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【相続】日本とカリフォルニア州の 無遺言相続の対比

2024.07.17

配信

【相続】日本とカリフォルニア州の 無遺言相続の対比



遺言やリビングトラストを作成していない方が亡くなった場合、日本とカリフォルニア州でどのような差があるのか見ておきましょう。

 法定相続人の範囲  


まず、法定相続人の範囲(誰が相続権を得るか)です。配偶者は必ず相続人になります。日本でもカリフォルニア州でも同じです。  

日本では、配偶者がいるか否かにかかわらず、配偶者と並んで相続人になる範囲として、①直系卑属(子・孫等)、②直系尊属(父母・祖父母等)、③兄弟姉妹(先に亡くなっている兄弟姉妹がいれば甥姪まで)という順位がつけられています。順位というのは、先順位(順位が早い立場)の人が相続権を得るということです。又甥・又姪(甥姪の子)や再従兄弟(はとこ)には、そもそも相続権はありません(※1)。  

カリフォルニア州でも、配偶者がいる場合には、配偶者と並んで相続人になる範囲について、①直系卑属(子・孫等)、②父母、③父母の直系卑属(兄弟姉妹・甥姪等)という順位がつけられていて、おおよそ日本と似通っています。一方、配偶者がいない場合には、上記①~③に加え、④祖父母、祖父母の直系卑属(従兄弟姉妹等)、⑤先に亡くなった配偶者の直系卑属、⑥最も近い血族(Next of kin)、⑦先に亡くなった配偶者の父母、当該父母の直系卑属(配偶者の連れ子等)も順位を持っているので、又甥・又姪や再従兄弟、姻族(配偶者の血族)も相続権を得ることがあります。

 法定相続分  


日本では、配偶者と順位①(直系卑属)が法定相続人になる場合、相続割合は1対1(子が複数いる場合、子らが2分の1を均等分配)とされています。配偶者と順位②(直系尊属)が法定相続人になる場合には2対1、配偶者と順位③(兄弟姉妹甥姪)が法定相続人になる場合には3対1になります。  

 カリフォルニア州はもう少し複雑で、被相続人の財産を「共有財産」と「特有財産」に分けるところから始まります。共有財産は婚姻関係から生じた財産のことで、特有財産は婚姻関係とは関係なく取得した財産のこと(結婚前から保有している財産や、相続や生前贈与で得た財産等)を指します。カリフォルニア州では、共有財産は夫婦の共有と考えられていますので、配偶者が全ての共有財産を取得します。日本では子がいる場合、配偶者が取得できるのは遺産全体の半分ですから、考え方が大きく異なります。  

一方、特有財産については、配偶者とその他の相続人が割合で分割することになります。配偶者とともに相続人になるのが、子1人の場合や、両親もしくは両親の直系卑属(兄弟姉妹甥姪)の場合には、配偶者とその他の相続人とで半分ずつ取得します。その他の場合は、配偶者が3分の1、その他の相続人が3分の2を取得します。

手続き  


日本では、戸籍によって法定相続人の範囲が自ずと判明しますが、米国には戸籍の制度がなく、法定相続人を客観的に確定することが容易ではないため、手続きが大きく異なります。  

日本では、戸籍によって法廷相続人を確定させた後は、法定相続人による協議(遺産分割協議)によって自由に分割方法を決めることができます。法定相続割合は、協議が整わず裁判所が分割を決める局面になって登場します。  

米国では、原則として裁判所で公開の手続きを行い、相続人になり得る人に対して名乗りを上げる機会を与える建て付けになっています。これが「プロベート(Probarte)手続き」と呼ばれるものです。  

プロベートは、裁判所に対して相続財産管理人(Administrator)の選任を求めるところから始まります。申立書には、被相続人の氏名や住所、遺産の概要、相続人や利害関係者の氏名や住所等が記載され、かつ公開されます(※2)。その後、審問期日が指定され、法廷で公開審理がなされます。これらの概要は地元の新聞で公告もされます。相続財産管理人が選任された後は遺産の調査や換価が行われますが、最終分配まで1年以上かかることを覚悟する必要があります。相続財産管理人の業務結果や最終分配についても、もちろん公開されることになります。多くの人は、時間がかかる点や情報が公開される点を嫌い、プロベートを不要とするための対策を取っています。  

プロベート回避の対策として代表的なのは、リビングトラストです。財産をトラストに入れておくことで、プロベートをせずに財産の管理・処分・分配ができます。ほかにも、財産をジョイントで所有していて、共同名義人の1人が亡くなった場合には、残された共同名義人が自動的に財産を取得できます。

また、銀行口座等にも受取人(Beneficiary/受益者)を指定することができ、これを利用すれば、指定された受取人はプロベートをすることなく財産を受け取ることができます。同様に、Payable-on-Death(POD:死亡時受取人指定口座。主に銀行口座で使用)や、Transfer-on-Death(TOD:死亡時譲渡口座。主に株式や証券の口座で使用)というものがあり、これらもプロベート不要で財産の承継が可能になります。  

なお、カリフォルニア州では、プロベート対象の遺産(つまり、トラストに入っていない財産や受取人が指定されていない財産のこと)が18万4500ドル(2024年時点)以下だった場合には、Small Estate Affidavitという書類を作ることで遺産の名義変更や解約が可能とされており、遺産が少額な場合にもプロベートは不要とされています。  

「相続対策をしておかないと国・州に取られてしまう」とおっしゃる方がいますが、正確ではありません。遺言やトラストがなくても、法定相続人は法定相続割合を取得することができますし、ジョイントや受取人指定を組み合わせることで簡易な手続きを取ることも可能です。とはいえ、手続きが煩雑であることは否定できませんので、対策をしておくことに越したことはありません。

※1 順次相続が起きることにより相続権を得る場合もあり
※2 インターネットでも閲覧可能となっている

弁護士
戸木 亮輔
カリフォルニア州・日本(第一東京弁護士会)
949-404-5515
togilaw.com

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