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米国のM&A市場と戦略

2023.05.01

配信

米国のM&A市場と戦略について、最新動向と概要を解説する。

M&A市場ランドスケープ(注1)  


2022年の世界のM&A件数は、過去最高となった2021年と比べて17%減少し、取引総額は37%減少した。しかし、この件数は、コロナ禍が始まった2020年とほぼ同等レベルとなった。一方で、米国における2022年のM&A件数は、2021年より17%の減少でありながら、取引総額は40%減と大きく下がった。これは、米国連邦準備制度理事会(FRB:Federal Reserve Board)による利上げ、インフレ現象、長引くロシア・ウクライナ戦争等が影響している。  

このような状況下、2023年は景気後退の可能性が報道されている。米国では3月上旬に、世界的に著名なベンチャーキャピタル会社や、ベンチャー起業を顧客とするシリコンバレー銀行やシグネチャー銀行が破綻したことで、M&Aのための投資計画と実行を大きく左右するコストとリスクの要因となる経営課題にも注意を払わなければならなくなった。その反面、内部留保や資金を蓄えている企業やプライベート・エクイティー会社は、買収するタイミングを見計らい、柔軟にM&A投資をすることが予想される。2023年は、超大型M&Aよりも中小規模、クロスボーダーのM&Aが期待できる見通しだ。以下で一般的なM&Aの概要と流れを解説しよう。

買収理由  


M&Aを進める理由は、事業成長と売上拡大である。具体的には、新製品や他市場への参入、新技術や主要人材の獲得、知財権の確保、生産力の増強、節税対策等が挙げられる。また、最近ではグループ内の事業再編やノンコア事業の売却、市場での生き残りをかけた企業統合等も増えている。


ターゲット(対象)企業の確保  


適切なターゲットを確保するためには、できるだけ多くの情報を遅滞なく収集することが重要である。シリコンバレーの企業はターゲット候補の情報を瞬時に交換しており、日本企業には、地 元のM&Aブティック、プライベート・エクイティー、SPAC(特別買収目的会社)VC、投資銀行、コンサルタント、会計事務所や法律事務所等の外部専門家との繋がりが重要になる。

ターゲット選定には時間がかかるが、M&Aが活発な米国においては、時間をかけて交渉しているうちに他の企業にターゲットを奪われてしまうことが多い。時機を逸せず判断を行うためには、決定権を持つ責任者が初期段階からテクノロジー、製品、営業、財務、人事の各分野の責任者から成る買収企画チームに参加し、外部専門家やアドバイザー、コンサルタントの協力を得て時宜(じぎ)にかなった賢明な判断を行うべきである。  

ターゲットを確定後、初期デューデリ(買収監査)を開始し、管理職のパフォーマンス、保有テクノロジーの評価、成長可能性、財務諸表や資本構成の精査を行い、企業文化の相性等を評価する。

ディール・ストラクチャーの構築  


両当事者が買収意志を確認した時点で、買手は弁護士、会計士、M&Aアドバイザーと相談しディール・ストラクチャー(手順・手法)を構築する。シリコンバレーのディールは、一般的に次の ような手続きを含む:

①秘密保持契約書(NDA)の締結
②法的拘束力の無い基本合意書(LOI)と契約条項の内容交渉と締結
③デューデリ(ビジネス、法務、財務、税務、知財、人事、IT、環境リスク等)
④最終譲渡契約書の交渉と締結
⑤クロージング

M&Aフローは状況により異なり、シリコンバレーのスタートアップ企業の買収では、通常2~3カ月以内にクロージングするが、大規模なM&Aの場合は半年以上かかることもある。

M&A後の統合  


M&A後の統合プロセスは複雑かつ時間がかかるため、難局はクロージングの後に起こり易い。統合プロセスは、人事、企業文化、テクノロジー、IT、社内システム、知財、財務、顧客等の多岐の面にわたり、事前の計画が十分に練られていないと、従業員の士気が下がり、業績に悪影響を及ぼし兼ねない。統合計画を綿密に立て、従業員に明瞭な情報を提供することが、真の意味でM&Aを成功させるためにも重要である。

※(注1)
•Mergermarket 2023 Global M&A Report Dealmakers Sentiment Report, SS&C Intra Links
•Morgan Stanley 2023 M&A Outlook: 4 Trends to Watch as Dealmaking Accelerates
•PWC 世界のM&A業界別動向:2023年見通し
※ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に関する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

情報提供:Miura & Partners (US) 萬 タシャ
www.miura-us.com

235 Montgomery St., #300, San Francisco, CA 94104

https://www.yorozulaw.com

415-707-5000

Yorozu Law Groupは、東京を含め複数の拠点を持つ三浦法律事務所と戦略的提携を行うこととなりました。2023年4月より新事務所名Miura & Partners (US) の下、萬タシャが代表弁護士として引き続きリードします。この提携により、我々のグローバル・リーチは拡大し、現行のインバウンド(日本企業の米国進出や企業買収)業務に加え、アウトバウンド(米国企業の日本進出や企業買収)のサービスを提供することが可能になりました。

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