺派長谷山北之院大行寺住職。江戸時代から続く寺の長女として、京都に生まれる。同業者(僧侶)と見合いすること、35回。ストレスで一時的に聴力を失う。このままではイカン! と渡米。北米唯一の日本語ラジオ「サンフランシスコラジオ毎日」でパーソナリティーを勤める他、テレビ、ラジオCMに出演。帰国後、大行寺で始めた「写経の会」「法話会」に多くの参拝者が集まる。講演会、テレビ出演、執筆など活動は多岐にわたる。最新著書は『二河白道ものがたり いのちに目覚める』(春秋社) 。

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