アメリカでビジネスを営む時、日本と同様にさまざまな税務手続きが必要となる。ここではビジネスの形態や事業規模の大小に関わらず、法人、個人事業においても、ある程度共通した基礎知識として必要な税金の種類、また代表的な税金の内容に関していくつか解説する。
連邦所得税 (Federal Income Tax)
連邦所得税は連邦税の中で一番代表的なものだが、簡単には収入から控除可能な支出などを引いたあとの課税所得に対し、所得税が課せられる。所得税の税率は法人(C Corpの場合)は現在21%で、一般的にはForm 1120という用紙を用いて確定申告を行い、決算後4カ月目の15日が申告期限となっている(12月決算の法人の場合は4月15日が期限となる)。また個人事業の場合は、個人の確定申告(Form 1040)の中においてSchedule Cという別紙を添付することにより、4月15日までに申告することになる。なお、控除可能な支出の対象、課税対象所得の範囲、税金の計算方法、所得税の税率、確定申告書の様式などは、事業形態の違いにより異なり、また税法改正などに伴い変動するため、注意が必要といえる。
なお2025年9月以降、個人事業の場合、以前はCheckの送付により納税ができたが、現在は予定納税、また確定申告時の追加納付などは銀行口座からの引落し、もしくはクレジットカードによる支払いなど、電子取引による納付手続きが必要となるので要注意。
州所得税、事業税
(State Income Tax / Franchise Tax)
アメリカの多くの州では、連邦所得税と同様に、各州においても所得税を課している。カリフォルニア州も例外でなく所得税を課していて、カリフォルニア州において事業を行う法人、LLCはこの税金をFranchise and Income Tax(事業、および所得税)として納付する義務がある。基本的には連邦所得税と同様に、課税所得に税率(カリフォルニア州の場合の法人税率は8.84%)を課す仕組みだが、カリフォルニア州はたとえ課税所得がマイナスで赤字であっても、年間最低800ドルの税金(事業税)を納めなければならない。なお法人の場合は一般的にForm 100という用紙を用いて確定申告を行い、決算後4カ月目の15日が申告期限となっている(12月決算の法人の場合は4月15日が期限となる)。
一方個人事業の場合は、LLCでない限りこの800ドルの納付義務はなく、連邦の個人の確定申告書(Form 1040及びSchedule C)をカリフォルニア州の確定申告書(Form 540)に添付することにより、個人事業の収支を申告することになる(カリフォルニア州において個人事業をLLCで営む場合は、Form 568の申告が必要)。なお、州の所得税においても連邦と同様に、事業形態により異なる点が多々あるため留意するべきである。
個人事業税
(Self-Employment Tax)
個人事業を営む場合、特定の職業を除き、基本的には収益に対し15.3%の個人事業税が課せられる。課税対象の上限、範囲は毎年更新されるが、連邦、州所得税以外に課せられる税金として留意が必要である。なお一定の所得を超えた場合、一部の特定所得に対し追加税率が課される。
売上税、使用税 (Sales and Use Tax)
日本でいうところの消費税はアメリカではSales Tax/UseTax(売上税、使用税)と呼ばれ、各州の税務当局が管轄している。カリフォルニア州においてはCDTFA(California Department of Tax and Fee Administration)が現在のSales Taxの管轄機関で、一般的には州内において販売される商品(有形物)の取引きに対して税金が課せられ、最終使用者への商品販売者がSales Taxを徴収し、CDFTAに納める義務を負う。またSales Taxは細かくは4つ(State、County、Local、District)の税金の合計で課されるが、Districtの税率がDistrictにより異なり、Sales Taxの合計税率も一律ではないので注意が必要だ。またSales Taxの税率は都度変わるため、最新の税率を確認しておくことが肝要といえる。一方Use Taxは、州外から商品を購入して州内で使用する場合に課せられる税金を指す。州外から商品を購入する場合、Sales Taxが課せられていないケースがあるため、そのような場合はカリフォルニア州内で購入した場合に発生するであろうSales Taxと同額の税金を、使用者はUse Taxとして納めることになる。
なお、Sales/Use Taxは一般的にCDTFA-401という用紙を使用して申告を行うが、申告のタイミングはCDFTAにより指定された頻度で、年間、四半期、月次毎に申告することになる。
ところで、Sales Taxはカリフォルニア州では基本的には有形物の取引きが対象となる税金だが、無形物であるDigital Products(ソフトウェア、電子メディアなど)も課税対象とする州もあれば、Sales Tax自体が存在しない州もある。一方、Sales Taxは州外への販売においては基本的には課さないが、販売先の事業形態、販売先の州への売上高など、特定の要件を満たした場合はたとえ他州への販売であっても他州のSales Taxを徴収する義務を追ったり、申告手続きが必要となる場合がある。
