自分を生かすこと、それを社会に還元することを考えながらひた走ってきたという峯村さん。シリコンバレーで働くこと、暮らすことについて聞いた。
ベイエリアに住むことになった
きっかけ
1998年、学生として渡米しました。学生時代は東海岸のペンシルベニアにいたのですが、卒業後にいただいた1年間の就労ビザで自分試しにと見つけた職のため、シリコンバレーに越してきました。
ベイエリア最初の印象と今の印象
会社の平たいビルばかりで「何もない」というのが、シリコンバレーの最初の印象でした。とにかく落ち着かなかったのですが、長年住んで視野をベイエリア全体に広げてみると、小高い丘にある個性あるサンフランシスコの街並み、その街に近隣する豊かな自然、まさに世界の縮図のような多種多様な住民と文化との共存と、いつの間にか自分にとって心地良いものが全てあるホームタウンになっていました。

自分の専門分野について
現在は、アップルのメディアストアの検索アルゴリズムのパフォーマンスを審査するアナリストをしています。サーチの結果を評価する上で重要になってくるのが、ユーザーである日本人の行動、日本文化、日本語に精通していることです。
その道に進むことになったきっかけ
多種多様な住人で構成されるシリコンバレーで、特異な存在として最大の結果を出すために自分にできることは、日本人として貢献していくことだと考え、日本マーケットの専門家になろうと思いました。
英語を使って仕事をするということについて思うことは?
英語では日本語より遠慮なく発言できるかと思います。日本語の場合、上司や先輩に対しては正しい敬語で話したりする必要があるので、話す内容より、使う言葉の方に気を配ってしまいがちですが、英語は単刀直入に物事を提案しやすいです。
英語での成功体験、失敗体験があれば教えてください
現在の仕事ではプレゼンをする機会が頻繁にあって、本番までに何回も練習します。録音して発音を確かめたりしますが、英語は中学生になってから初めて学んだ言語ですので、どうしても日本語アクセントがしつこくついてきます。プレゼンの後の、自分の英語で相手を説得できた、という達成感は成功体験ですね。失敗体験は数知れません。
あなたにとって仕事とは?
理想としては、自分を最大限生かして、社会に還元できていると思える活動です。実際のところ、今の仕事環境は、国際関係学を専攻してきた私にとってはやりがいのある仕事だと言えるでしょう。私どものグループは、各言語のスペシャリストの集団です。国ではなく言語で仕事が区別され、一つの目的達成のために同じプロジェクトで働いています。このような共通意識は、仕事内に留まらず、国際社会にとって大切ではないかと思います。この体験をいかなる形でも社会に伝えていくのが、これからの私の仕事だと思っています。

子供のころに就きたいと思っていた職業、理由も教えてください
宇宙飛行士です。私が生まれた長野の地は、とても星のきれいなところでした。時間があると空を眺めていて、自分がとてつもない大きなものの一部に過ぎないということ、またここに存在する奇跡のようなものを感じるのが大好きでした。いつか地球を外から見たいと思っていました。
もし、いまの仕事に就いていなかったら、どんなことをやっていると思いますか
もし、収入がなくても生きていける環境にあったら、国際職員かジャーナリストです。国際関係を学ぶために渡米した目的は、そこにありました。国境線から生じる不平等や戦争をなくすために、何かしたいと思っていました。この思いはまだ過去形ではありません。今までの経験を生かす機会はこれからたくさんあると思います。当面の目標は、経験を通して得たメッセージを、若い世代に伝えていくことです。
現在、どんなおうちに
住んでいますか?
ロスガトスにあるタウンハウスです。ここはベイエリア郊外で、シリコンバレーがビジネス拠点として開発される前からあった古い街です。
休日はどんなふうに
過ごしていますか
幼少から音楽に関わっていたので、主人ともっぱら音楽活動をしていたのですが、息子が生まれてからは、毎週末が子供のプレイデートです。
ベイエリア、
および近郊で好きな場所はどこですか?
モントレーが好きです。素晴らしい水族館があって、疲れたときの現実逃避の場所です。
よく利用する日本食レストランはどこですか?
「Ramen Hajime」です。初めて食べた時に、これ以上のラーメンはないと家族全員でファンになって、毎週行っています。4歳の息子も、自分で「しょうゆ!」と注文します。
もし、宝くじで1億円当たったとしたら、その使い道は?
夢のない話で申し訳ないですが、住宅ローンに使いたいと思います。これがシリコンバレーの現実です。物件が高くて、ある程度の収入がないとやっていけません。
日本に戻る頻度
1年に一度程度。
最近日本に戻ったときに思ったこと、考えたこと、感じたこと
浦島太郎になりました。でも、食べ物がとにかく自分に合っていると思います。
日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
戸隠のそば粉です。長野県出身なので、たまに故郷が恋しくなって自分で打ちます。
現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
電車網が不便なことですね。
現在のベイエリア生活で不安に感じること
健康保険と、息子の教育です。
日本に郷愁を感じるとき
空を眺めるときです。例えばオリオン座などは世界のどこから見ても同じ形です。小さい頃の自分も眺めていたと思い出し、無性に故郷が恋しくなります。
お勧めの観光地
日本なら京都、ベイエリアでしたらモントレー。自分が好きだからです。

永住したい都市
どこにも永住する決心がつくか分かりません。
5年後の自分に期待すること
今までがむしゃらに突っ走ってきた人生だったと思うので、自分を最も生かせることについて答えが見えてきているといいなと思います。
座右の書
『「原因」と「結果」の法則』(ジェームズ・アレン・著)。
最近読んで印象に残っている本
『星の王子様』。最近だと息子の本ばかりになってしまいますが、この本は自分も幼少時に読んだ本で、今でも不思議な感覚に導かれます。
これまで見た中で影響を受けた、または印象に残っている映画
『風の谷のナウシカ』。人類への大きなメッセージだと思います。
最近観て印象に残っている映画
ディズニーの『アイス・エイジ バックの大冒険(The Ice Age Adventures of Buck Wild)』。4歳の息子が地球温暖化について一生懸命考えていたので、この映画すごい、と思いました。
自分を動物に例えると? なぜ?
犬でしょうか。わりと恩を忘れない人です。
座右の銘
現在はこれです。「和を持って尊しとなす」。
プロフィール
峯村 涼子
/
Ryoko Minemura
アップル社、サーチアルゴリズムのアナリスト。並行し、フリーランスのライターとして日本の新聞などに寄稿する他、ジャズフォトグラファーとして写真を雑誌に掲載したり写真展を開くなど活動。長野県長野市生まれ。立命館大学卒業後、アメリカへ渡り国際関係学修士、MBAを取得。スロバキア人の夫とジャズサックスを通して知り合い、現在4歳男児の母。