アメリカでの就職活動・転職活動
パンデミックという歴史的事象により一変した私たちを取り巻く環境は、更にスピードを増して変化を続けている。特にこのベイエリアの変化は全米のどこよりも速い。各国の入国規制が緩和され、ビジネス目的の移動が増えている一方で、Great Resignation(大量退職時代)、Great Regret(大後悔)、レイオフの波と目まぐるしく変わる雇用市場では、企業も求職者も手探りの状態が続く。そんな中で企業は、より強固な組織創りの一環として、従業員が適正に評価される人
事制度の(再)設計や従業員のエンゲージメントを高め、全体の組織力を高めることで生産性、売上向上に繋げる仕組みづくりなどに取り組んでいる。そのため従業員側は、自ずとこれまで以上に一人一人が自立し、目標・目的を持って自身のキャリア形成を行っていくことが求められるようになった。アメリカでは転職の意思の有無に関わらず、レジュメを毎年更新することで自身の成長を測り必要なスキルの習得/向上を行うという人が多いが、この習慣がない人の多くが、いざ転職活動を開始しようとした際に自分に何ができるのか、何をやりたいのかが分からないという状況に陥ってしまう。理想の就職・転職を叶えるためにも、常に自分自身のスキルレベルを理解し、継続的な成長を図りながら、戦略的な就職・転職活動を行ってほしい。
人材紹介会社を活用する
人材紹介会社というと、「派遣の仕事の紹介」と思う人も多いが、ほとんどの日系人材会社は正社員の仕事紹介をメインにしている。人材紹介会社を下記の目的で活用することをお勧めする。
1.無料就職・転職相談
2.景気やマーケット動向のリサーチ
3.履歴書・面接アドバイス
4.強みを最大限に生かした就職希望先へのアプローチ
5.オファーに至るまでの交渉業務委託
求人広告は出していないが、即戦力になりそうな人材は常に欲しいと思っている企業も多い。特にテンポ(物事の進みなど)が速いこのベイエリアでは経験者が強い。業界のプロであるコンサルタントやリクルーターとの関係を築いておくことで、自分のキャリアを活かす求人情報をタイムリーに入手し、就職・転職チャンスをより高めることができる。また、応募条件を100%満たしていない場合でも、どのように採用検討をしてもらうべきかなど、直接応募する際にはできないアピールも人材のプロが代行するのでより効果的だ。ヘッドハントが多くなるエグゼクティブ層はもちろん、どのキャリアレベルの方も、将来を見据えて優秀なコンサルタントやリクルーターのコネクションを持っておくことをお勧めする。
レジュメ(Resume)を準備する
いかなる職務経験がある求職者でも、まず準備をしておく必要があるのが「レジュメ」だ。日本の履歴書と職務経歴書を組み合わせたような内容が含まれる。レジュメは内容はもちろん、書き方(フォーマット)や誤字脱字の有無も審査通過に影響し得るので注意したい。中には数百ドルをかけて、プロに作成を頼む人もいるくらいだ。基本のフォーマットはオンラインで入手できる。日本のように一般的に使用されるようなテンプレートはないが、全般的に含むべき内容や職種別に盛り込むべき内容はある程度傾向が見える。その中で、応募者は自分だけではないことを常に意識し、応募する求人で求められているスキルや経験に対し、自分の経験がどのように条件を満たしているかを明確に表記する必要がある。
大手オンライン求人サイトなどを利用して採用活動をしている人事担当者によると、募集ポジションによっては、1ポジションに対しレジュメが100枚以上届くという。最低条件を満たさない応募者が、条件を満たす応募者より多いため、人事担当者が1枚のレジュメに目を通す時間は10秒程度と言われる。そこで人事はまずレジュメの見た目や、目に飛び込むキーワード(必須条件だけでなく、特筆できるスキル・経験なども含む)で、条件を満たしているかや面接の可否を決めるが、現在は一次書類選考はAIなどを活用し、自動的にふるいにかけられることがごく一般的になっていることもあり、含めるキーワードにも工夫が必要になる。高い競争率を勝ち抜くためにも、何枚にも及ぶものではなく、1〜2枚程度で簡潔に要点がまとめられた、採用企業にとって魅力的なレジュメを準備する必要がある。
