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二つの言語、二つの文化の中で育つという「ギフト」

2026.05.01

配信

海外で子どもを育てていると、日本語をどう支え、どう残していくかに悩む場面は少なくない。家庭で日本語を使いながらも、一歩外に出れば学校や社会では現地語が優勢となり、成長とともに日本語の力は揺らぎやすい。こうした環境の中で、日本語を支え育てる補習校の役割は、単なる語学学習の場を超え、これまで以上に重要な意味を持つようになっている。

日本語補習校がつなぐ「心の安全基地」と未来への力

とりわけシリコンバレーのように、多様な価値観が交錯し、変化の激しい環境では、子どもを育てる保護者の胸に、次のような問いがいっそう切実に浮かんでくる。「この環境で、わが子はアイデンティティーを見失わずに育っていけるのか」「日本語や日本文化を、この地で継承していく意味はあるのか」「日本語も文化も大切にしたい。でも、こちらの生活や体験も充実させたい。そのバランスが本当に難しい」現地校での学びや放課後の習い事、スポーツなどの活動に追われる日々の中で、日本語の学びを継続するという選択は、親子双方にとって決して小さな決断ではない。

保護者が直面する悩み

海外での日常は「適応」との向き合いの連続である。多くの保護者が直面するのは、言語や生活をめぐる「揺れ」である。

•適応の不安:「来たばかりで、親自身が環境に慣れるのに必死。子どもの英語や現地校の宿題、すべてが手探りで、親子ともに不安です」

•言語の逆転:「家では日本語と決めているのに、いつの間にか子ども同士の会話が英語に。日本語は『勉強』する言葉になりかけています」

•両立の限界:「スポーツや習い事も諦めさせたくない。でも日本語の宿題も山積み。どちらを優先すべきか悩みます」

•進路の選択:「帰国のタイミングや進学先、刻々と変化する状況の中で『最良の答え』はどこにあるのか」

こうした悩みは、どの家庭にも起こり得るものだ。子どもたちだけでなく、保護者もまた、新しい環境の中で毎日を懸命に生きている。実際、子どもたちは日々、二つの世界の間で懸命に自分の居場所を探している。「頭の中にはイメージがあるのに、日本語だとうまく言えない」「日本語なら意見や気持ちが言えるのに、英語だと難しい」これらは、二つの言語、二つの文化の間で、一生懸命に「自分」という存在を築こうとしている、子どもたちのリアルな成長の姿である。

日本語と英語の関係は「自転車の前輪と後輪」に例えられる。ある子は前輪(日本語)が大きく、ある子は後輪(英語)が大きい。バランスは千差万別で、一人ひとりが違って当たり前である。興味深いのは、補習校が単なる言語習得の場を超えて、「強みを分かち合い、弱さを補い合う成長の場」になっていることである。

教室では、渡米後まもなく日本語が得意な子が難しい表現を隣の友だちにかみ砕いて教える一方、英語が堪能な子が、現地校の宿題に戸惑う仲間にしなやかに助言する光景がよく見られる。彼らは、自分の持てる力を自然に用いて、相手の必要に応えようとする。そこには、一つの言語だけでは測れない、多層的な支え合いが存在している。

「自分は何者か」という問いと、心の安全基地

複数の文化の中で育つ子どもたち(TCK:サード・カルチャー・キッズ)は、成長の過程で「自分は何者か」と揺れる時期を通ることがある。現地校では「日本人」、補習校では「永住組」と見られるなど、自分がどこにも「FIT」しないような感覚を抱く子も少なくない。しかし、この「ピタッとFITしない」という経験こそが、彼らの強みの源泉でもある。特定の枠組みに縛られないからこそ、異なる価値観の間に立ち、双方の良さを引き出す「ブリッジ(橋渡し)」の力が育つ。

こうした強みを育むために不可欠なのが、ありのままの自分を出せる「安全基地(セキュア・ベース)」である。「そこに行けば必ず受け入れられる」という絶対的な安心感こそが、アイデンティティーの揺らぎという荒波を乗り越え、葛藤を「強み」へと変えていくための、最強のライフジャケットになる。

大切なのは、「私の目にあなたは高価で尊い存在だ」というメッセージを伝え続けることである。家庭と補習校という2つの安全基地に守られ、自分のルーツを肯定できた子は、たとえ一時的に迷うことがあっても、必ず自らの力で歩み出し、多文化を内包した「新しい時代のアイデンティティー」を形成していく。

卒業生の一人が、こう語ってくれた。「仕事で役に立ったのは知識としての言語ではなく、日米双方の『空気感』を察する力でした。それは2つの世界の間で揉まれ、両方の価値観を肌で感じることで培われたものだと思います」言葉を学ぶことは、相手の立場を想像し、社会の中で「橋を架ける力」を育てることそのものなのである。

未来へ手渡す、目に見えないギフト

私たちが目指しているのは、単なる語学習得ではない。2つの文化を理解し、異なる価値観の間に橋を架けることのできる、豊かな人間性を育むことである。海外で2つの文化の中で育つ道は、決して平たんではない。しかし、その過程で流した汗や悩んだ時間は、必ず子どもたちの人生を支える大きな力になる。

今、葛藤している保護者には、どうか自信を持っていただきたい。心を砕いて積み重ねている毎日は、目に見えないところで確かに子どもたちの内側に根を張っている。子どもたちはやがて、親が設定したバーを軽やかに飛び越えていくだろう。親が悩みながら手渡した「言葉」と「安心感」は、未来のどこかで必ず美しい花を咲かせる。それは、子どもたちに与えられた、かけがえのない「ギフト」なのである。

情報提供:三育学院サンタクララ校 副校長 吉田 栄一
www.saniku.org

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