ビジネス・ライセンスと市税
(Business License & City Tax)
ビジネスを行う際には、法人、LLCなどは州への登記、登録を行い、営業権を取得する必要があるが、それとは別にビジネスの所在地(主にCity)にビジネスライセンスを申請し、取得することが必要な場合がある。またビジネス内容により税金の対象、計算方法などさまざまなため、ビジネスを始める前に登録する市の規定を必ず確認する必要がある。例えば、Net Income(純利益)に対してではなく、Gross Receipt(総収入)が課税対象であったり、Payroll(給与)の額、社員数、あるいは事務所の面積により市税を課す市もある。
固定資産税 (Business Property Tax)
ビジネスを行う際、固定資産を保有する場合などは州、市以外にCounty Assessor’s Officeにも事業の登録が必要となる。一般的に固定資産税はCounty Assessor’s Officeに納めるが、不動産に課せられる固定資産税と同様に、一般的にはビジネスの保有する有形資産(車両、商品在庫などは対象外)の金額、保有期間に応じて評価し、一定税率を課せられる税金であり、税率はCountyにより異なる。主に毎年1月1日にビジネスが保有する固定資産を申告し、County Assessorによる評価を受け、年内に固定資産税を納付することになる。
予定納税 (Estimated Tax)
ところで、各種税金は納めるタイミングがそれぞれ異なり、また各々定められているが、所得税、売上税については共通して年間、あるいは四半期ごとに想定される税金総額を予定納税という形で分割、もしくは前払納付する制度がある。これは、一年間に納めるであろう税金を、定められた回数、および一定の割合で分割して年度末前に納付する制度で、税金の種類により納付額、タイミングがそれぞれ異なる。例えば連邦所得税の場合、納付額は年4回(ビジネスの会計年度のそれぞれ4、6、9、12カ月目の15日)で、均等に25%の納付が必要となる(年度末に納める所得税が4000ドルの場合、それぞれのタイミングで1000ドルずつ納付する)。一方、カリフォルニア州の所得税については、納付額の割合が、それぞれのタイミングで30%、40%、0%、30%(2026年度)と毎回異なったりするので要注意。またSales Taxについては、納付額、あるいは申告の頻度により予定納税の要否、時期が異なるので、Seller’s Permit取得時に確認しておくことが必要。いずれの予定納税においても、納付額が定められた割合を下回った場合、ペナルティーが課せられるので注意が必要である。
Permanent Establishment (PE)/
NEXUSという考え方
ビジネスを営む際、どこ(どの州、市、機関など)に税金を納めるかを判断する時に、PE/NEXUSというものを意識しなければならない。日本語では恒久的所在/結び付、などという意味で、ビジネスの実態がどこで行われているかが、税金を納める際の重要な判断基準の一つであり、事業主はこれを意識する必要がある。例えば、州税の無いネバダ州に会社を設立して、実際にはカリフォルニアでビジネスを行った場合、カリフォルニア州に対する納税義務が発生する。つまり、会社の設立場所と、納税場所は必ずしも一致せず、PE/NEXUSの考え方に則り納税地はビジネスを実際に行っている場所となる。よく税金の無い州に会社を設立すれば税金は発生しない、と誤解される場合があるが、必ずしもそうではないので注意が必要。またビジネスの所在の有無を判断する際の基準も州により異なり、伝統的には人、モノなど、物理的な所在が一つの判断基準であったが、昨今ではEconomic NEXUSといい、州との経済的な結び付きや経済効果、無形な利権などで州における事業の所在の有無を判断されるなど、判断基準が変化しているので注意が必要である。
その他の税務手続き
今回紹介した税金以外にも、社員を雇用した場合に発生する雇用関連の税金(社会保険税、失業保険税など)、特定商品(酒、タバコ、マリファナなど)の取扱いに際しての州税、もしくは特定の支払い(利息、配当、ロイヤルティーなど)を海外に送金する場合に必要となる源泉税(Withholding Tax)の納付義務など、ビジネスを営む中では、取引きの内容によりさまざまな税金に対する対応が必要となる。更に、納税に直接関係はなくともアメリカ以外の国に銀行口座を有する場合の外国資産の開示義務、もしくは特定の支払い内容に関する支払調書(Form1099)の発行義務など、納税以外にも必要となる各種税務申告手続きも留意しなければならない。また各税法も毎年の情勢、景気、政権などに左右され、その規定が都度改定されるので、常に最新の規定を知り、適切な税務手続きの履行、また税金を納められるよう対処することが肝要と言える。なお各税務署では、管轄する税金についてのPublicationなどを無料で開示、提供しているので、各税務署あるいは専門家に前広に確認し、事前準備をすることを勧める。
情報提供:松本孝之CPA (Matsumoto & Associates, CPA)
www.ma-cpa.com