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海外在住者の日本語教育について

2026.08.19

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海外在住者の日本語教育について


 海外で子育てをしている保護者の方から、よくこんな相談を受けます。

「家では日本語で話しているのに、気が付くと英語ばかりになってしまいます」

「英語を優先した方がいいのでしょうか」

 海外で育つ子どもたちは、学校でも友達との会話でも英語を使い、日本語を使う機会は家庭や日本語学校などに限られます。そのため、日本で暮らす子どもたちと同じように日本語が伸びるとは限りません。また、海外で日本語を学ぶ子どもたちの背景もさまざまです。だからこそ、日本と同じ学習目標を一律に目指すのではなく、一人ひとりの年齢や日本語力、興味、将来の希望に合った目標を見つけることが大切です。

 私自身、二人の娘をアメリカで育てました。同じ家庭環境で同じように日本語教育を受けてきましたが、社会人となった今、日本語力には意外な違いがあります。

 その理由の一つは、日本のアニメや漫画でした。小さい頃からアニメや漫画が大好きだった娘は、日本語に触れる時間が自然と増え、語彙も豊富になりました。一方、あまり興味のなかった娘も会話はできますが、語彙の幅には違いがあります。今ではゲームやユーチューブも、楽しみながら日本語に触れられる身近な入り口です。好きなせりふをまねたり、動画を繰り返し見たりするうちに、教科書には出てこない自然な表現まで身に付けていきます。「好き」という気持ちは、どんな教材よりも大きな学習の原動力になることを、親として実感しています。

 また、海外で育つ子どもたちは、「今日、schoolでね」「Homework終わったよ」のように、一つの会話の中で日本語と英語を行き来することがあります。これは「コードスイッチング」と呼ばれる自然な言語行動で、言葉が混乱しているわけではありません。子どもは、その時に思い浮かびやすい言葉や、普段よく使っている言葉を選びながら、二つの言語を行き来しているのです。大切なのは、「英語を混ぜちゃだめ」と叱ることではありません。まずは子どもが伝えようとしている気持ちを受け止め、「今日は学校で何があったの?」「宿題は終わったの?」と自然な日本語で返してあげることです。会話を止めることなく、日本語の語彙や表現を少しずつ増やしていくことができます。日本語は、「覚える」よりも「使う」ことで身についていきます。

 さくら学園でも、季節ごとの日本文化を体験する活動を取り入れています。この夏は、竹を流れてくるそうめんを夢中で追いかけて箸でつかむ「流しそうめん」や、おみこしを担ぎながら元気いっぱいに掛け声を響かせる体験を楽しみました。

「流れてきた!」

「そうめん、つかまえた!」

「つるつるでおいしい!」

「わっしょい!わっしょい!」


 子どもたちは夢中で日本語を使います。教室で学んだ言葉を実際に使い、楽しい体験と結び付けることで、その言葉は自然と身に付いていきます。「勉強している」という感覚よりも、「楽しいからもっと話したい」という気持ちが、日本語を育てる大きな力になるのです。

 バイリンガル教育の研究者であるコリン・ベーカーは、『バイリンガル教育と第二言語習得』の中で、家庭で受け継がれる言葉は単なるコミュニケーションの手段ではなく、親子のつながりを深め、家族の文化や価値観を伝える上でも大切な役割を持つと説明しています。「日本語を続けると英語が伸びなくなるのでは」と心配する保護者もいますが、二つの言語は互いに奪い合うものではなく、適切な環境があればどちらも豊かに育てることができるとも説明しています。

 私は20年以上にわたり、多くの子どもたちの日本語学習と成長を見守ってきました。その中で感じるのは、保護者はどうしても、お子さんの「できないこと」に目が向きがちだということです。しかし、子どもたちは一人ひとりのペースで、確実に成長しています。日本へ帰省した時に祖父母と楽しそうに会話をしたり、お店で自分の欲しいものを注文したり、日本語で友達と夢中になって遊んだり。その一つ一つが、日本語を身につけてきた証です。

 海外で日本語を育てることは、決して簡単ではありません。それでも、日本語を通して家族や友達と笑い、日本の文化に触れ、大切な人たちと心を通わせる経験は、子どもたちにとって一生の宝物になります。

 その経験を通して、私が確信していることがあります。

 日本語を好きになった子どもは、自ら日本語を使い続けます。

 その「好き」を育てることこそが、海外における日本語教育で最も大切なことではないでしょうか。

〈参考文献〉コリン・ベーカー著『バイリンガル教育と第二言語習得』


6650 Owens Dr., Pleasanton, CA 94588

http://www.eastbaysakuragakuen.com

925-924-0307

日米の架け橋となる子ども達に 「使える国語力」を目指す 2歳児から高校生クラスまで一貫した日本語教育を基本に、子ども達の個性を尊重しながら、独自のカリキュラムで学びの場を提供。対面授業とオンラインクラスを併設しきめ細やかな指導をしているほか、個人レッスンやAP/JLPT対策、非日本語話者対象の日本語クラスもある。

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