一方で、仕事経験が全くない(もしくは少ない)新卒や第二新卒、ブランクがある人などは、1枚に満たないなどの問題が生じ得るだろう。その場合は、応募する会社や仕事に何かしら関連付けられるボランティア活動やインターンシップなどを取り上げることをお勧めする。その際には、その関連性を念頭に置き活動内容を明記する。リスキリング、アップスキリングの一環で受講した講座やCertificateまたはアクティビティーなどを記載することも有効的だ。なお、テクノロジーの進化により、どの職種でも各種システムやツール使用の頻度は高くなり、MS(マイクロソフト)Suiteだけでなく、色々なツールを使いこなせるITリテラシーが通常業務をこなすにあたって必要なのが現代社会である。レジュメに記載する目的だけではなく、ご自身のスキルアップも継続してほしい。
面接をする
面接に進んだとき、どのポジションにおいても、回答を準備しておくべき質問は下記だ。なお、日系企業への応募や日本語が必須の求人への応募の場合は、日本語・英語両方で準備しておくことが大切だ。
1.自己紹介・PR
2.長所と短所
3.志望動機
4.中期・長期の目標
そしてその回答を準備するうえで企業研究は欠かせない。企業情報はウェブサイトから簡単に入手できるが、企業に関連するニュース含め、様々なソースから情報収集をしておきたい。リンクトインなどのソーシャルメディアを活用している企業も多いため、リクルーティングに関する情報や企業概要、既存社員のコメントなども企業研究に大いに活かせる。
また、企業規模にもよるが、面接官になるのは通常、人事、部署のマネージャーや上司となる方、そして社長だ。面接の回数は採用決定まで平均2~3回の企業が多い。面接は、「企業文化に合うか」などから「仕事において必要なスキルを持ち合わせているか」など、広範囲かつ細部にわたってチェックが入るため、面接練習や場数を踏んでおくことが本番の面接パフォーマンスを上げるカギになるといえる。
また、選考過程での自動化やAIの活用が普及している今は、オンライン面接やビデオ録画面接(カメラに向かって決まった質問に回答し、その録画が提出される)、またヒューマンキャピタルマネジメント(HCM)という観点からもオンラインアセスメント(オンライン評価システム)などを導入する企業が多くなっている。そのため、どのような面接・選考でも対応できるよう、面接案内の情報から使用システムの確認など、質問回答準備だけではなく、面接時の環境設定や事前準備を忘れてはいけない。
採用決定まで
数回に及ぶ面接が終了し、次なるステップとなるのはバックグラウンドチェックだ。アメリカでは学歴や職歴詐称が多く、企業は雇用リスクを最小限に抑えるために、調査を実施する。この調査を怠り、もし雇用者が窃盗や暴行など何等かの問題を起こした場合、雇用主はNegligent Hiring(雇用主の怠慢雇用)で罪を課されるリスクを負う。最近ではオファー条件提示のもと調査が行われることも多く、給与等の条件交渉については最終面接後、調査の前に完結していることも多い。この調査には数日から1週間ほどかかり、無事に終えたら、入社手続きが始まる。求人募集に対して個人で応募した場合は、給与額やビザ・引越し費用サポートの有無、入社日調整等の一連の交渉を自分で行うことになるので、相場などを把握した上で交渉に臨まねばならない。この最後の詰めの部分を、経験あるリクルーターに託すことができる点は人材会社を通すメリットの一つではないだろうか。
アメリカでの就職・転職活動は、「日英バイリンガル」であること以外に強みとなる経験やスキルが必要である。そのための心構えとして、レジュメは経験や強みが引き出される内容か、面接では企業分析をした上で自己PRや質問に回答をする準備ができているかなど、レジュメや面接それぞれのステップを自分自身のアピールの場として最大限に活用する準備を進めることが重要である。人材紹介会社やソーシャルメディアなどをうまく活用しながら、ステップアップにつながる就職・転職を実現して欲しい。
情報提供:PASONA N A, Inc.
Sachie Ichimura(市村 祥恵)
www.pasona.com
PASONA N A, Inc
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1985年設立以来、人材紹介、派遣、管理部門のアウトソーシング分野で、在米の日系企業並びに米国へ進出する日系企業の効率化を「最大限」に引き出すサポートを軸に事業を展開。
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