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サンフランシスコManga展 高橋留美子さん 特別インタビュー

2026.01.21

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サンフランシスコManga展 高橋留美子さん 特別インタビュー

米カリフォルニア州サンフランシスコ。ゴールデンゲートパーク内にあるデ・ヤング美術館で、日本の漫画文化を紹介する大規模な「Manga展」が開かれている。出版社や世代の垣根を越え、第一線で活躍してきた漫画家たちの原画が一堂に会する構成は、北米でも高い関心を集めている。その会場で、日本を代表する漫画家の一人、高橋留美子さんが特別インタビューに応じた。(小野里晃 記)



展示室を見渡しながら、高橋さんは「日本では出版社の枠もあり、これほど多彩な顔ぶれが同じ会場に並ぶ展示は、なかなか考えられない」と語る。「とても面白く、貴重な機会だと思います」。日本漫画が、娯楽としてだけでなく、文化表現として受け止められ始めていることを、今回の展示から実感したという。





25年ぶりの渡米、広がった「届き方」  


高橋さんが米国を訪れるのは約25年ぶり。前回はサンディエゴのコミコンに参加しており、『犬夜叉』を連載していた時期だった。「その頃から、意外と受け入れられているのかな、という感触はありました」と振り返る。  

現在は、日本漫画を紹介する場も量も格段に増え、ヒット作が継続的に海外へ届けられている。「日本で生まれた作品が、きちんと紹介され、読まれているのはうれしいことです」と語った。  

日本の日常を描いた作品が、文化の異なる海外で支持される理由について、高橋さんは「片思いなど、気持ちの部分は万国共通なのではないでしょうか」と静かに分析する。生活習慣や社会の仕組みは国によって異なるが、人間同士の心のやり取りや感情の揺れは大きく変わらない。その普遍的な部分が、作品を通じて自然に伝わっているのではないか、という考えだ。  

一方で、海外市場を意識した創作については、はっきりと距離を置く。「日本の漫画家は、日本の読者に向けて描いている。世界のことなんて分からないからこそ、日本の暮らしや、細やかな感情を丁寧に描く。その態度は保った方がいいと思います」。海外の読者に合わせて描くのではなく、自分が描ける日常を積み重ねることが、結果として異文化の読者にも新鮮さとして届くのだという。 海外ドラマを見ると、靴を脱ぐか脱がないかといった生活の細部が印象に残るといい、「だからこそ、日本の暮らしをちゃんと描くことが大切なのだと思います」と話した。  

変わらぬ制作リズムと、時代との距離感  


今回の展示では、週刊少年サンデーで連載中の『MAO』が大きく取り上げられている。「ギャグ漫画も描きますが、少し重たい、いわゆるダークな作品も好きです。そうした部分を正面から扱ってもらえたのがうれしかった」と語り、自身の作風の幅が評価されたことを歓迎した。  

40年以上にわたり第一線で描き続けてきた高橋さんの創作を支えるのは、今も変わらぬ制作リズムだ。週末に打ち合わせを行い、火曜から木曜にかけてネームを作り、週末に作画する。「ずっと同じように」そのサイクルを続けているという。休日は体を休めることを優先し、映画も「本当に見たいものがあれば朝早く行く」程度だ。  



情報の取り方については、SNSよりもテレビの方が合うと語る。SNSは関心に沿った情報が集まりやすく、どうしても偏りが生じやすい。一方、テレビや新聞は思いがけない話題にも触れられる。「新聞も読んでいます。情報源をいくつか持って、バランスを取ることが大事だと思っています」。  

近年、『うる星やつら』や『らんま1/2』のアニメがリメイクされ、若い世代からも支持を集めている。往年のファンの複雑な思いを理解しつつ、「今の読者が楽しんでいるのも事実」と冷静に受け止める。表現への配慮が求められる時代の中で、制作現場が試行錯誤を重ねていることに、「熱量を持って取り組んでくれている」と感謝を示した。

AIは「新しいもの」を生み出せるか


生成AIについては、「AIは過去を学習してデータを作るが、漫画は過去に描いたものを繰り返さず、新しいものを考え続ける作業。方向が違うかもしれませんね」と語る。作画はいまもアナログが中心で、水彩やスクリーントーンを使い続けている。「デジタルもできたらいいとは思いますが、なかなか追いつかなくて」と笑うが、その手描きの線が生む質感は、作品を形づくる重要な要素でもある。  

なぜ作品は時代を超えて読まれ続けるのか。この問いに、高橋さんは「理詰めで考えたことはない」と前置きしたうえで、「何年経っても、人間はバカだなあ、と思えるような共通の部分を描いているからかもしれません」と語った。自らも驚き、楽しみながら描き続ける。その姿勢が、長年にわたり世界中から愛される作品を支えてきたといえる。



高橋留美子(たかはし・るみこ)
1957年新潟県出身の日本を代表する漫画家。日本女子大学在学中に小池一夫主宰の劇画村塾で学び、1978年にデビュー。翌年から週刊少年サンデーに連載した『うる星やつら』が大ヒットし、一躍人気作家となった。以降、『めぞん一刻』『らんま1/2』『犬夜叉』など話題作を次々に発表。コメディとシリアスを自在に行き来する作風と、人間関係の機微をすくい取る描写で幅広い世代に支持されている。現在も第一線で創作を続け、国内だけでなく世界中で高い評価を受けている。


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