日本では役所に離婚届を出すだけで成立する離婚だが、カリフォルニアでは離婚届のような制度はなく、必ず裁判を提起しなければならない(裁判離婚)。このほかにも、日本とカリフォルニアでは離婚の制度や手続きにさまざまな違いがある。ここでは主なポイントを紹介する。
どこで離婚するのか
日本国籍者同士が日本で婚姻し、双方が離婚に同意している場合は、日本方式で離婚することが可能。ただし、後述する年金分割については米国の手続きが必要になるため注意しよう。一方、日本国籍者と日本以外の国籍者の結婚の場合は、原則として裁判所に離婚を申し立てる必要がある。カリフォルニアで離婚裁判を起こすためには、当事者のいずれかが州内に直近6カ月以上、さらに特定のカウンティーに3カ月以上居住していることが条件となる。
離婚事由の要否
日本では、裁判離婚が認められるためには、相手方による不貞行為や悪意の遺棄などの必要があるが、カリフォルニア州では、「和解しがたい不和」(Irreconcilable Differences)があれば足りるとされているので、一方が離婚を望んだ場合には原則として離婚が認められる。
裁判の大まかな流れ
カリフォルニアの離婚裁判は、申立人が裁判所に申立書を提出することで始まる。まず申立人は、申立書を相手方に正式に送達(Serve)しなければならない。相手方は、書類を受け取ってから30日以内に答弁書を提出する。もし答弁が提出されなければ、申立人は欠席判決(Default)を求めることができる。その後、財産状況を明らかにするための証拠開示(PDD)手続きに進む。申立人は申立書送達から、相手方は答弁提出からそれぞれ60日以内に、それぞれの財産や収入・支出の状況を記載した書類を提出する。これには、過去2年分の税申告書と直近2カ月分の給与明細などを添付する必要がある。この手続きにより、夫婦が保有する財産の全体像が明らかになり、財産分与やサポート額の公平な協議が可能になる。なお、開示を拒んだり虚偽の情報を提出した場合には、制裁が課されることもある。離婚の条件が合意に至っている場合には、離婚合意書(MSA/Stipulated Judgment)を作成することになる。日本では、離婚の条件を明確にするために公正証書を作成することがあるが、カリフォルニアでは、MSAが判決に添付されることで執行力(強制執行をすることができる効力)が与えられる。
MSAが完成したら、裁判所に対し、署名済みのMSAのほか、判決書の下書き等の書類一式を提出する。裁判官が書類を審査して問題ないと判断すれば、申し出たとおりの判決が下り、無事に離婚が成立する。
なお、カリフォルニア州では、「クーリング・オフ」期間という制度が設けられており、申立書の送達から離婚判決まで最低6カ月は空けなければならない。裁判所の手続きが全てスムーズに行くわけではないので、手続きに最低でも半年、場合によっては1年以上かかることも覚悟しよう。
離婚で取り決めるべき主な条件
離婚において決めなければならないことは、主に「財産」と「子ども」に関する問題である。まず財産については、離婚(または別居)時点で夫婦が持っている財産をどう分けるかという財産分与がある。さらに、離婚後に一方の配偶者がもう一方に生活費を支払う配偶者扶養料(Spousal Support/通称Alimony)の問題もある。
子どもがいる場合には養育費(Child Support)に加え、親権(Custody)や面会交流(Visitation/Parenting Time)についても取り決める必要がある。
①財産分与について
財産分与については、まず共有財産(Community Property)と特有財産(Separate Property)の区別を把握する必要がある。共有財産というのは、夫婦生活の過程で獲得した財産のことを指す。特有財産は、夫婦生活とは関係なく獲得した財産のことで、婚姻前から保有している財産や、婚姻中であっても父母・祖父母からの相続・生前贈与等によって得た財産を指す。
カリフォルニアでは、原則として共有財産は50対50で分けることになっている。しかし実際には、住宅購入の頭金を親が援助してくれた場合、結婚前の貯金を、結婚後の生活費口座として使い混ざってしまった場合、財産の大部分が不動産などで、単純に半分に分けられない場合などに争いになることも多い。配偶者扶養料は日本とは大きく異なるので注意しよう。日本には、婚姻費用という制度があり、これは離婚が成立するまでの生活費を支払うものだ。一方、カリフォルニアでは、離婚後も、収入が多い方が収入が低い方の生活費を支援する義務が定められている。支払期間は、究極的には諸事情を踏まえた裁判官の裁量によるが、一般的に「婚姻期間の半分」とされている。この制度の違いから、日本とカリフォルニアのどちらで離婚を申し立てるかをめぐって争いになるケースもある。
カリフォルニア州においては、2026年1月以降に決定された配偶者扶養料について、支払者にとっては控除対象外、受給者にとっては非課税所得として取り扱われることとなった。
②子どもの親権について
カリフォルニアでは、子どもの親権は、Legal Custody(法的な財産管理権)とPhysical Custody(監護権・子どもが実際にどこで生活するか)の二つに分けて考えられる。特別な事情(DVや夫婦の合意など)がない限り、離婚後も共同親権(Joint Custody)となるのが原則である。子どもと過ごす時間と養育費の決め方平等なPhysical Custodyを実現するため、工夫して双方が過ごす時間を半分にすることもあれば、基本は母と過ごして夏休みは1カ月父のところに行く、というような工夫をすることもある。なお、日本では長らく離婚後の親権は単独親権しか選択できなかったが、2026年4月1日より共同親権制度が始まった。
養育費の考え方自体は日本と大きく変わらないが、カリフォルニアにはDCSS(Department of Child Support Service)という公的機関がある点は大きく異なる。養育費を受け取る権利を有する親は、裁判所に申立てをしなくても、DCSSに申出をすれば、DCSSが子どものために申立てや裁判手続き、さらには養育費の回収までしてくれる。日本では、養育費が決まっても支払いが滞った場合、本人が強制執行を申し立てる必要があり、その前提となる財産調査で苦労するケースも多い。一方、カリフォルニアでは、DCSSが主体的に動いてくれ、銀行預金の差し押えや税金の還付金の没収がなされたり、支払いを怠っていると、運転免許の停止や専門的資格のはく奪などの処分が下される場合もある。
なお、日本には、婚姻費用と養育費を計算する算定表というものが存在するが、カリフォルニアにもカウンティーごとに同様のガイドラインが存在する。ガイドラインに従って金額を算出するソフトウェアは裁判所公認。これに双方の収入と支出、子どもの人数や過ごす割合などを入力することで、金額が算出される。養育費の金額については、DCSSが計算ソフトをオンラインで公開しているので、必要になったときは参照のこと。
情報提供:戸木亮輔弁護士 Kaname Partners US, P.C.
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