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柳家東三楼の「Break a leg 落語の時間ですよ」Vol.32

2023.11.15

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4年ぶりの芝浜 暮れのベイエリアで

 それは僕が大学3年生の暮れでした。新宿末広亭では毎年12月29日に「柳家さん喬・柳家権太楼二人会」を開催していました。1998年当時、携帯電話はPHSやポケベルが主流で、インターネットを使ってパソコンで調べるという時代ではありませんでした。演芸専門の「東京かわら版」という小雑誌や「ぴあ」といった週刊誌から情報を得て落語会を回っていました。上手く予約もできなかった僕は、寒空の師走の新宿三丁目、末広亭の前で当日券を得るために並んでいました。

 当時は自由席で、当日券のために早く並んだ結果入場も早く、前から10列目ほどの席に座れました。2階席まで空いて、五重、六重の立ち見。この会自体を冬の風物詩だと思っている人も多いし、この日の演目は「落語界の第九」と言われている『芝浜』を柳家権太楼(私の師匠)は出していたのでした。

 師匠の『芝浜』は変化に変化を重ね、今は素晴らしい評価を得ていますが、僕が学生の頃は主人公の魚屋がおかみさんに手を上げるシーンがあり、賛否両論でした。しかしながら1998年暮の芝浜の熱演に心を撃たれた僕は、師匠への入門を決意し大学もやめて、次の春に師匠の門を叩いたのでした。

 二ッ目になってしばらくして芝浜を覚えて、毎年の暮に高座にかけるようになりました。お酒ということをテーマに、師匠が演じているような男のプライドという視点ではなく、酒に溺れてしまった男の悲哀と、おかみさんの誠実な真心に焦点を当てて、落語らしくない人生讃歌のようにやるようにしています。

 コロナ直前のマンハッタンでの独演会で芝浜をして以来、4年ぶりに芝浜をします。しかもマンハッタンではなく、サンフランシスコとシリコンバレーで二回やります。理由は今年ツアーで回るうちに、ベイエリアの皆さんの客席からの反応が日本における反応に近いのと、穏やかな気候の中、真冬の江戸の寒さを表現してみたいと思っているからです。

 英語と日本語でアメリカ中をツアーで回り、基本的な人の心、人情に国境はないと考えています。そしてこの芝浜も封建的な男尊女卑の発想から抜け出して、アルコール依存からの回復、夫婦の信頼といったテーマにスポットを当てれば世界中で通じる噺だと思っています。

 今回4年ぶりにする僕の芝浜は、このアメリカ移住でどう変わっていくか自分でも非常に興味があります。今年最後のツアー締めくくりでベイエリアにお邪魔します。年の暮れ、師走は落語に触れて、気持ちの良い年越しにしませんか。


柳家東三楼(やなぎやとうざぶろう) 落語家歴25年。真打として日本全国で落語を披露する中で世界中の人に落語を知ってもらいたいと、2019年よりアメリカへ移住。現在はNYのブルックリンを拠点にアメリカにてすでに200回以上の公演を行う。50州すべての州にて落語公演を実施することを目標に、日々精力的に活動中。

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