ローカルニュース毎日配信!

柳家東三楼の「Break a leg 落語の時間ですよ」Vol.29

2023.08.16

配信

アイデンティティ

 ベイエリア滞在も残すところあと数日となりました。今回の滞在では、サンノゼの日本町の日系アメリカ人博物館や、LAの日本人の多い地区を訪れ、改めて日本から移住された先輩や日系人の方が、アメリカ社会へ貢献することで、後続の私達が安心してアメリカで暮らせている状況に感謝の念が大きく生まれました。

 今、僕は太平洋戦争時の日系人の物語や資料を勉強しています。その課題はアイデンティティです。僕は日本人として生まれ育ち、落語家として25年活動し、アメリカに移住するまでは自分は日本人であるとか、落語家であると強く認識していませんでした。落語が好きなので落語をやってきましたが、当たり前のように周りには落語家がいましたので、自分を強く落語家と認識することがなかったように思います。

 ところがアメリカに移住して4年、どこにも噺家はいません。普段仕事やイベントで日本にバックボーンがある方と会いますが、ジムや買い物など日常ではそうではありません。

 「はたして自分とは」と考えた時、これまで日本から海外に移住した方はどうされてきたんだろう。また落語を教えている子達は一緒に日本語で落語をしていますが、現地の学校ではもちろん英語で、自分をアメリカ人と思っているのか日本人と思っているのか、と考えるようになりました。

 僕は人が自分をどう認識するかは自由で、誰かに決められたりするものではないと思っています。ただ、アメリカに住む子が日本にルーツがあると強く思ったりそう願った時、落語は日本人の情や文化を多分に含んでいますので、日本に対してのアイデンティティを持つ、保つには良いと考えるのです。そして僕も含めて移民一世が祖国を恋しく思う時、落語は笑いの中で自分の育った日本、日本人らしさを簡単に感じることができるのです。寄席で毎日聴いていた三味線の音が恋しくなったり、お稽古していた日本舞踊を再開したりと、これまで感じていなかった僕自身の日本人としての嗜好を改めて認識し、日本人としてのアイデンティティを感じたのです。

 すごく大事な問題なので、先輩にお話を聞き、物語として皆様と共有できる日が来ればと思っています。



柳家東三楼(やなぎやとうざぶろう) 落語家歴25年。真打として日本全国で落語を披露する中で世界中の人に落語を知ってもらいたいと、2019年よりアメリカへ移住。現在はNYのブルックリンを拠点にアメリカにてすでに200回以上の公演を行う。50州すべての州にて落語公演を実施することを目標に、日々精力的に活動中。

この記事に関連する記事

一覧ページにもどる

share with ups!

新規会員登録

ベイエリアの求人・仕事情報・お知らせ・募集・不動産・個人売買情報はBaySpo!
無料で会員登録をすると、bayspo.comをもっと便利にお使いいただけます。

新規会員登録をする

サクッと読める!
BaySpoとeじゃんデジタル版をチェック!