博士号取得のために移り住んだベイエリアは、ものすごいプロジェクトや面白そうな人がいてワクワクしたという星さんに、ベイエリアでの暮らしについて聞いた。
ベイエリアに住むことになった
きっかけ
アメリカに来たのは2001年。ベイエリアに来たのは2003年で、スタンフォード大学の哲学部で博士号を取得するためです。

ベイエリア最初の印象と
今の印象
最初は、テキサスの小さな大学町に比べて、飲み友達が増えそうでワクワクしました。実際は、その期待以上だったかなと。月並みですが、ものすごいプロジェクトや面白い人たちがわんさかいて、おかげで少しお酒が強くなってしまいました。あと、都市部と自然の混ざり具合が私にはちょうどいいです。サンフランシスコやサンノゼのような都市部に近く、少し行ったらナパやその他の国立公園など。なので、仕事やレジャーを充実させやすいなとも思います。
あなたにとって、
どんな場所ですか?
家族や仲間たちと暮らすときめきワンダーランド。
自分の専門分野について
スタンフォード大学の中の中高一貫のオンライン校を運営しています。設立は2006年。オンラインにもかかわらず、現在では全米のトップ校として認知していただいていることに感動です。最近は欧米だけでなく、アジアに向けた教育や教育テクノロジー普及などに活動を広げています。

その道に進むことに
なったきっかけ
小遣い稼ぎがてらオンラインハイスクールの立ち上げプロジェクトに参加したことですね。1年後には研究職が決まっていたので、正直、教育中心でやっていこうとは思っていませんでした。
あなたにとって仕事とは?
自分の社会活動のポートフォリオだと捉えています。メインの校長職以外に、日本やその他アジア向けの執筆、学校や教育ビジネスのコンサル業などでも忙しくなってきました。それぞれのプロジェクトで、目的や役職が違います。営利・非営利、公私、大中小入り混じった自分の社会活動のポートフォリオを持って、さまざまな方々とさまざまな関係性の中で働かせていただいています。多面的なポートフォリオがあると、それぞれのプロジェクトや役職もより輝かせられて、総合的な生きがいにつながると信じています。
子供のころに就きたいと思っていた職業、理由も教えてください
あれも良さそう、これも良さそうと、ころころと変わってしまっていた気がします。どれがどれだったか覚えていません。大人になってからだって、実際、論理学研究を志して、哲学博士になってからも、ころっと気が変わって、学校運営しているわけです。
休日はどんなふうに過ごしていますか
家族で遊んだり、出掛けることが多いですね。他の日本人家族とのホームパーティーも多いです。
ベイエリア、および近郊で好きな場所はどこですか?
やっぱり一周回って落ち着くのが、スタンフォードのメインクワッドという広場ですかね。あと、家で仕事すると煙たがられるので、自分のオフィスにいるときもなんだか落ち着きます。
お気に入りのレストランは
マウンテンビューの「Pacific Catch」。
よく利用する日本食レストランはどこですか?
パロアルトのカリフォルニア・アベニューにある「Ramen Kowa」は、日曜日にファーマーズマーケットに寄ったあと、家族でよく行きます。あとは、クパチーノにある「やよい軒」も。和食ベースで子育てをしているので、子供の食事がしやすいのは大事ですね。
日本へのお土産は何を持っていきますか?
エコバッグが定番でしたが、あげすぎて次の一手を10年くらい探し続けています。実家の花屋のお客さんたちに毎度相当量のお土産を持ち帰ることを強要されているのですが、最近は日本で何でも手に入るので、ちょっと頭痛の種になっています。
日本に郷愁を感じるとき
日本で出会った昔の友人や知人に予期せず再会して、当時のことを思い出したりすると少しノスタルジーに浸るかもしれません。
お薦めの観光地
ナパやタホ、ヨセミテなどなど、王道のところは全てお薦めですね。あと、ミュアウッズやピナクルズ国立公園も気に入ってます。こっちにきて、ワインだけでなく、アウトドアがもっともっと好きになりました。日本とはまた違う自然の姿を見られるのがいいですね。
永住したい都市
ベイエリアにしばらくいてもいいかなと。あとは、ヨーロッパの歴史ある街並みにも憧れます。とかいいながら、ハワイとか南国もよさそう。分かりません。
5年後の自分に期待すること
子供たちとハーフマラソンに出たいです。あと、熱しやすく冷めやすい部分があるので、新しいことをやりつつも、現在の取り組みの中で続けるべきことはしっかりと続けていきたいです。

座右の書
『論理的観点から―論理と哲学をめぐる九章』(W・V・O・クワイン・著)。この本がなかったら、哲学や論理学の道に進んではいなかったと思います。理系で育って、文系に流れつき、その両方をうまくつなぐ視点を与えてくれたのがこの本でした。
最近読んで印象に残っている本
『Prizeworthy』(ミッチ・アブレット・著)。今、日本向けに子育て本を執筆中ですが、この本の切り口にいたく共感するものの、どれだけ似たような考えが読者に響くかが課題だなと思いました。褒める叱るのパラダイムから抜け出したペアレンティングをお考えの方にお薦めです。
これまで見た中で影響を受けた、または印象に残っている映画
『ボディーガード』(1992年)。初めてのガールフレンドと見に行った映画です。ホイットニーが好きとか、ケビンかっこいいとか、すごく盛り上がって、自分から映画を薦めて見に来たのに、一番良いシーンのところで彼女ががっつり居眠りしていたのが印象的でした。人生の複雑な味わいを教えてくれた映画になりました。
最近見て印象に残っている映画
『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』。アン・ハサウェイが好きだったから見てみましたが、こんな問題が現実にあるっていうことを恥ずかしながら知らなくて、びっくりしました。
自分を動物にたとえると?
難しいですね。若い頃「俺はカツオだぴょんぴょん」といっていたことがありましたが、なぜそう言っていたかは忘れました。
座右の銘
「Remain calm. Be kind.」 (コリン・パウエル元米国務長官)
プロフィール
星 友啓
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Tomohiro Hoshi
スタンフォード大学付属のオンラインハイスクール校長/哲学博士/教育・教育テクノロジーコンサルタント。スタンフォード大学で哲学博士号取得後、同大学内でのオンラインハイスクールの立ち上げに参加。現職の傍ら、欧米やアジアに向けて執筆・講演活動、教育テクノロジーのコンサルティングにも取り組む。著書に『スタンフォード式生き抜く力』(ダイヤモンド社)、『全米トップ校が教える自己肯定感の育て方』(朝日新書)などがある。